新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中のゴルフツアーが中断しているなか、先日、米LPGAツアーが2020年シーズンの再編スケジュールを発表した。 1月にスタートした同ツアーは今季、フロリダ州で2試合を消化。2月にオーストラリアでの2大…

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、世界中のゴルフツアーが中断しているなか、先日、米LPGAツアーが2020年シーズンの再編スケジュールを発表した。

 1月にスタートした同ツアーは今季、フロリダ州で2試合を消化。2月にオーストラリアでの2大会を終えたあと、アジアでの新型コロナウイルスの影響を考慮して、タイ、シンガポール、中国での3大会は中止になったものの、当初は開催地がアメリカ本土に戻るファウンダーズカップ(3月19日~22日/アリゾナ州)から、ツアーは再開する予定だった。

 しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて、同大会から続く起亜クラシック(3月26日~29日/カリフォルニア州)、メジャーのANAインスピレーション(4月2日~5日/カリフォルニア州)と、急きょ中止、延期に。その後、全米女子オープンを含めて、6月中旬までの大会の延期、中止がこれまでに決まっていたが、今回、ツアーの再開日程とともに、新たなスケジュールが発表された。

 注目のツアー再開については、6月19日開幕のウォルマート・アーカンソー選手権(6月19日~21日/アーカンソー州)から。そしてその翌週には、メジャー大会のKPMG全米女子プロ選手権(6月25日~28日/ペンシルベニア州)が開催されることとなった。

 以降、7月にはマラソンLPGAクラシック(7月9日~12日/オハイオ州)、ダブルス戦となるダウ・グレートレイクベイ招待(7月15日~18日/ミシガン州)、さらに5月末に行なわれる予定だったショップライトLPGAクラシック(7月31日~8月2日/ニュージャージー州)が行なわれ、舞台を欧州に移す。

 当初、東京五輪の前に行なわれる予定だったメジャーのエビアン選手権(8月6日~9日/フランス)は、東京五輪の延期によって2週間遅れで開催。その翌週にスコットランド女子オープン(8月13日~16日/スコットランド)が行なわれたあと、昨年渋野日向子が制したメジャー大会、AIG全英女子オープン(8月20日~23日/スコットランド)と続く。ここは、東京五輪を挟むことなく、欧州3連戦となり、選手たちの移動負担はかなり軽減されることになる。

 ほか、注目のメジャー大会は、ANAインスピレーションが9月10日~13日にカリフォルニア州で、全米女子オープンは異例ながら12月10日~13日にテキサス州で開催されることになった。もちろん、今後の状況次第では、これらのスケジュールも新たに調整される可能性があるが、ひとまずメジャー5大会の開催が決まったことは、ファンにとっては朗報と言えるだろう。

「(スケジュール調整を行なっていた)この10日間は、10年の月日が経ったように感じる。本来のビジネスが大変な状況にあって、スポンサーにゴルフトーナメントの開催交渉をすることは、容易なことではなかった」

 そう語ったのは、インターネットによるビデオ会議システムで、新たなスケジュールの発表とともに、記者会見を行なった米LPGAのマイク・ワン会長。短期間で再日程をまとめたハードワークによって、その表情には明らかに疲労の色がにじみ出ていた。そして、ワン会長はこう続けた。

「米国の、ほかのスポーツリーグとも情報の交換を続けているが、スポーツの種類によっては、15日~30日は再開の時期が前後するだろうが、現在は『6月15日を、ひとつの目処にする』というのが、概ね(各スポーツ界で)一致した意見だ」

 とはいえ、先にも触れたが、このスケジュールで本当に再開できるかどうかはまだわからない。現在の米国の状況は、とても安心できる状況にないからだ。”無観客開催”での実施案もあって、それなら多少はハードルが下がるかもしれないが、楽観視はできない。

 無論、ワン会長もその辺りは十分に承知している。そのうえで、ツアー再開に向けて、いくつかの条件を提示。それがクリアできなければ、トーナメントは開催しない意向だ。

 ワン会長が掲げた条件は、まずはトーナメントの開催に、75~80%以上の選手からの賛同が得られること。各大会の開催地の同意が得られること、など。そのうえで、最も重要視しているのは、「出場したい選手が開催地に移動できること」だ。

 グローバルなツアーであることを自負し、多くの外国勢が参戦している米LPGAツアー。ツアー担当者によれば、「3月時点では、出場予定選手は全員、米国国内に居たことは確認できていたが、現在は母国に帰っている選手が多い」と言う。まさに米国への出入国制限が解除されるかどうかが、ツアー再開への最大のポイントとなりそうだ。

 実際、米女子ツアーを主戦場とする日本勢は皆、日本に帰国している。畑岡奈紗は3月に渡米し、フロリダ州の自宅で調整を続けていたが、日本への入国制限が開始される直前に急遽帰国。山口すず夏も、滞在先のカリフォルニア州から帰国した。そのほか、横峯さくらや上原彩子らも、今は日本で過ごしている。

 また、渋野日向子はメジャー初戦のANAインスピレーションと、その直前の大会出場を目指して3月に渡米していたが、大会が中止となったため、日本に帰国。再開に向けて、地元で調整を行なっている。

 そのほか、ツアーの中心となっている韓国勢や、ほかの外国勢も「『不安な時期は家族と過ごしたい』と言って、一部は母国に戻った」と、米LPGAツアーの関係者は語る。



米ツアーでの活躍も期待されている渋野日向子

 さて、こうした状況となって気になるのは、渋野の動向だ。今季は、メジャー大会を中心に、米女子ツアーのトーナメントにも参戦予定で、秋には来季からの米女子ツアーへの本格参戦を目指して、Qシリーズ(ツアー参戦の資格を争う予選会)挑戦を表明していた。そうしたことが、新たなスケジュールとなって、どう影響するのか。

 現状を見れば、日本ツアーとの兼ね合いが重要になるが、肝心の日本ツアーがいつ再開できるのか、その目処がまったく立っていないため、なんとも調整しづらい、というのが実情だろう。それでも、海外メジャーの出場権を持っていることを考えれば、ディフェンディングチャンピオンとして臨むAIG全英女子オープンを含めた欧州3連戦には、出場しやすくなったのではないか。

 また、日本ツアーは12月にはシーズンが終了している可能性が高く、当初10月に行なわれる予定だったQシリーズが12月に延期され、全米女子オープンも12月開催になったことは、渋野にとっては、好都合と言えるのではないか。

 何はともあれ、新スケジュールが発表となった今、海外メジャーで戦う渋野の姿が見られることを、まずは心待ちにしたい。そして、新たなスケジュールどおりに再開されることを、切に願う。