2020年女子ツアー「期待の新星」吉田優利インタビュー(前編) カメラの前に立った吉田優利(19歳)は、両手の指でふたつの輪っかを作って、ニコリと微笑んだ。これは、渋野日向子や畑岡奈紗ら1998年度生まれの「黄金世代」とはふた学年下の、20…
2020年女子ツアー「期待の新星」
吉田優利インタビュー(前編)
カメラの前に立った吉田優利(19歳)は、両手の指でふたつの輪っかを作って、ニコリと微笑んだ。これは、渋野日向子や畑岡奈紗ら1998年度生まれの「黄金世代」とはふた学年下の、2000年度生まれの「ミレニアム世代」のポーズだという。
同世代は「黄金世代」をしのぐ世代とも言われ、「プラチナ世代」とも呼ばれる。
実際、吉田は2018年に日本ジュニアと日本女子アマを制し、昨年(2019年)はあの渋野の初優勝に沸いたワールドレディスチャンピオンシップ・サロンパスカップで、アマチュアながら4位タイに食い込んだ。その後、プロテストに一発合格し、QTでも20位に入って、今季ツアー前半戦の出場権を手にした。
アマチュアでツアー優勝を飾って、昨年ひと足早くプロ入りした古江彩佳や、すでにプロツアーで好成績を出し続け、一緒にプロテストに合格した安田祐香ら”同期”とともにブレイクが期待される、注目ルーキーのひとりだ。
日本ツアー開幕に先がけて、吉田は米LPGAツアーのISPS HANDA オーストラリア女子オープンでプロデビューを飾った。結果は予選落ちとなったものの、そこで得たものが多かったという彼女に、ルーキーイヤーに賭ける思いを語ってもらった--。
--なぜ、海外のトーナメントをプロデビュー戦に選んだのでしょうか。
「まず、自分がプロのトーナメントでどれだけできるのか、というのを把握したかったんです。オーストラリア女子オープンは3年連続の出場となりますし、回ったことがあるコースということで、いいイメージもありました。思い入れのあるオーストラリアで、プロ初戦を迎えられたことは、純粋にうれしかったですね」
--残念ながら、結果は予選落ちに終わりましたが、プロとしての”現在地”は確認できましたか。
「風が思った以上に強くて、スイングが崩れてしまって……。パッティングについては、あまり入りませんでしたが、いいタッチ、ストロークで打てていました。うまくいかなかったことも、うまくいったことも、事実としてしっかり受け止めて、いい経験になったと思います」
--同じトーナメントでも、アマチュアとして臨むのと、プロとして臨むのとでは、気持ちの持ちように違いはありましたか。
「それが、あまり変わらなかったんですよね……。ただ、プロとして、単純に『いい経験になりました、では済まないな』『お金を稼がなきゃ』ということは、強く思いました。
やはりプロとして(スポンサードを受けている)責任もありますから、大好きなゴルフを楽しんでいるだけではダメで、『私はプロ』という意識を持たなきゃいけないなって」
--昨年5月、渋野選手が優勝したワールドレディス・サロンパスカップで4位タイと好結果を残しました。あの経験は、実力を推し量る物差しになったのではないですか。
「う~ん、そうでもないですね。よかったのは、あの1試合だけで、その後は(プロのトーナメントで)予選落ちもしましたし、予選を通過できてもギリギリだったりしたので」
--3日目、最終日の2日間、渋野選手とペ・ソンウ選手と同組(最終組)でした。先輩プロのプレーを間近で、どうご覧になっていましたか。
「おふたりはパターがうまくて、ボコボコ入れていました。それに、ショットもよくて、とにかくゴルフのバランスが優れているな、と。日向子さんは、とりわけパターが突出してうまい、というのが印象的でした。
パターだけがよくても、ショットだけがよくても、ここ(プロの舞台)では戦いにはならない。両方の状態がよくないと優勝できない、と痛感した決勝ラウンドでしたね。
追う立場だった自分も悪くはなかったんですけど、間近にいながら、テレビでおふたりの優勝争いを見ている感じで、とにかくおふたりのプレーをきちんと見ることに徹して、マネジメント的な情報を得るようにしていました」
--そういった姿勢は、ご自身がプロではなく、アマチュアという立場だったからですか。
「いえ、誰と回っても同じです。たとえば、プロになった私が、アマチュアの子と回る機会があったとしても、その子のスイングもしっかり見るし、その子のプレーから、いろいろな情報を得ようとする姿勢は変わりません。
アプローチを例に挙げるなら、自分のアプローチのキャリーとランの距離と、他の選手のキャリーとランの距離を比べて違いがあれば、落としどころの芝の硬さや傾斜など、いろんな情報が得られるじゃないですか。4人で回っていたら、他の3人のプレーから情報を得ることは、ゴルフをやるうえでとても大事だと思います」
--同じ「プラチナ世代」の古江選手が昨年、富士通レディースでいち早く優勝(当時はアマチュア)しました。同世代の優勝はどう受け止めましたか。
「(自分のことを)『プラチナ世代』として、注目していただいていることに関してはうれしいですし、『プラチナ世代』の一員として、私も結果を残したいと思っています。
そうしたなかで、『(同世代に対して)ライバル意識はありますか?』ってよく聞かれますけど、(同世代の選手に)先に勝たれたことで嫌な気持ちになることなんてまったくないし、(同世代の選手が)先に結果を出したことで、自分が焦ることもありません。
古江さんの優勝は、純粋にうれしかったし、本当にいい素質を持ったゴルファーで、尊敬すべきゴルファーです。いい意味で”人は人。自分は自分”。みんなで『プラチナ世代』を盛り上げていきたいです」
--古江選手は古江選手、吉田選手は吉田選手で、「必ず優勝を狙うよ」と。
「私にも(優勝)できると思いますか? と訊ねられたら、『わからないです』としか答えられないですけど(苦笑)。他の人のことより、自分がどうゴルフと向き合っているのか--そのほうが重要だと思います」
--ゴルファーとして、ご自身のストロングポイントを教えてください。
「ずっと”粘り”をテーマにしてきました。粘り強く、勝負強いプロになれたらいいな、と思うんですけど。ショットでは苦手なクラブがない、というのは自分の強みかなと思います……得意と言えるようなクラブも、とくにないんですけど(笑)。
オールマイティなプレイヤーとして、すべてをレベルアップして、活躍したいですね。
ショットに加えて、私が大事にしているのは、しっかり頭を使って、誰よりも効率的なコースマネジメントをする、ということ。レベルの高い実力があるプロがたくさんいるなかで、(自分が)”知識”で違いを出せたら、(他のプロとの差を)一日に”0.5打”でも縮められると思うんです。
私はナショナルチーム時代に、海外(での試合)をたくさん経験させていただきましたし、ナショナルチームのコーチからも、『試合に臨む準備と、コースマネジメント』というテーマについて、ものすごく言われてきました。それは、これからプロのトーナメントに臨むうえでも大切にしていきたいです」
(つづく)
吉田優利(よしだ・ゆうり)
2000年4月17日生まれ。千葉県出身。身長158cm。血液型O型。2018年に日本ジュニアと日本女子アマを制して脚光を浴びる。ナショナルチームでも活躍し、各大会で好成績を残してきた。昨年、プロテストに合格し、QTでも20位という成績を残して、今季からツアー本格参戦を果たす。