元世界女王セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)のコーチ、パトリック・ムラトグルー氏は、ランキング下位の選手たちの経済状況を深く憂えている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、テニスの大会は…

元世界女王セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)のコーチ、パトリック・ムラトグルー氏は、ランキング下位の選手たちの経済状況を深く憂えている。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、テニスの大会は中止され、プロテニス選手たちは一時的に失業状態だ。ウェブメディア Essentially Sportsが伝えている。プロテニスのランキング下位の選手たちが大会に出場できなければ、彼らの生活は厳しいものになる。例え自分たちに収入がなくても、コーチやトレーナーの給料は払わなければならないのだ。

ムラトグルー氏はテニス界にあてた公開レターで論じた。「テニスは素晴らしいスポーツだ。だが、我々の直面している厳しい状況がテニス界において機能していない部分を明確にした。ランキング100位以下の選手たちは、赤字を出さないのがやっとの状態だ。経済的に、とても厳しい生活を送っている」

スポンサー収入などがあるトップ選手たちと違って、下位選手たちの収入は大会で得られる賞金だけだ。プロテニス協会から決まった月給や年俸が支払われるわけではない。

ムラトグルー氏は、「バスケットボール選手やサッカー選手と違い、テニス選手には決まった年俸はない。独立した自営業だ。旅費は自分で払う。コーチやスタッフには決まった給料を払う。だが収入は、試合に勝たなければ得られない」と続けた。

「実力主義の世界だ、それは構わない。トップ選手たちは、100%自分の力でお金を稼いでいる。ただ、10億人もの人々にフォローされている世界で最も人気があるスポーツの1つで、トップ100の実力を持っていても余裕のある生活を送れないなんて、何かが間違っている」

テニスは練習にもお金がかかるので、夢を諦めて辞めてしまう選手は多い。必要な支出をまかなうのお金を稼ぐことが非常に困難だからだ。

「あまりにも長くこの状況が続いている。長く続いていた男女間の賞金格差はずいぶん改善されたが、ランキングによる賞金格差ではテニスは全スポーツ中、最もひどいのではないか」とムラトグルー氏。

ツアーが存続するには下位選手の待遇を改善する必要がある。トップ選手だけではツアーは成り立たないからだ。ムラトグルー氏はさらに、テニスの運営諸団体がコロナ禍により収入を断たれた選手たちを援助するよう求めた。

そして、「ATP(男子プロテニス協会)、WTA(女子プロテニス協会)、ITF(国際テニス連盟)、グランドスラムが連携して、継続可能な解決策を見つけて欲しい。これ以上、下位選手たちを放っておいてはいけない。テニスは変わらなければならない。大会が開催できない今この時にこそ、話し合いを始めるべきだ」と結論付けている。

(テニスデイリー編集部)

※写真は2020年「全豪オープン」でのムラトグルー(左)とセレナ(右)

(Photo by Daniel Pockett/Getty Images)