「反発を買うのは分かっていた。しかし決断を下さねばならなかった」フランステニス連盟(FFT)で経済開発責任者を務めるリオネル・マルテーズは、3月30日付けレキップ紙電子版にて、約2週間前にテニ…

「反発を買うのは分かっていた。しかし決断を下さねばならなかった」

フランステニス連盟(FFT)で経済開発責任者を務めるリオネル・マルテーズは、3月30日付けレキップ紙電子版にて、約2週間前にテニス界を驚かせた決定をこう振り返った。5月25日に開催予定だった「全仏オープン」の突然の延期発表。しかも代替日程さえ、早々と明示した。2020年大会の開幕は9月20日。つまり「全米オープン」閉幕のたった1週間後に、ローランギャロスが始まることになる。この発表を受けて、テニス界の各方面、特に選手の間から批判の声が噴出した。「エゴイスト」とさえ叩かれた。

ただしFFI会長のベルナール・ジウディセリが、延期発表当日の3月17日に各メディアに明かしたところによると、決定前にATP(男子プロテニス協会)、WTA(女子テニス協会)、ITF(国際テニス連盟)の会長とは意見交換済み。他のグランドスラム大会にも、間違いなく通知は行われていた。

「最終的には我々で下した判断である。それは事実だ。手段と行動の説明責任を負うのは、我々自身にほかならないからだ」

この発表はまた、フランステニス界の、「全仏オープンは絶対に中止にはしない」との強い意志の表れでもあった。会長はこうも宣言した。

「今シーズンを、ヨーロッパのクレー大会が一試合もないままで終わらせてはならない」

本来であれば6月7日まで続くはずの赤土の熱戦がなくなり、発表の翌日、つまり3月18日にさっそくATPとWTAはツアー中断を6月7日まで延長した(後日、7月12日までさらに延長することが発表された)。また3月24日には東京五輪の延期が決定。世界各地のあらゆるスポーツが歩みを止めた。その後、「ウィンブルドン」さえも開催を断念した。2つの世界大戦以外の理由では、初めての中止だった。

「早すぎた延期決定」は必要なことであり、正しいことだった。フランスのテニス関係者は、改めて強調する。前述のマルテーズ経済開発責任者は、4月2日、フランスのフィガロ紙のスポーツビジネス動画で延期決定に至った4つの動機を解説した。

1)ローランギャロスによる収益は、フランステニス界全体の収入の80%を占める。最大の収入源の日程を素早く確保することが最優先である。

2)それぞれの連盟・開催主はみな考え方が異なる。周囲の意見に振り回されぬよう先手を打つのが得策である。

3)早目の代替日程決定によりTV局があらかじめ放送枠を確保できる。メディア露出度を確約することで、大会スポンサーは離れない。大会出場選手へも満額支払いを約束できる。

4)あらゆる関係者に大会までのカウントダウン時間を意識させることで、スムーズに準備することができる。

ちなみに「全米オープン」閉幕1週間後にねじ込んだ最大の理由は「天候」。たしかにセンターコート、コート・フィリップ・シャトリエの開閉式屋根は完成した。ただし他のコートで行われる試合と、10月に入った途端にパリに雨空が増えることを考えると、これ以上時期を遅らせることはあり得なかったという。

新型コロナウイルスの影響でフランスでは3月17日から厳しい外出制限が敷かれている。またローランギャロスに隣接するテニス国立トレーニングセンターは、現在、経過観察中の新型コロナウイルス患者宿泊所として使用されている。誰よりも早く延期を宣言したFFTだが、果たして希望通り、9月20日に「全仏オープン」開催へこぎ着けられるかは、いまだ定かではない。

(テニスデイリー編集部)

※写真は2019年「全仏オープン」決勝戦でのナダル

(Photo by Tim Clayton/Corbis via Getty Images)