ヴィッセル神戸インタビュー特集(3)MF山口蛍 ヴィッセル神戸の山口蛍は今シーズンも、例年と同じ目標を掲げた。「1年を通してケガをすることなく、できるだけたくさんの試合に出て、チームに貢献すること。そのために、日々のトレーニングにしっかり取…
ヴィッセル神戸インタビュー特集(3)
MF山口蛍
ヴィッセル神戸の山口蛍は今シーズンも、例年と同じ目標を掲げた。
「1年を通してケガをすることなく、できるだけたくさんの試合に出て、チームに貢献すること。そのために、日々のトレーニングにしっかり取り組んで、監督から求められる仕事、チームでの役割を理解して試合に臨みたいと思う」
そのベースさえ見失わなければ、長いシーズンを安定して戦い抜ける自信があるからだ。
「チームに力を与えるプレー」を意識していきたいという山口蛍
事実、昨年はそのプロキャリアにおいて、初めてとなるJ1フル出場を実現。試合によっては、ポジションを本職のボランチからインサイドハーフに変えながらも、安定したパフォーマンスを発揮し続け、攻守に存在感を示したシーズンになった。
それについては、「結婚をして、食事のところとか、普段の生活を奥さんがサポートしてくれるようになったおかげ」と山口。心強きパートナーへの感謝の気持ちを語ったが、一方で「満足できるシーズンだったとは言えない」という厳しい言葉も。
それは、普段から第一に求め続けている”チームの結果”が伴わなかったからだ。とくに、一時期は7連敗を喫するなど、残留争いにも巻き込まれたJ1での結果は、自身がシーズン前に描いていたそれとは大きく違っていた。
「正直、元日の天皇杯でタイトルを獲得できなければ、『失敗』と言われても致し方ないシーズンだったと思っています。このクラブに加入した時は、あそこまでJ1で苦戦を強いられるとは、想像していませんでした。
7連敗という事実もさることながら、(第28節の)サンフレッチェ広島戦のように、歯止めがきかなくなったように失点を重ねて、2-6で敗れるというような試合は、プロとしてあってはならないものだったと思っています。僕を含めた新加入選手は、”変化”を期待されて獲得してもらい、その期待に対して、結果で応える自分でいたいと思っていただけに、不甲斐なさしか残りませんでした」
であればこそ、自身にとって、ヴィッセルでの2シーズン目の目標には、「1年を通した結果」を掲げている。コンスタントに結果を求められるチームになってこそ、本当の”強さ”を備えられると考えるからだ。
そのために、継続と変化をキーワードに挙げる。
「昨年、シーズンの途中に(トルステン・)フィンク監督が就任して以降、やり方を変えずに続けてきたことが、終盤になってようやくチームの形として定着したと考えても、長丁場の戦いにおいて、安定してパフォーマンスを発揮するには、チームとしての軸が必要です。
だからこそ、攻撃は守備のために、守備は攻撃のためにがんばることで、チームとして連動しながら、多くのチャンスを作り出すことや、状況や展開に応じて、臨機応変にポジションを変えてプレーすることは、続けていきたいと思っています。
といっても、結果が物語っているとおり、終盤戦においても、すべての試合でそうしたサッカーを安定して発揮できたのかといえば、そうではありません。僕も含めて、個々のプレーの精度には波があったし、それがチームの戦いに影響した試合もあったと思います。
でもそれでは、上位に食い込んでいけないというか。近年のJ1はとくに、優勝争いも、残留争いも熾烈で、僅差の争いになっていることを考えても、上位争いに食い込んでいくためには、確実に勝ち点を積み上げていくことが大事になります。
そのためにも、もう少し賢くシーズンを戦う必要も出てくると思います。たとえば、自分たちの戦い方が安定するまでの序盤戦では、理想のサッカーを追求する以上に、勝ち点を積み上げていくことを考える、というように。
実際、去年の前半戦の僕たちもそうだったように、どれだけやりたいサッカー、理想とするサッカーがあったとしても、結果がついてこないと、選手は自信をなくしていく一方で、ともすれば、自分たちのサッカーに迷いを生むことにもなりかねない。
とくに僕たちは、天皇杯こそ獲れたものの、それ以外では何も成し遂げていないと考えても、なおさらそう思います。
川崎フロンターレや鹿島アントラーズのように毎年、安定して優勝争いに食い込んでいけるチームなら、少々、勝ち点を獲れない時期があっても、クラブに備わる経験値で乗り越えられることもあるかもしれないけど、僕たちはそういう歴史を築いてきたチームではないですから。
だとすれば、序盤はとくに、1-0で勝っている試合を確実に終わらせるとか、1-1の状況でも……勝てれば理想だけど、展開によっては、引き分けで終わらせるとか。そうやって、確実に勝ち点を積み上げていくことも大事だし、その継続が最終的なチームの結果にも、影響していくんじゃないかと思っています」
チームの先頭に立って、チームをけん引するひとりとして、山口自身は「チームに力を与えるプレー」を心がける。チームが苦境に立たされた時、あるいは、苦しい展開に持ち込まれた時に、何ができるか、どんな変化を与えられるか、を自身に問いかけながら。
「リーグ戦での結果を求めるには、勝つことは常に目指しながら、でも負けないことも大事だし、点を取ることは目指すけど、失点しないことも大事というバランスを、常に試合の中で考えなければいけない。そのためには、中盤を預かるひとりとして、チームを落ち着かせるとか、緩急をつける役割を担わなければいけないと思っています。
もっとも、サッカーはチームで戦うもので、誰かひとりで変えられること、できることは何もありません。でも、一人ひとりが”チームに力を与えるプレー”を意識して戦い、その力がしっかりと結びつけば、チームは間違いなく強くなる。だからこそ、どんな時も、常にチームに力を与えるプレーを意識して、ピッチに立ちたいと思います」
今年最初のタイトルマッチとなった富士ゼロックススーパーカップ。後半の69分に挙げた、この日3度目のリードを奪うゴールも、また、PK戦で7人目のキッカーに立ち、勝利を決定づけた一撃も、まさにその言葉を裏づけるパフォーマンスだった。