リーガ・エスパニョーラは、今も「世界最高峰リーグ」と言えるだろう。 昨シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)決勝がリバプール、トッテナムの英国プレミアリーグ勢同士だったように、勢力は脅かされつつある。しかし、スペイン勢は過去6シーズンで、…

 リーガ・エスパニョーラは、今も「世界最高峰リーグ」と言えるだろう。

 昨シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)決勝がリバプール、トッテナムの英国プレミアリーグ勢同士だったように、勢力は脅かされつつある。しかし、スペイン勢は過去6シーズンで、レアル・マドリードが4回、バルセロナが1回、欧州王者となっており、アトレティコ・マドリードは2度ファイナリストになっている。そして今シーズンも、4チームがベスト16に進出しているのだ。

 リーガ・エスパニョーラは、その”地盤の強さ”で各国リーグを凌駕する。



バルセロナU‐20に近いバルサB。左から2人目は安部裕葵

 育成面で優れ、下部リーグが充実し、多くの逸材を欧州の有力クラブに輩出している。ダビド・シルバ、ロドリ(マンチェスター・シティ)、ケパ・アリサバラガ、セサル・アスピリクエタ(チェルシー)、ホセ・マリア・カジェホン、ファビアン・ルイス(ナポリ)、チアゴ・アルカンタラ、ハビ・マルティネス(バイエルン)、ダニ・オルモ(ディナモ・ザグレブ→ライプツィヒ)、ファン・ベルナト(パリ・サンジェルマン)……。CLベスト16クラブの主力だけでも、これだけのスペイン人選手がいる。一方、イングランド出身の選手は、他国リーグの有力クラブにほとんどいないのが現状だ。

「2部B(セグンダ・ベー)」という実質3部リーグでの切磋琢磨が、競争力を高め、リーガの強さを支えている。

 2部Bは4つの地域で20チームずつのリーグ戦を行ない、上位4チームがプレーオフに進出。80チーム中で4チームのみが2部A(実質2部)に昇格できる。

 そしてその2部Bでは、有力クラブのセカンドチームに当たるBチームが鎬(しのぎ)を削っている。バルサB、カスティージャ(レアル・マドリードB)、アトレティコ・マドリードBはいずれも2部Bに在籍。レアル・ソシエダ、アスレティック・ビルバオ、ビジャレアル、バジャドリードのBチームも、今シーズンはプレーオフ進出可能な順位で戦っている。

 セカンドチームの存在こそ、リーガの熱源になっているのだ。

 U‐20に近い陣容のBチームが、大人のチームを相手に勝つのは簡単ではない。若いチームは俊敏さに優れ、勢いに乗ると強いが、老練さに欠ける。優勢にボールを回しても、一発で沈むこともしばしばだ。ただ、成熟した大人と対峙することで、毎試合、成長が望める。アンドレス・イニエスタも、リオネル・メッシも、Bチームでこのカテゴリーを経験している。

 そこは育てられる場所ではなく、生き残る場所だ。

 バルサBもその点で容赦はない。バルサBは昨年、オランダ代表フレンキー・デ・ヨングの代理人の息子と契約して話題になったが、実力不足と見切りをつけ、今年1月には契約満了でトルコのチームに放出した。同じく期待のFWアベル・ルイスはポルトガル1部のブラガへローンし、アレハンドロ・マルケスもユベントスに820万ユーロ(約10億円)で売り払っている。

 ちなみにそのアベル・ルイス、マルケスを押しのけてプレーしていたのが、日本代表MF安部裕葵だった。”偽9番”(MFだがFWとしてプレー)のポジションを任され、4ゴールを記録した。ただし、今年2月にハムストリングのケガで離脱を余儀なくされ、今シーズン中の復帰は厳しくなったが……。

 有力クラブのBチームは、シーズン中にも激しく様変わりする。活躍した選手はトップに昇格するし、その穴を埋めるのはユースの選手となるケースが多いが、緊急的な補強もある。

 レアル・マドリードのOBラウル・ゴンサレス監督が率いるカスティージャは、シーズン前半、苦戦を強いられていたことで、昇格優先の手を次々に打っている。今年1月、23歳になる2部ジローナのFWマルク・グアルを獲得、勝負に徹した強化をした。

 さらにトップチームにいたロドリゴ・ゴエスを”降格”させ、勝ち星を稼いでいる(ロドリゴはレジェス戦で勝利に貢献したが、ゴール後にGKを侮辱した行為で退場処分になっている)。ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴに次いで、ブラジルから3000万ユーロ(約36億円)で獲得した17歳のMFレイニエルはどこまでやれるか。

 Bチームを”試練”にするのは、選手だけではなく、監督も同様だ。

 ジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)はバルサBを2部Bに引き上げ、ジネディーヌ・ジダンはカスティージャで経験を積み、トップチームを率いるようになった。今シーズンのリーガで評価の高いレアル・ソシエダのイマノル・アルグアシル、アスレティック・ビルバオのガイスカ・ガリターノ、グラナダのディエゴ・マルティネスも、それぞれBチームを率いた経験を糧にしている。今後の注目は、現在のソシエダBの指揮官シャビ・アロンソで、名将候補ナンバー1だ。

 さまざまなチームで選手時代を過ごし、指導者として戻り、若い選手の触媒になる--。スペイン有力クラブのBチームはひとつのサイクルを生み出している。