専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第246回 江戸時代の頃から、日本は”黒船”が来ると、いろんな面で盛り上がりますなぁ~。 つまり、異国のものすごいテクノロジーとか、スーパーマンみたいな…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第246回

 江戸時代の頃から、日本は”黒船”が来ると、いろんな面で盛り上がりますなぁ~。

 つまり、異国のものすごいテクノロジーとか、スーパーマンみたいな超人がやって来ると、日本は大騒ぎ。その結果、プラスに働くことが多いような気がします。

 ゴルフもしかり、です。

 1957年のカナダカップ以来、国際的なトーナメントが繰り広げられると、そのつど、ゴルフブームが巻き起こりました。

 昨年のPGAツアー、ZOZO CHAMPIONSHIPがいい例です。

 調子が今ひとつだった松山英樹選手も奮起。優勝争いを演じて、地元日本のギャラリーを大いに沸かせました。

 そして、極めつけが、タイガー・ウッズ。日本中のファンを魅了し、PGAツアー歴代1位に並ぶ通算82勝を達成。世界的なニュースとなりました。

 そんなわけで、日本がより注目され、日本国内が盛り上がるような国際試合を、もっと増やせないものでしょうか。そして実際、国際試合が増えるとどうなるのか。過去の体験や見聞きしたことを踏まえて、考えてみたいと思います。

(1)外国人と日本人の差を痛感
 個人的に、生まれて初めて国際的なトーナメントを見に行ったのは、1994年のアメリカン・エキスプレスグランドスラムのプロアマでした。成田のオーク・ヒルズカントリークラブで行なわれたシニアのPGAツアーで、当時はアーノルド・パーマーやリー・トレビノらも参加していましたね。

 シニアとはいえ、パーマーの打球は、オーク・ヒルズCCの練習場の一番高いネットをバンバン直撃していて、推定300ヤードは飛んでいたかなぁ~。マジで、黒船に乗ってペリーがやって来た!? くらいの衝撃を受けました。

 プロアマながら、観客をかなり入れて行なわれ、パーマーやトレビノの組には、ものすごいギャラリーが集まって、彼らが打つたびに、大きな歓声が上がっていました。

 こっちは、そんなギャラリーのひとりではなくて、実はプロアマの参加者でした。ハンデ25ぐらいなのに、無謀にもラウンドすることになったんです。

 で、前の組にはやたらとギャラリーが集まっていて、ざわざわしているなと思ったら、なんとトレビノがいるじゃん!?

「やべぇ~、あんな大群衆の中で打つのかよ」「ギャラリーに当てたら、どうしよう……。多額の賠償金が取られるぅ~」なんて、こっちはもう、心臓がバクバクでしたよ。

 ところが、トレビノが打ち終わるや、あんなに大勢いたギャラリーが蜘蛛の子を散らすように消えて、我々の組がティーグランドに立った時には、スッからかん。逆に、やや寂しいムードを漂わせながらのラウンドとなりました。

 その際、一緒に回った日本のTプロが、「じゃあ、静かになったところで、そろそろ打とうか」と言った言葉が、今でも印象に残っています。やっぱり、ギャラリーって、適度にいたほうがいいですね。

 この時に痛感させられたのが、外国人選手と日本人選手との差。人気、実力ともに、その差をまざまざと見せつけられました。

 そんなカルチャーショックを受けるという意味でも、国際試合はやったほうがいいです。



海外の大物プレーヤーが頻繁に来日してくれれば、日本のゴルフ界ももっと盛り上がるかもしれませんね...

(2)日本は国際試合”後進国”
 アジア戦略を積極的に行なうようになったPGAツアーは、中国・上海で創設されたHSBCチャンピオンズ(ヨーロピアンツアー、PGAツアー)を、2009年から世界ゴルフ選手権シリーズ(WGC)として実施。マレーシアでも、2010年から2018年までCIMBクラシックを開催してきました。

 さらに2017年からは、韓国でザ・CJカップを開催。そして昨年ようやく、アジア4番目のツアー開催国として、日本でZOZO CHAMPIONSHIPが行なわれました。

 各国、各地域ツアーの共同開催とか、賞金ランク対象外とか、それぞれのツアーによって、いろいろと事情があると思いますが、世界最高峰のPGAツアーを日本でやっていることに意義があります。

 それにしても、アジアナンバー1のゴルフ大国である日本が、PGAツアーのトーナメント誘致において、ここまで遅れたことは本当に謎です。だいたい前澤友作さん(元ZOZO社長)が孤軍奮闘し、がんばったからこそ、急きょ開催にこぎつけたわけで、それがなかったら、日本でのPGAツアー開催はもっと遅れていたことでしょう。

 日本の企業や代理店、ツアー関係者は、「ビジネスとして、どうなの?」と思っているのでしょうが、日本のゴルフ界の地位向上のためにも、PGAツアーは今後も日本で開催すべきだと思います。でないと、ますます世界の流れ、世界のレベルから取り残されてしまいます。

 シニアも同様で、米シニアツアー(PGAツアー・チャンピオンズ)のマスターカード・ジャパン選手権が2019年から始まりました。こちらも「今度こそ、末永くやってほしいなぁ~」と、切に思います。

(3)お金を出してくる日本企業は?
 世界に進出しているグローバル企業は、アメリカなどの世界に向けて、マーケット拡大のための情報や宣伝などを発信していますよね。だから、アメリカのPGAツアーやLPGAツアーなどには、ホンダやソニーなどがスポンサーになっています。

 そういうお金はあるんだな、と。けど、日本向けのトーナメントにはお金を出さない、というか、採算が取れないから、出さないのでしょうが……。

 そうなると、ZOZO CHAMPIONSHIPのように、とりあえず国内で稼ぐビジネスモデルを構築していくことが大切になります。それにはやはり、ゴルフに造詣がある企業のオーナーや関係者に、がんばってもらうしかありません。

(4)やたらとお金がかかる
 日本に有名外国人選手を呼ぶとなると、それなりのお金がかかります。正式な試合では建前上、選手はアピアランスフィーという出場報酬を受け取ってはいけないことになっていますが、プロゴルフ業界というのは、そう簡単にはいかない世界です。

 それゆえ、有名選手が日本に来たら、試合前にエキシビションマッチなどをやって、そこで稼いでもらうわけです。ついでに、CMのバイトも入れます。

 試合の結果がどうあれ、そうやって、ちゃんと儲かるようにしないと、有名選手は日本まで来てくれません。

(5)程よい人気獲得のために
 アメリカのツアーは世界の頂点ですから、強いものはどんどん受け入れることになっていますが、女子のLPGAツアーは現在、韓国勢の台頭により、以前ほどの人気はありません。

 所詮はアメリカのツアーですから、多くのファンは、強いアジア人を打ち負かして勝つ、アメリカ人を見たいわけです。でも毎回、韓国人選手ばかりが勝って、ファンの興味は薄れてしまっているんですな。

 主催者やスポンサーとしては、強い韓国人選手が勝つのはいいけど、正直、人気はどうなの?って、思っているのではないでしょうか。

 そういう危機が、日本の女子ツアーでも数年前にありました。でも、イ・ボミ選手をはじめ、韓国人選手は可愛くて、スタイルもいいので、かえって人気が出た、という面白い現象が起きました。

 そのうち、若くて、活きのいい日本人選手が次々に登場。そんな彼女たちが韓国人選手とも互角以上に渡り合って、日本女子ツアーはさらに盛況を博していします。

 一方、日本の男子ツアーはどうか。韓国人選手ががんばっても、人気低迷から脱却することはできないでしょう。

 だったら、リッキー・ファウラーとかが、たまに日本のトーナメントに出場してくれたらなぁ~って、思います。お爺ちゃんが日本人ですから、そこら辺のツテを頼って、手紙でも出してみますか? なんてね……。

 そりゃ、どこかしらの企業などががんばれば、義理で1回くらいは日本に来て、トーナメントにも出場してくれるかもしれません。けど、堂々と呼ぶには、その試合がPGAツアーに入っていないといけないのです。いくらがんばっても、ポイントを稼げませんからね。

 そういう意味でも、ZOZO CHAMPIONSHIPが継続して開催されている間に、沖縄あたりでもうひとつ、PGAツアーを組み込めないもんですかね。誰か、お金持ちのスポンサーさん、ぜひ手を挙げてください。心から、そう思います。