レアル・マドリード対マンチェスター・シティ。チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦、レアル・マドリードホームの第1戦は、ジネディーヌ・ジダン対ジョゼップ・グアルディオラの、監督采配が明暗を分けたと言いたくなる一戦だった。試…

 レアル・マドリード対マンチェスター・シティ。チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦、レアル・マドリードホームの第1戦は、ジネディーヌ・ジダン対ジョゼップ・グアルディオラの、監督采配が明暗を分けたと言いたくなる一戦だった。



試合後に握手をかわすジョゼップ・グアルディオラ(マンチェスター・シティ)、ジネディーヌ・ジダン(レアル・マドリード)両監督

 2人は現役時代、レアル・マドリード、バルセロナ両名門クラブの看板選手として活躍した名手だが、スペインリーグの土俵では戦っていない。グアルディオラがバルサを去ったタイミングで、ジダンがレアル・マドリードにやってきた。監督としても戦った過去はない初対戦だった。

 グアルディオラがCLで、バルサ以外の監督としてサンティアゴ・ベルナベウに乗り込むのもこれが初めて。したがってマドリディスタ(レアル・マドリードファン)は、クラシコに臨むような敵対精神を漲らせスタジアムを訪れたと思われる。それだけに今ごろは地団駄を踏んでいるに違いない。1-2という結果が、両監督の采配と深い関係にあることは、マドリディスタとて認めないわけにはいかないはずだ。

 試合は後半15分、レアル・マドリードが先制した。マンチェスター・シティの守備陣、ロドリ、ニコラス・オタメンディ、カイル・ウォーカーがもたつくところを、4-3-3の左ウイング、ヴィニシウス・ジュニオールが走力を活かしてボール奪取。すかさず折り返すと、待ち構えていたイスコが鮮やかに合わせ、試合をリードした。

 そこまでペースを握っていたのはマンチェスター・シティ。直前にもレアル・マドリードのGKティボー・クルトワが神がかり的なセーブで決定機を防いだばかりだった。

 レアル・マドリードとマンチェスター・シティ。これまでCLの舞台で試合巧者ぶりを発揮してきたのはレアル・マドリードだ。その抜け目のなさと、マンチェスター・シティの間の悪さ。それぞれが同時に鮮明となった瞬間だった。
 
 劣勢だったレアル・マドリードはこれで息を吹き返す。最も目を惹いたのはヴィニシウスで、その若々しくもスピード感溢れる左からのサイド攻撃が、チームに勢いを与え、ピッチ全体に大きなインパクトをもたらしていた。

 その分だけ、右サイドの攻撃は滞りが目立つことになった。右ウイングにいるはずのイスコは、そもそもその場にいる時間が短かった。フリーマンのようにピッチのいたるところに移動。フェデリコ・バルベルデ(右のインサイドハーフ)やカリム・ベンゼマ(CF)、ダニエル・カルバハル(右SB)などが、イスコの移動に合わせて、バランスを取り合うことでその穴を取り繕っていた。

 しかし、右サイドの攻撃には左のような推進力が生まれなかった。カルバハルの攻め上がりに頼る場合がほとんどだったので、ゴールライン際まで奥深く進入することもできなかった。

 交代カードを切るならイスコに代えてルーカス・バスケスが妥当ではないか。そうした思いを抱いていると、グアルディオラが先に交代のカードを切った。後半28分、ベルナルド・シウバ(1トップ下)に代えてラヒム・スターリングを左ウイングに投入。それまで左で構えていたガブリエル・ジェズスを玉突きのようにCFへ移動させる。そしてCFっぽい役割をこなしていたケビン・デ・ブライネをジェズスの下に持ってきた。

 左サイドにスピード感を求めたのだ。一方、その2分後、ジダンはそれとは真反対の行動に出る。スピード感溢れるプレーを披露してきたヴィニシウスを下げ、同じポジションにガレス・ベイルを入れた。右のイスコは残したままにした。

 これで形勢は一転した。マンチェスター・シティに同点ゴールが生まれたのはその3分後。イルカイ・ギュンドアンの縦パスを受けたスターリングが左サイドを疾走し、深い位置に進出する。そのリターンを受けたデ・ブライネも再び左奥を突いた。能力の高いこのベルギー代表の中心選手は、同サイドに寄るレアル・マドリードDF陣の動きを確認すると、反転して右足で折り返した。ボールはセルヒオ・ラモスを越え、ジェズスの頭にピタリと合った。さすがのクルトワも、ゴールラインにたたき落としたそのヘディングシュートをかき出すことはできなかった。

 1-1としたマンチェスター・シティはその5分後、スターリングが左サイドで再びスピードを発揮した。カルバハルと1対1になると縦突破を敢行。ペナルティエリア内に切れ込んだ瞬間、カルバハルはたまらず反則タックルに及び、PKを献上した。

 デ・ブライネがこれを決め、マンチェスター・シティは逆転に成功した。ジダンは逆転されたあとようやく動いた。イスコに代えルーカス・バスケスを、ルカ・モドリッチに代え、ルカ・ヨビッチを投入。後半39分という押し詰まった時間だった。

 なぜヴィニシウスの交代が先で、イスコの交代がこれほど遅れたのか。スターリングを真っ先に投入したグアルディオラの采配が、より光る結果となった。

 采配を自ら的中させ、アウェー戦を1-2でモノにしたグアルディオラだが、この結果に大満足しているとは思えない。セルヒオ・ラモスが使った奥の手で、もう1点取り損なっていたからだ。後半41分、カゼミーロのバックパスをかっさらったジェズスが、セルヒオ・ラモスをかわし、クルトワと1対1になった瞬間だった。抜かれたセルヒオ・ラモスが、ペナルティエリア寸前でそのジェズスの腕を引っ張り、倒したのだ。倒れた場所はエリア内だったが、判定は直接FKに。リヤド・マフレズの左足キックはGK正面だった。

 セルヒオ・ラモスは一発退場に処されたが、1-3で敗れることを考えれば、これは痛みの弱い罰則だろう。まさにプロフェッショナルファウルと言いたくなるずる賢く戦術的なファウルを、マンチェスター・シティは犯されてしまった。この損したアウェーゴール1点分が、次戦にどう影響するか。レアル・マドリードはまだ、チャンスを2、3割程度、残した状態にある。

 2月25、26日に行なわれた残る3試合の結果はチェルシー0-3バイエルン、ナポリ1-1バルセロナ、リヨン1-0ユベントス。

 リヨンとユベントスの力関係はほぼ互角。ナポリとバルサは、アウェーゴールを奪っている分、バルサ有利だが、肝心のサッカーの内容がさっぱりなので、ナポリに勝利しても、先が知れているという印象だ。

 強さが光ったのはアウェーでチェルシーに大勝したバイエルンだ。CL優勝には順番のようなものを感じる。バイエルン(2012-13)、レアル・マドリード(2013-14)、バルサ(2014-15)レアル・マドリード(2015-16から3連覇)、リバプール(2018-19)。この流れから占うならば、順番的にバイエルンが来るような気がしてならない。

 ビッグクラブの中で最もモチベーションが高く、サッカーに新鮮さがある。ピッチを広く使ったテクニカルで高速なサッカー。見た目的にも悪くない、高次元でバランスが取れたチームだと見る。

(1)マンチェスター・シティ、(2)バイエルン、(3)リバプール、(4)バルセロナ、(5)パリ・サンジェルマン、(6)ユベントス……。ブックメーカーの優勝予想順位はこのようになっている。