専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第244回 いきなり「フェアなコース」「アンフェアなコース」と言われても、みなさん、面食らってしまうでしょう。 まず、フェアという言葉を調べてみると、「安全」とか「公明正大」と…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第244回

 いきなり「フェアなコース」「アンフェアなコース」と言われても、みなさん、面食らってしまうでしょう。

 まず、フェアという言葉を調べてみると、「安全」とか「公明正大」という意味であることが記されています。

 フェアウェーは、もともと航海用語で「安全なルート」という意味でした。それが、ゴルフに転じて「安全な道筋」という意味で使われています。

 だから、少し前にこのコラムで記しましたが、枕木をバンカー脇に置く、ピート・ダイの設計思想に対して、井上誠一は「フェアじゃない」と異を唱えました(2月13日配信「プロを震え上がらせた設計。鬼才ピート・ダイを偲ぶ」)。枕木にボールが当たると、予想外の方向にボールが飛ぶ可能性があるので、これは「安全な道筋」ではない――アンフェアだと思ったわけですね。

 こうした”アンフェア”とも捉えられるコース設計や、ルール、環境、料金……などが、調べてみるといくつかありました。今回は、それを紹介していきましょう。

(1)36ホールあるコースの場合
 私は過去に、36ホールあった南総カントリークラブ(千葉県)と鶴舞カントリー倶楽部(千葉県)のメンバーでした。

 なんで、36ホールあるコースのメンバーになったのか?

 それは、飽きるのを防ぐため、です。

 とくに鶴舞CCは2グリーンなので、季節によって、高麗、ベント(現在はダブルベント)のグリーンに使い分けられて、それぞれまったく違う攻め方をすることになるので、すごく刺激的でした。

 実質72ホールあるようなもので、非常に楽しい倶楽部ライフを送ることができました。

 さて、もし36ホールあるコースの会員権購入を考えているなら、あるポイントをチェックする必要があります。たとえばコースが東西ふたつある場合、どちらも均等な長さ、面白さである、ということです。

 だって、片方がパー72の全長6900ヤードで、もう片方がパー71の全長6500ヤードだったら、誰もがパー72のコースを予約したがりますからね。

 土地の都合なのか、泣く泣くそうなったコースをいくつか知っています。平成時代までは、わりとありました。

 そういうコースはおおよそ、いつ行ってもパー72の”本コース”は満員御礼。パー71の”サブコース”はガラガラ状態が続いています。メンバーは、36ホール分で募集していますからね。

 それでいて、料金の差をつけず、一緒にしているコースもありました。そうなると、パー71のコースで回る時は、すごく損をした気分になります。



そりゃ、パー71より、パー72のコースでラウンドしたいですよね...。同じ値段なら、なおさらです

 どうです? これって、見事なアンフェアなコース作りですよね。

 私は、こうなることを予測して、南総CCと鶴舞CCのメンバーになりました。それぞれ、東西どちらのコースも面白く、甲乙つけ難い魅力があることを、事前に確認していましたから。

 ちなみに、南総CC、鶴舞CCともに、風情があってテクニカルなのが東コース、雄大で難易度が高い競技向けが西コースと、個人的には思っています。機会があったら、ぜひラウンドしてみてください。

(2)ディボットが多すぎる
 いつも満員の大衆コースの芝は、お客さんを詰め込まない高級コースの芝よりも、荒れていますよね。とくにひどいのが、ディボット跡の数です。逆にフェアすぎる?

 そうした大衆コースで一番つらいのは、池の手前やドッグレッグの曲がり角です。みんな同じところから打つので、ディボット跡のほうが芝生の部分よりも多い!? なんてことも……。

 これじゃあ、永久にディボット跡地獄から抜け出せないかもしれません。あまりディボット跡が多い時は、ローカルルールで、そういう場所だけボールを動かせるようにしないと。そうしなければ、いつまで経っても芝生が生えてこない……なんてことも起こり得ますからね。

 なるべくなら、そういうコースは回りたくないです。

(3)逆光に見舞われる
 これについては、「仕方がない」と嘆く人がいますが、そんなことはありません。井上誠一は、札幌ゴルフ倶楽部の設計以降、基本的には”逆光ナシ”を考慮して、コースのレイアウトを作成しています。

 実際、私が7年間メンバーだった鶴舞CC(井上誠一設計)では、逆光に遭遇したことはありません。「それが当たり前」だと思っていたので、今となっては、ほかの人より逆光が苦手です。

 逆光が苦手だから、井上誠一が後期に設計したコースしかラウンドしない――なんてことは、現実的には無理です。少々の逆光コースは、我慢してラウンドするしかないな、と思っています。

 ともあれ、メンバーとなって、ホームコースにしようと考えているコースがある方は、一度天気のいい日に視察プレーをして、逆光が多いかどうか、調べたほうがいいと思いますよ。アウトとインのスタート時間によっても違いますから、何回か行くか、詳しい人に聞いて、確認しておいたほうがいいでしょう。

 ひどいと、3ホールぐらい逆光が延々と続くコースもあります。そういうコースには、また行きたいとは思いません。

 クレームを出すほどではないですけど、納得がいきません。これまた、見事なアンフェアなコースと言えます。

(4)ビジター料金が安い
 地方に行くと、メンバーのプレー代が5000円ぐらいで、平日のビジター料金が3980円といったコースがあったりします。そのうえ、ビジターにはランチセットがついている、なんてことも。

 これは、メンバーからすれば、かなりアンフェアな料金体系ですよね。しかも、ビジターはネットで予約できるし……。

 こうなると、メンバーになる理由をどこに見出せばいいのか?

 これは、メンバーライフとは何か? ということを突きつけられる問題です。

 メンバーとしては、やはり月例などの競技に出たり、倶楽部の委員となってホームコースのために奉仕したりする。そういうことをするのが、重要になってくるんでしょうね。

 逆に考えれば、競技や倶楽部活動をしなければ、メンバーになる意義は少ないです。

(5)都会のビジター料金は高い
 これが、都会にある名門コースとなると、話が違ってきます。メンバーのプレー代が1万2000円ぐらいで、ビジターはその倍とか。土日となると、食事等を入れて、3万5000円ぐらいになったりします。

 もう誘われたら、清水の舞台から飛び降りるつもりでラウンド……って、どんなラウンドやねん。

 そういうコースは、高級感が漂い、その世界観だけでも、庶民からしてみれば、アンフェアそのもの。羨んだり、やっかんだり、さらに料金が高いって、「もう二度と行かない!」と誓ったりしますね。

 そうやって、やきもきしていると、昼休みに「今日は来てくれて、ありがとう。プレー代を出すから、遊んでって」なんて、メンバーさんから言われたら、尻尾を振りまくって、ワンワン吠えるポチ状態になります。

 奢ってくれた人には、「一生、ついて行くよ~」となるんですな。そうやって、あなたは、そいつの子分に成り下がってしまう……。いやぁ~、人間関係って、ほんと怖いです。

 でも、そういう状況で奢られることは、断ることがなかなかできません。そうして、奢られ続けると、自分の立場がどんどん弱くなる。奢られるゴルフそのものが、魅惑的かつ麻薬的なアンフェアな状態と言えますね。

 そう考えると、ゴルフの付き合いそのものが、アンフェアなんじゃないかと。経済状況や練習回数によって、いかようにもなりますからね。

 ゴルフは平等の精神で「あるがままに打て」と言うけど、その打つ場所にさえ、なかなかたどり着けないこともあります。結局、「人生そのものがアンフェア」なんでしょう。

 まあ、それを言ったら、おしまいですけね。