2019年ラグビーワールドカップ(W杯)での日本代表チーム躍進の影響により、トップリーグはチケット完売の試合が続出するなど、過去最高の盛り上がりを見せている。その今季のトップリーグで予想以上の活躍を見せているのが、大卒・高卒1年目のルーキ…

 2019年ラグビーワールドカップ(W杯)での日本代表チーム躍進の影響により、トップリーグはチケット完売の試合が続出するなど、過去最高の盛り上がりを見せている。その今季のトップリーグで予想以上の活躍を見せているのが、大卒・高卒1年目のルーキーたちだ。



開幕から目覚ましい活躍を見せているパナソニックの竹山晃暉

 W杯が9月下旬から11月頭まで開催されたことによって、今季のトップリーグは従来の秋スタートではなく、翌年の1月〜5月(全15節)という変則日程が組まれた。その結果、入団した新人選手たちには10カ月ほどチームに馴染む時間があり、夏にはカップ戦も行なわれるなど、実戦経験を多く詰め込めた。

 ルーキーの活躍はトップリーグの活性化だけでなく、日本代表の強化にもつながる。「次のW杯に向けて、もう準備は始まっています。『2023年のOne Team』の一員になりたいと思っている若い選手は、今から挑戦を始めることが大切」。そう語った日本代表を率いるジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)も、若手の台頭に目を細めているはずだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、トップリーグ第7節(2月29日、3月1日)と第8節(3月7日、8日)は延期となった。よって、開幕節から第6節までの6試合で特筆すべき活躍を見せたルーキーたちを紹介したい。

 まず、開幕から6戦全勝と優勝を争っている2チームから。王座奪還を目指すパナソニックワイルドナイツと、連覇を狙う神戸製鋼コベルコスティーラーズでは、それぞれ若き翼が躍動していた。このふたりが今季の新人賞レースでも先頭を走っていると言えよう。

 ひとり目は、パナソニックのWTB(ウィング)竹山晃暉(こうき/23歳)。開幕から全試合に先発しているだけでなく、すべての試合で80分フル出場を果たしており、7トライは現在トライランキング3位タイ。プレースキックを任されることもあり、得点ランキングでは5位(51得点)につけている。

「応援に来たファンをがっかりさせないような選手になりたい。自分の仕事をしっかりしてトライを獲りたい」

 トップリーグ開幕に向けて竹山はそう意気込んでいたが、まさしく有言実行の活躍を見せている。

 元力士を父に持つ奈良出身の竹山は、御所実業高の名将・竹田寛行監督が唯一、頭を下げて勧誘したという逸話を持つ。高校時代は7人制ラグビーの全国大会「アシックスカップ」と、「花園」こと全国高校ラグビー大会で準優勝を果たした。帝京大でも1年生からWTBのレギュラーとしてトライを重ねて、大学選手権の7〜9連覇に貢献した逸材だ。

 高校時代から竹山は、ラグビー理解度・コミュニケーション能力に長けていた。まるで5年〜10年、トップリーグでプレーしている選手かのようだ。トライの決定力もさることながら、決して無理をせずに味方選手を使ったり、裏のスペースにキックを使ったりと、相手の嫌なプレーに徹することもできる。

 7人制ラグビーで東京五輪出場を目指しているWTB福岡堅樹(パナソニック)と比べてしまうと、タッチライン際5メートルの幅を突破したり、相手の守備の厚いところを自ら打破してトライを挙げるというタイプではない。ただ今後、個人で状況を打破できるようなスピードとステップに磨きをかければ、日本代表入りも近いだろう。

 ふたり目は、神戸製鋼のWTB/CTB(センター)アタアタ・モエアキオラ。昨年、東海大4年生ながらスーパーラグビーのチーフスの一員に選ばれ、8試合の出場で3トライを挙げたトンガ出身の24歳だ。大学2年時には日本代表初キャップを獲得し、2019年W杯の日本代表メンバー31名にも選ばれながら、本大会では1試合も出場できなかった。その悔しさをトップリーグで晴らしていると言えよう。

 モエアキオラも開幕から6試合(先発4試合、ベンチスタート2試合)すべてに出場しており、すでに5トライを挙げている。なかでも、第6節に行なわれた東芝ブレイブルーパス戦の前半20分、自陣からステップとパワーで30メートルゲインし、味方のトライにつなげたプレーは圧巻だった。

 大学U20世代の世界大会でトライ王に輝き、「新幹線」と喩えられたスピードが戻ってきた。昨年、ニュージーランドや日本代表合宿でトレーニングを重ね、体重120kから108kgまで落としたことが功を奏したと言える。SO(スタンドオフ)やCTBとしてもプレー可能で、キックもうまい。複数ポジションができるという点でも、ジョセフHCは重宝しそうだ。

 また、竹山やモエアキオラよりも若い10代選手にも注目したい。東海大福岡高を卒業後、ニュージーランドの高校のクラブチームを経て、日本の大学に進学せずに宗像サニックスブルースに入団したSH(スクラムハーフ)藤井達哉だ。ジョセフHCの参謀役、日本ラグビー協会・藤井雄一郎強化委員長の次男である。

 19歳ながら、トップリーグ開幕から全試合に出場して9番を背負った。SHとして長短のパスさばきは安定感があり、日本代表SH田中史朗(キヤノン)のようにFWの選手を使うのもうまい。身長165cmと小柄だが、判断力にも優れており、第3節のNTTドコモレッドハリケーンズ戦ではトップリーグ史上最年少記録(19歳10カ月)となるトライも挙げた。

 日本代表のなかで最も競争の激しいポジションのひとつ、SHは何よりも経験が欠かせない。今後の活躍次第では、5月に発表予定の新しい日本代表スコッドに藤井の名が入るかもしれない。

 ほかにも、目に止まったルーキーは数多くいる。

 サントリーサンゴリアスのNo.8(ナンバーエイト)テビタ・タタフ(24歳/東海大出身)、東芝のLO(ロック)シオネ・ラベマイ(25歳/拓殖大出身)とFB(フルバック)桑山聖生(としき/23歳/早稲田大出身)、トヨタ自動車ヴェルブリッツのWTB高橋汰地(たいち/23歳/明治大出身)、キヤノンのWTB山田聖也(23歳/近畿大出身)、ホンダヒートのPR(プロップ)鶴川達彦(24歳/早稲田大出身)、リコーブラックラムズのWTBアマト・ファカタヴァ(25歳/大東文化大出身)、クボタスピアーズのNo.8ファウルア・マキシ(23歳/天理大出身)……。

残り9試合、優勝争いとともに新人賞争いからも目が離せない。今後、誰が日本代表に選ばれて、3年後のW杯フランス大会で活躍するのか……。そういう視点で見れば、より一層トップリーグが面白くなるはずだ。