2015年に、ロジャー・フェデラー(スイス)とニック・キリオス(オーストラリア)は「ATP1000 マドリード」で忘れられない試合をした。最後の最後まで大接戦となったその試合では、キリオスが最終セットのタイブレークを14-12でものにして勝…

2015年に、ロジャー・フェデラー(スイス)とニック・キリオス(オーストラリア)は「ATP1000 マドリード」で忘れられない試合をした。最後の最後まで大接戦となったその試合では、キリオスが最終セットのタイブレークを14-12でものにして勝利を収めた。その2年後、キリオスは怪我のため「ATP1000 インディアンウェルズ」でのフェデラーとの試合を棄権せざるを得なかったが、「ATP1000 マイアミ」では回復してレベルの高いプレーで準決勝に進出し、フェデラーとの再戦の機会を手にした。2人の名試合をTennis World USAが振り返っている。

マイアミでもマドリードの時と同じような大接戦となったが、3時間10分におよぶ試合の末に7-6(9)、6-7(9)、7-6(5)でフェデラーが勝利。フェデラーにとってマイアミでは4度目ながら2006年以降では初めての決勝進出を果たした。

フェデラーとキリオスは、第1セットでは双方1回ずつ相手のサービスゲームをブレークしたが、その後は互いを極限まで追い込み、良いサーブを打って観衆をはらはらさせ続けた。第2セットと第3セットでデュースまでもつれたのはわずか7度であった

最後は、第3セットのタイブレーク5-5の場面で、キリオスがダブルフォールトを犯してマスターズ1000大会で初の決勝進出の好機を台無しにし、フェデラーが勝利を勝ち取った。

これはフェデラーにとって2017年シーズンのこの時点までに出場した19試合中18度目の勝利であり、2006年以降では最良のシーズンのスタートだった。フェデラーはこの年、2006年シーズン以降で初めて「全豪オープン」「ATP1000 インディアンウェルズ」「ATP1000 マイアミ」の全てで決勝進出を果たしたのだ。

フェデラーはこの試合で54本のウィナーと39本のアンフォーストエラーを記録し、ブレークポイントを握られたのはわずか2回だけだった。これに対してキリオスはウィナー38本にアンフォーストエラー34本という堅実な結果で、なんとか持ちこたえて、勝利を手繰り寄せようと最大限の力を発揮した。

キリオスは短いラリーでのポイントでは92-85と若干フェデラーを上回り、より長いラリーにおけるポイントではフェデラーが55-38と圧倒して格を見せつけた。当時既にグランドスラムで18度優勝を果たしていたフェデラーは、ブレークチャンスを7度手にしたが、執拗に食い下がるキリオスを相手に、ブレークに成功したのは1度きりであった。

このマイアミでの輝かしい夜にフェデラーを倒すには至らなかったものの、キリオスは彼の持つ途方もない才能を見せつけ、ショットのうまさ、身体能力、臨機応変さ、度胸、最強の対戦相手に対峙して最高のプレーをする能力、そしてもちろん強烈なサーブなど、テニスに必要な全てを持ち合わせていることを示した。

第1セットではお互いリズムを掴むのにしばらく時間がかかった。キリオスは合計5度のブレークポイントを握られ、タイブレークまで持ちこたえるのに苦労した。フェデラーは素晴らしい立ち上がりを見せ、最初の3つのサービスゲームではわずか2ポイントしか失わなかったが、最初の2つのリターンゲームで3度訪れたブレークチャンスをふいにし、早々にリードを奪って流れを引き寄せることはできなかった。

反対に、先にブレークを果たしたのはキリオスだった。第7ゲームでブレークに成功、5-3とリードした次のリターンゲームでも3度のデュースに持ち込んだが、再びブレークして突き放すことはできなかった。キリオスは第10ゲームのサービング・フォー・ザ・セットの場面で1ポイントも取れずにブレークされ、5-6と逆転されて迎えた第12ゲームではなんとかセットポイントをしのぎ、タイブレークに持ち込んだ。

マドリードでの試合の時と同じように激しいものとなったタイブレークは、フェデラーが11-9で掴み取った。2度のセットポイントをしのぎ、キリオスがセットをものにしようとサーブした最後のリターンポイント2本でミニブレークを果たしたのだ。

第2セットはより流動的で、フェデラーは自分のサービスゲームで7ポイントしか落とさなかったにもかかわらず、タイブレークでは第1セットと同じスコアで今度はフェデラーが敗れた。

フェデラーは第2セットの4つのサービスゲームをキリオスに1ポイントも取られることなくものにし、3-3の場面でブレークしてあっさり試合を終わらせるための大変な好機を得たが、キリオスはそれを拒み、ブレークの危機を脱して差をつけさせず、またしてもタイブレークとなった。

タイブレークはこれ以上ないほど劇的な展開となった。キリオスは5-6と7-8の場面で2度のマッチポイントをしのいで粘りを見せ、3度目のセットポイントでエースを放ってこのタイブレークを11-9でものにし、第3セットに持ち込んだ。

最終セットでは互いにブレークチャンスは無く(キリオスのサービスゲームで3度のデュースはあったが)、試合の激しさはやや落ち着いたものの2人ともとても好調なままで、第3セットもタイブレークへもつれる流れであった。

フェデラーは6つのサービスゲームで6ポイントしか失っておらず、前日のトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)との対戦と同じように最終セットのタイブレークを勝ち取ろうとしていた。タイブレークではキリオスが先に優位に立ち、ミニブレークを奪って3-1とリードしたが、フェデラーはそれに応えて3-3の五分に戻した。その後のポイントはどれも大変な重みを帯びていた。

キリオスが再びミニブレークを果たして5-4とリードし、勝者として試合を終える好機を得たが、続く自身のサービスで致命的なダブルフォールトを含む2ポイントを失って6-5と劣勢に立たされた。フェデラーはこの機を逃さず、キリオスがリターンできない強烈なサーブを放って勝利を手繰り寄せ、この壮絶な戦いを締めくくった。

その後フェデラーは決勝でラファエル・ナダル(スペイン)との37回目の対戦を制し、マイアミでは3度目、キャリア通算91回目の優勝を遂げたのだった。

(テニスデイリー編集部)

※写真は2020年「全豪オープンでのチャリティイベント」でのキリオス(左)とフェデラー(右)

(Photo by Kirsty Wigglesworth - Pool/Getty Images)