「東レ パン・パシフィック・オープン」(WTAプレミア/本戦9月19~25日/東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート/ハードコート)の本戦3日目はシングルス2回戦4試合とダブルス1回戦4試合が行われ、注目の大坂なおみ(日本)は…
「東レ パン・パシフィック・オープン」(WTAプレミア/本戦9月19~25日/東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート/ハードコート)の本戦3日目はシングルス2回戦4試合とダブルス1回戦4試合が行われ、注目の大坂なおみ(日本)は、世界ランキング12位のドミニカ・チブルコバ(スロバキア)を6-2 6-1で破る金星でベスト8入りを果たした。
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ビッグサーブを武器とする大坂のサービスゲームで試合開始。緊張のためだろう。4連続失点でサービスブレークを許すと、チブルコバがサービスをキープ。0-2と立ち上がりの鈍さを見せたが、ここからが“なおみ劇場”だった。
続くサービスゲームでサービスをワイド、センターへと決めて集中力が高まると、リターンゲームでも強打にロブと緩急を使って主導権を握る。大坂の集中力が高まれば、そのプレーで観客をぐいぐいと引き込んでいく。
パワーだけでなく、読みとフットワーク、そしてこの日は粘り強く強力なストロークを武器とするブルコバをときに上回る我慢強ささえ見せ、世界ランキングで50位以上格上の相手を圧倒した。
「いつも私はコートに立つとき、相手のランキングはあまり考えない。実際、今大会では私はワイルドカード(主催者推薦枠)での出場だけど、コートに立てば相手とは同じ立場だから」
土居美咲(ミキハウス)との1回戦を戦ったあとにそう語っていた大坂だが、世界ランキング12位を相手にしても、「コートに立てば相手と対等」という哲学は変わらなかった。
いや、試合直後にコート上でのインタビューで「本当に緊張してた。なんか、すごい選手と戦うってことで…」と、たどたどしい日本語で答えたのは、本音だったろう。
それでも試合に入り込んでいくにつれ、「彼女に対してプランを立てて、プラン通りにプレーできた」とやるべきことに集中し、第1セットを6-1、第2セットも最初のサービスゲームでブレークを許したもののすぐにブレークバックして5-1まで圧倒した。
しかしここで全米オープンの3回戦、マディソン・キーズ(アメリカ)に対して勝利まであと1ゲームとしながら逆転負けを喫した苦い記憶を思い起こしたと言い、自身のサービスで0-40と3つのブレークポイントを握られる。
「あの記憶を思い出したのがいけなかったんだと思う。これじゃダメだと思い直して、実際はこのゲームを失うことを覚悟はしたんだけど(笑)、ここから何をできるのかすべて試してみようと思ったの」
ふたたび集中力を高めて、ここから3連続ポイントでデュース。そして最大の武器であるサービスをたたきつけた。センターへ時速192kmのサービスエースでマッチポイントを握ると、最後はたたみかけるように時速188kmのサービスエース。
力強いサービスのインパクトが大きいが、実際に試合をしたチブルコバが語ったのは、大坂のクレバーな戦いぶりだ。
「今日は難しい試合展開だった。彼女は私のサーブを読んでリターンからプレッシャーをかけてきて、それに対して私はアジャストできなかった。特にファーストサービスを読まれていたと感じていた。彼女はどちらのサイドでもプレッシャーをかけてきた」
確かにこの日の大坂はリターンゲームから流れをつかみ、最初は不安定だったサービスゲームのリズムを取り戻していったといっていいだろう。
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「彼女はトップ10のポテンシャルを持っているか」という記者からの質問について、チブルコバは「それはなんともいえない」と明言を避けたが、「体も大きいし、重いボールを打つ。優れたポテンシャルを持っているのは間違いない。今の段階でも十分に危険な選手」と評価した。
その大坂は、準々決勝では第3シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)と予選勝ち上がりのアリャクサンドラ・サスノビッチ(ベラルーシ)の勝者と対戦する。プリスコバは全米オープン準優勝者だ。
果たして次に見せてくれるのはチブルコバ戦で披露したクレバーな大坂か、それとも前週の敗戦時に垣間見せた18歳ならではの不安定さか――。いずれにせよ、注目しないではいられない。
(テニスマガジン/ライター◎田辺由紀子)