2016シーズンも最終局面に突入している。その中で、イースタン・リーグで驚異的数字を残したのが、外崎修汰だ。8月28日から4試合連続、5試合目(9月4日vs日ハム戦)こそレフトへの1安打に終わったが、6、7試合目でも連続本塁打と、7戦で7本…

2016シーズンも最終局面に突入している。その中で、イースタン・リーグで驚異的数字を残したのが、外崎修汰だ。8月28日から4試合連続、5試合目(9月4日vs日ハム戦)こそレフトへの1安打に終わったが、6、7試合目でも連続本塁打と、7戦で7本塁打を記録したのである。打率は今月22日時点で.299と、まさに絶好調だ。

■イースタンで7戦7本塁打を記録、プロ入り後の『良い2番打者』から本来の姿に?

 2016シーズンも最終局面に突入している。その中で、イースタン・リーグで驚異的数字を残したのが、外崎修汰だ。8月28日から4試合連続、5試合目(9月4日vs日ハム戦)こそレフトへの1安打に終わったが、6、7試合目でも連続本塁打と、7戦で7本塁打を記録したのである。打率は今月22日時点で.299と、まさに絶好調だ。

 富士大学時代は、3番打者も務めたが、昨季プロ入りしてから、1軍では9番、7番での起用が主。1年目に本塁打を1本記録してはいるが、どちらかというと、足も速く、小技で貢献する、いわゆる“つなぎ”の働きが求められてきた。その、“つなぎ役”の印象が強い外崎が本塁打を量産している状態に対し、宮地克彦2軍打撃兼守備走塁コーチは、「元々、それぐらいのポテンシャルは持っている。入ってきた時から、リストが強く、パンチ力があった」と、まったく驚きを示さない。にもかかわらず、昨季打率.186、今季も同.128と、1軍で結果を残せなかった原因を、同コーチは次のように分析する。

「メンバーを見た時に、ライオンズが外崎に求めるピースは、小さくコンパクトな打撃。反対方向、バント、小技、粘り、四球、出塁率、足など、要するに『良い2番打者』。そこに、あまりにも固執しすぎてしまった。本来思い切って引っ張れるところも、無理やりおっつけようとしたり、当てに行ったりした結果、三振も多くなった上に、打率も残らなかった。自分のポテンシャルと、求められるもののギャップを、今年は相当考えさせられたと思う」

 そのため、2軍に降格してきた際、高木浩之2軍打撃コーチと共に、本人に「甘い球が来たら、思い切りかち込め!」と話し、「“呪縛”というか、迷いを解いてあげた」という。

■「実は・・・バットも変えたんです」

 外崎自身も、「(役割的に)『ボールを見ていかなきゃダメなんじゃないか』とか考えたら、対投手というよりも、対ベンチになってしまった。そこで迷いが出てきて、普通に打っていれば捉えているものも、捉えられなくなってしまった」と、1軍での己の姿を振り返った。

 その一方で、好結果の要因には実質的な取り組みも欠かせない。本人が最も効果を感じているのが、連日、黒田(哲史)2軍内野守備・走塁コーチと行っている、補強の守備練習だ。

「1軍にいると、どうしても練習量が落ち、動きのキレが鈍くなってしまったので、また一から基礎作りをしてもらっているのですが、それが効いているのだと思います」

 守備練習で下半身を強化することが打撃にも好影響をもたらすというのは、よく知られた話である。実際、奈良原浩1軍内野守備走塁コーチも、自らの経験を踏まえた上で、浅村栄斗らにも同じことを説き、打撃向上に導いてきた。外崎にとっても例外ではなかったということだろう。

 さらにもう1つ、「実は・・・」と、外崎が自らカミングアウトした打撃大爆発の秘訣がある。それは、「バットも変えたんです」。

 出会いは偶然だった。春先は、チームメイトの森友哉のモデルを使用していたが、結果が出なくなったため、大学時代の型に変えた。それでも好成績にはつながらず、悩んでいたところで目に入ったのが、去年の自主トレ時に使用していたバットケースの中に入っていた、嶋基宏(楽天)モデルの1本だった。

■呉念庭が1軍の遊撃で活躍、燃え盛るライバル心「負けたくない」

「誰のだろう?」と思い、自主トレ仲間に訊ねたが、全員「自分のではない」という。「じゃあ、使わせてもらおう」思い、初めてのバットで打席に立つと、見事に結果が出た。それが、他でもない、8月28日の巨人戦。つまり、本塁打ラッシュの始まりとなった試合だったのである。たまたま、先輩・鬼﨑裕司も過去に同モデルを作り、余っていたため、1本譲り受けた。その貴重な1本を早速契約メーカーに渡し、発注をかけたことは言うまでもないだろう。

「(グリップが)タイカップで、前に使っていたものより芯が太い」。思いもよらぬ形だったが、今の自分にベストな相棒と出会えたことで、さらに自信を持って打席に集中できるようになったのである。

「正直、今、この調子の良い時に1軍でどれだけ通用するかを試したい気持ちはあります」というのが本心だ。だが、1軍も残り5試合となっているだけに、チャンスが巡ってくる可能性は決して高くはないことも重々承知である。それでも、モチベーションが切れることは決してない。1つ下の呉念庭が遊撃でレギュラーを掴みつつあり、ライバル心は燃え盛る一方だ。「負けたくない」。これから始まるフェニックスリーグ、秋季キャンプでの猛アピールへ向け、着々と爪を研ぐ。

 シーズン修了時、イースタン・リーグで打率3割を残せているか。まずは、自らに課したノルマ達成がテーマだ。

上岡真里江●文 text by Marie Kamioka