「東レ パン・パシフィック・オープン」(WTAプレミア/本戦9月19~25日/東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート/ハードコート)の大会最終日はシングルス決勝が行われ、カロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)が大…

 「東レ パン・パシフィック・オープン」(WTAプレミア/本戦9月19~25日/東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート/ハードコート)の大会最終日はシングルス決勝が行われ、カロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)が大坂なおみ(日本)を7-5 6-3のストレートで破り、6年ぶり2度目の優勝を果たした。

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「今週はいろいろな新しいことを経験して、それを心から楽しんだと思う。こんなふうにどんどん上のラウンドに進んでいけば今回直面したような新しいことにも慣れていき、アジャストしていけるようになるんだと思う」大坂は、そうこの1週間を総括した。

 自身初めてツアー大会の決勝に進んだ大坂にとって、学ぶことが多い1週間だった。いや、この決勝1試合だけでも、学ぶべきことだらけだったかもしれない。

 互いに激戦の準決勝をくぐりぬけての決勝進出。両者ともに体に痛みを抱えながらの対戦で、皮肉なことにそのメディカルタイムアウトが試合の流れを変えた。

 第1セット、ワンブレークずつと流れがどちらに傾いてもおかしくない中で、続くウォズニアッキのサービスゲームを再度ブレークした大坂が勝負の流れをつかみかけたかに見えた。ここからさらにギアを上げていく――そんなターニングポイントだったろう。

 しかし、このゲームで左太ももの付け根を痛めたウォズニアッキがメディカルタイムアウトを要求して治療を受けたのちに試合が再開されると、大坂のプレーはすっかり勢いを失ってしまっていた。

 簡単にミスを連発させるとすぐにブレークバックを許して、動きが万全でないウォズニアッキを楽にプレーさせてしまった。

「対戦相手がメディカルタイムアウトをとるということに慣れていなかったんだと思う。自分にとってはもしかしてよいチャンスが生まれたかもしれないとも思ったし、ケガの状態は大丈夫なんだろうかと心配になったりもした。場合によってはプレーの仕方を変えなくてはいけないかもしれないとか-----いろいろと考えすぎてしまった」

 ベンチでウォズニアッキの治療を待つ間に、18歳はさまざま思いを巡らせたという。そして、それが大坂の集中を削いでしまったのだった。

 それに加えて大坂自身が右肩に痛みを覚え、思ったようにサービスが打ち込めなくもなっていた。昨年も秋に同じ箇所を痛めており、「正確なことはわからないけれど、たぶん肩の腱炎だと思う」という状態で、第1セット終了後には大坂もまたメディカルタイムアウトをとって治療を行ったが、結局それ以降はこれまで観客を魅了してきた思い切りのいいサービスは鳴りを潜めてしまった。

 最大の武器であるサービスで優位に立てず、アンフォーストエラーを連発しては、ウォズニアッキが万全ではないといっても勝ち目はないだろう。第2セットは立て続けに5ゲームを失うと、そこからラリー戦で見せ場を作ったが3ゲームを奪うのが精いっぱい。

 コート上のインタビューでは「今日は負けてしまったけど、決勝まで進めてうれしい」とはにかんだ笑顔で答えていた大坂だが、表彰式から時間をおいたのちの記者会見では「私は少しでも上に行きたいと考える性格だし、この準優勝という結果にしてもここからどうすればもうひとつ上に行くことができるかと今は考えている。その課題を修正することができれば、来年優勝できるかもしれないし、優勝したいと思っている」と、敗戦の悔しさをかみしめた。

 手痛い敗戦から学ぶのは、初めてではない。全米オープン3回戦で喫した悪夢のような逆転負けを、この秋は糧にさえして快進撃につなげてきた。きっと、このほろ苦い敗戦も、したたかに、次なるステップへの糧とするに違いない。

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 一方、今シーズンは相次ぐ故障でランキングを落としていたウォズニアッキは、全米オープンでベスト4入り、そして今大会では約1年半ぶりのツアー優勝を果たし、完全復活と見ていいだろう。特に準決勝でのアグネツカ・ラドバンスカ(ポーランド)戦では全盛期と変わらぬ勝負への執念、スタミナを見せつけた。

 全米オープン期間中には引退も噂されたウォズニアッキだが、「2008年以来、毎年優勝を続けてきていたので、それを今年も成し遂げられてうれしい。このよい流れを継続していきたい。今日、(来週からの大会に備えて)中国に移動するので、この勝ち方を続けていきたい」と、気力に満ちた笑顔で語った。

 この1週間に見せた表情を読み解けば、まだまだトップ10への意欲は衰えていないようにも感じられる。

(テニスマガジン/ライター◎田辺由紀子)