昨年11月、サントリーサンゴリアスを退団し、アメリカ・メジャーリーグのニューイングランド・フリージャックスへの移籍を表明した畠山健介選手。アメリカへの移籍を決めた真意や日本のラグビー界への想いなどを語ってもらった。 

 

−移籍を決断した経緯を教えてください。 

 2008年から11シーズン、日本のトップリーグ、サントリーサンゴリアスでプレーをしてきて、チームとの契約更改に至らなかったので、移籍をするか、引退をするかの選択肢になりました。このタイミングで選手としてのキャリアを終えて、令和から新たなステージに行くのも有りなのかなと思っていましたが、たとえ世界で一番好きなチームでできないとしてもラグビーがしたいっていう気持ちには嘘をつけなかったです。 

 そこで移籍ということになるのですが、他の国の他のリーグでキャリアを積んだ方が自分にとっていい経験になるんじゃないかと想い、海外への移籍を決めました。 

 

−なぜアメリカへの移籍を決めたのでしょうか。 

 ラグビーはイギリスやフランスのリーグが盛んで、伝統もありますし、規模もすごく大きいのですが、外国人の枠がどんどん狭まってきています。自分たちの国の代表、ナショナルチームを強くするためのリーグというあり方で捉えています。その中でアメリカは比較的これからラグビー自体を良くしていくようなスタンスなので、ヨーロッパよりも寛容的でした。オールブラッグスの選手などもアメリカのメジャーリーグラグビーへの参加を表明しているので、新しい何かが生まれるのではないかという期待もあり、アメリカへの移籍を決断しました。 

 また、アメリカのようなスポーツビジネスの最先端でノウハウをしっかり持っているところが、ラグビーというコンテンツをどう広げていくか純粋に興味がありました。スタートした時は7チームだったものが、昨年9チーム、今年は12チームと年々増えていっています。ビジネスに厳しいアメリカが増やすっていうのは、大きな可能性を秘めていることだと思います。アメリカはなにか手応えを掴んでいるのかなと。そこに飛び込んでいって小さなマーケットから大きなマーケットにしていくうねりに巻き込まれてみたいなと思いました。 

畠山健介選手

−移籍を決断した時の周囲の反応はどうでしたか。 

 周囲からは「アメリカ行ってどうすんだよ」と言われました。現時点ではおそらく日本のほうが強いのかもしれないです。ただアメリカはスポーツビジネスのノウハウを持っているので、メジャーリーグラグビーはまだ準備をしている段階だと思います。おそらくものすごいポテンシャルを秘めていると思いますよ。日本が持っているアドバンテージが一瞬で溶けてしまうくらい、アメリカのポテンシャルは高いと思いますよ。 

 日本のラグビー界はどういう風に見せれば、ラグビーが光り輝くのか、ラグビーというものに人はお金を払いたくなるのかということをずっと考えています。それをアメリカがこの短期間でやってのけたら、日本ラグビーはこれまで何をしていたんだっていうショックを受けると思います。 

 

−プレイヤーとしてはどのような実績を残していきたいですか。 

 第一に、ハイパフォーマンスであること。グラウンドの上でどれだけいいパフォーマンスを発揮できるか。グラウンドの上でのインパクトがグラウンドの外での信頼につながると思います。まずグラウンドで100%の自分を出して、その上で仲間や周りの人を巻き込んで、なにかこうまた違ったことができたらいいなという風に思います。ラグビーはろうそくに火を灯して、自分の命を削るようなスポーツだと思います。この瞬間しかできないので、この瞬間をできるだけ長く続けたいと思っています。 

 

−その中でスポーツギフティングサービスを活用していくと伺いました。 

 僕は1円でももらったらプロだと思っています。たとえ10円であっても、その10円以上の価値をパフォーマンスや何かしらの形で発信することがプロとしての僕の役割なので、金額に拘らず、応援してくれる人のために一生懸命プレーしようと思います。 

 

−集まった資金はどのように活用していきますか。 

 活動資金にできればと思っています。チームの持っているシーズンチケットを確保してもらっていて、そのシートに子ども達やラグビーを見たことがない人を招待したいです。こういったアイデアをチームのマネージャーやスタッフが応援してくれているので、その資金にも充てたいなと思います。 

 

−ファンに支えられている意識は以前からあったのでしょうか。 

 ある時を境に、ラグビーやスポーツって誰が支持するんだろうと考えるようになって、それがファンなんだと感じるようになりました。ファンが応援してくれているからラグビーができる。そして、そういう人が多くいるのを見てスポンサーが投資してくれる。お客さんが対価を払うところにスポンサーが投資するというのが本来あるべき姿だと思います。これは日本のラグビー界でなかなかあまりない考え方ですが、アメリカはそういった考え方が当たり前のように存在しています。 

 そしてアメリカのスポーツのスーパースターは、寄付したり、ボランティアをしたりしています。だからみんなスポーツに理解があるし、応援しようとします。スポーツの持つ可能性を支持するんですよね。そういった感覚は日本では感じられないと思います。それをアメリカで、僕の得意なラグビーというもので、応援されることがこんなに素晴らしいんだっていう感覚を体感してみたい。お金を払ってもらった分はプレーで返す。その代わりに駄目なプレーをしてブーイングをされたりファンが来なくなってしまうのは、僕の責任になるのでそこの責任はしっかり果たしたいですね。 

 畠山選手が活用するスポーツギフティングサービス「Unlim」は、①競技活動資金に充て新たな挑戦をしたい、②自身の活動だけではなくスポーツや競技そのものを盛り上げていきたい、③スポーツを通じて社会に貢献したい、といったさまざまな思いを持つアスリートやチームに対して、金銭的に支援するサービスだ。 

 スキージャンプの髙梨沙羅選手やFC東京の森重真人選手らが登録しており、今後も登録アスリートやチームが増えていく予定だ。 

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新天地アメリカでの畠山選手の活躍に期待しよう。