専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第245回 最近、アメリカのPGAツアーがマイブームで、NHK BSでトーナメントを拝見させていただいております。 PGAツアーでは、誰かを応援しているわけではありませんが、ハ…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第245回

 最近、アメリカのPGAツアーがマイブームで、NHK BSでトーナメントを拝見させていただいております。

 PGAツアーでは、誰かを応援しているわけではありませんが、ハッとするような場面がしばしばあって、見ていてまったく飽きません。

 巨大な深いバンカーから打ったり、(フェニックスオープンでは)スタジアムの中でプレーしたり、(AT&Tペブルビーチプロアマでは)海岸沿いの岩の上から打ったりと、そのビジュアルにハラハラドキドキとさせられ、非常に面白いです。

 そんなアクロバティックなショットが打てるなら、「最初からミスするな」と思いますが、そのリカバリーができるからこそ、プロなんじゃないか、と。

 そういうプレーを見ていると、日本のトーナメントもひとつぐらい、海外遠征をして「ペブルビーチを借りて、開催すればいいじゃん」なんて、思ったりします。

 なにしろ、PGAツアーに比べると、日本のツアーは本当に盛り上がりに欠けていますからね。とくに、男子のレギュラーツアーですね。

 その点、あらためていろいろと考えてみたので、ここで報告させてもらいます。

(1)最も悪い例が「日本オープン」
 日本最高峰のトーナメント、日本オープンですが、松山英樹選手が優勝した2016年以降、最終日でもギャラリーが1万人を超えたことがありません。ほんと、人が集まらないんですよね。

 それには、いろいろと事情があるようです……。

◆セッティングの難しさ
 日本を代表するトーナメントですから、4日間トータルで5アンダーぐらいのセッティングにしないといけない――ツアーディレクターは、そう考えるわけです。

 けど、それが裏目に出て、見ているほうは全然面白くありません。ゴルフを知らない人は、おそらく「こいつら、下手なんじゃないか」くらいの勢いで見ていますよ。

 かなり高度なショットを打っているけど、それが、視聴者に伝わらないんですな。だから、到底「見に行こう」なんて思わないわけですよ。

 こうなったら、ツアーディレクターは安いプライドを捨てて、バーディー&イーグルが量産できるセッティングにしましょうよ。通算20アンダーで優勝って、派手でいいじゃないですか。

◆NHKの放送が地味
 日本オープンは、日本を代表する由緒ある試合なので、NHKは4日間のトーナメントをBSも使って、昼からほぼ完全放送する熱の入れようです。

 しかも、NHKだから淡々と”その場で喋っちゃいけない臨場感”まで伝わってくるので、見ている視聴者が、まるで正座して見なきゃいけない感覚に捉われます。これじゃあ、視聴率は取れませんよね。

 要するに、演出方法が古すぎると思います。もっと賑やかにしないと。

 けど、NHKじゃあ限界があります。いっそ、放映権を民法に譲ったらいいんじゃないですか。

◆名物ホールがバラバラ
 三井住友VISA太平洋マスターズが開催される太平洋クラブ 御殿場コースの池がらみの18番や、日本シリーズJTカップの舞台となる東京よみうりカントリークラブの18番ショートなど、おおよそ各トーナメントには、シグネチャーホール(※見せ場となるホール。そのコースを代弁するようなホール。強い印象や衝撃を受けるホール)ってあるじゃないですか。

 でも、日本オープンは基本、会場が持ち回りなので、毎年開催コースが違います。だから、シグネチャーホールを見出すのが難しく、大会への関心が高まらないんです。

 人間、「春になると、あの場所でまた、あの桜が見られる」と思うように、「この季節になると、あのトーナメントの、あのコースでの戦いが見られる」と思い出して、大会への興味を抱くわけですよ。

 まあ、開催コースを1カ所に絞れないのなら、全英オープンみたいに、10コースを選定して、その持ち回りでやるとかね。いろいろと策はあると思うんですが……。

(2)卓球の変化を参考に
 卓球って、以前は地味なスポーツと思われていましたよね。それが最近、ユニフォームやボールが派手になって、かけ声やガッツポーズなども、少しずつテレビ向けの演出が見られるようになり、楽しめるようになりました。

 実は、中学校の時、私は卓球部でしたから。当時と比べると、隔世の感があります。

 そんな卓球のイメチェンを参考に、あとはモーターショーや格闘技などを参考にして、ゴルフも演出方法を変えてみるのは、アリかと思います。

 たとえば、各組ごとにスコアカードを持って歩くスタッフがいますが、それをコンパニオンに変えてみるとか。あざといですが、ボクシングなどでもやっていますから、ゴルフでもやっていいでしょ。

 また、ギャラリーによる撮影も解禁にしたらどうでしょう。スマホのシャッター音の問題はあると思いますが、とりあえず、ZOZOチャンピオンシップでは、写真撮影、動画撮影は一部でオーケーだったので、そうしたことにも少しずつ取り組んでいくべきだと思いますよ。

 アメリカは、シャッター音のしないカメラであれば、撮影オーケーにしているところもありますからね。

 とにかく、やり方によっては、日本の男子トーナメントも派手に演出できるわけですから、そこのところ、もっと考えてほしいです。

(3)テレビ用の演出を考えるべき
 女子のトーナメント中継では、テレビ局側が勝手にドラコン測定とかやっていますが、「お~、270ヤード飛んだぁ~」なんてホールは、ボールの落下地点が微妙に下り傾斜だったりします。だとしても、そういう演出はやったほうがいいです。

 結局のところ、NHKの”リアル主義”な作り方が、仇になっていますよね。昔のジャンボ尾崎選手のように、本当に規格外だったら、そのまま映しても問題ないのですが、今の日本の男子プロでは、「なんか工夫しないといけないかなぁ」って思います。

 試合というのは、プレーヤー同士の間で差がつけばいいので、グリーンが速かろうが、遅かろうが、視聴者はさほど気になりません。

 どこの国とは言いませんが、ボサボサのグリーンでトーナメントをやっていたのを、テレビで見たことがあります。それを思えば、できることはいろいろとあると思うんです。

 コースレイアウトをより面白くするとか。その結果、派手な池ポチャがあったり、海越えのグリーンに乗せたり、そういうアトラクション的な光景があって、視聴者は興奮を覚えるんですよ。

 コースの運営や設定に関して、どこを向けばいいのか? 男子ツアーの関係者は悩んでいるんじゃないでしょうか。でも、最終的には「昔からの伝統だから」と言って、ラフを伸ばしてフェアウェーを狭くし、グリーンを速くしておけばいいや、くらいの演出しかしないのが、日本の男子ツアーの現状です。

(4)相当変わったことをすべき
 たとえばですが、このショートホールだけは、ギャラリーも騒いでいいし、カメラのフラッシュもたいていいとかね。人気を得るには、そういうことも「仕方のないことだ」と諦めて、実践してみてはいかがでしょう。

 思えば、昨秋のZOZOチャンピオンシップで、タイガー・ウッズのプレーを見に行きましたけど、みなさん、ほとんどフライング気味に騒いでいましたよ。

 タイガーに対する声援って、他の選手とは10倍ぐらいの違いがあります。その絶叫のなかで優勝するんですから、並大抵の精神力じゃありません。



こんな賑やかな状況でもプレーできるようになれば、相当すごいですが...

 渋野日向子選手じゃないけど、男子プロももっとギャラリーを味方につけないと。ストロボが眩しいとか言っているうちは、一流のプロじゃないです。

 武道館のステージだって、照明で何も見えないなか、1万人を相手に歌うわけでしょ。スターなんだから、その特殊な環境に酔いしれないと。

 選ばれし人しか見ることのできない”てっぺん”という世界。プロが競い合う舞台は、そういうところです。その頂きにようやくたどり着いたのに、「ギャラリーがうるさい」と言ったら、小物以外の何物でもないでしょ。

 そういえば、初めてマスターズに出場した某日本人選手が、「ギャラリーに(ボールが)当たったらどうしよう。ドキドキして、第1打は頭の中が真っ白でした」とコメントしていました。

 どんな状況にあっても、実力を発揮できる――それが、”てっぺん”を極める人なんだと思うんですよね。