大学軟式日本代表野球選考会の中でも、特に目を引いた3名がいた。経歴や軟式に至った経緯こそ違えど、「高校で野球を諦めずに良かった」と口を揃える点は共通している。彼らは、どんな想いで野球に取り組み、どういった経歴で軟式野球という選択肢に至ったの…
大学軟式日本代表野球選考会の中でも、特に目を引いた3名がいた。経歴や軟式に至った経緯こそ違えど、「高校で野球を諦めずに良かった」と口を揃える点は共通している。彼らは、どんな想いで野球に取り組み、どういった経歴で軟式野球という選択肢に至ったのか。代表候補3人にインタビューした。
■和田健吾選手和田健吾選手 明治大学付属中野八王子高校⇒明治大学(現・3年生)
Q: 大学で軟式野球部に入部した経緯を教えて下さい。
「高校時代は投手にこだわりを持ち練習していましたが、怪我もあり、投手として活躍することができませんでした。大学に進学した時、『どうしても投手として野球をしたい』という想いを捨てることができませんでした。準硬式野球という道もありましたが、客観的に自分の実力を判断した時、より可能性があると考え軟式野球部を選択しました。1年生の秋の段階からリーグ戦に使ってもらえるようになり、今は『自分が投げて勝てる喜び』を噛みしめる日々です。正直、人生の中で今が一番野球を楽しめています」
Q: 和田選手は昨年度も日本代表として、アメリカ遠征に参加していますね。
「遠征ではついていくだけで精一杯な面もありましたが、野球の技術的にも、人間的にも大きく成長できました。野球の面では日本人とはパワーが違うので、投球に細心の注意を払う意識が強くなりました。野球以外の時間は、現地の学校や施設を訪問し、たくさんの方と交流する機会を頂きました。軟式野球をより浸透させるためには何が必要なのか。ということを考えるキッカケともなりました」
Q: 卒業後も軟式野球に関わっていきたいと考えていますか?
「これまではそのイメージが持てませんでしたが、今は『野球を辞めるのがもったいない』と思っています。なので根気強く、企業チームの道も模索していこうと思います。例え草野球でも、投手として野球に関われたら幸せです。高校時代の僕の実力は高くはありませんでしたが、今は大学で野球を続けて本当に良かったと思っています」
江川天祐選手 敦賀気比高校⇒仏教大学(現・3年生)
Q: 敦賀気比でどのような高校時代を過ごしましたか?
「僕達の時代は部員の数が70~80人ほど在籍しており、三年間野球漬けの日々でしたが、ベンチ入りを果たすことができませんでした。ただ、『肩の強さでは誰にも負けない』と目標を持ち、練習に取り組んでいました。大学ではこれまでできなかったいろいろな経験をしたいと思い、野球から離れることも考えましたが、やはり野球のない生活はどこか物足りなかった。そこで、時間的な融通も考えて軟式野球という選択に至りました」
Q: 実際に高校硬式野球のトップレベルを体感してきた江川さんにとって軟式野球はどう映りましたか?
「正直にいうと、入部前は少し軟式を舐めていたところがありました。ただ実際にプレーしてみると、想像以上にレベルが高い。特に打つ技術、送球技術に関しては硬式とは全く別物といえるでしょう。僕個人の話しでいうと、今はサードと投手のポジションを任されることがありますが、高校時代に肩を鍛えてきた恩恵もあり、現在はMAX140㌔と球速が伸びています」
Q: 高校で野球を辞めず、軟式の道に進んで良かったと思いますか。
「それは間違いなく良かったです。軟式野球に触れるようになり、高校時代より考えて野球に取り組むようになった。僕は教職の免許も目指しているので、指導者になれたら、この経験は活きてくると考えています。もし、高校で不完全燃焼だったという人がいれば、軟式野球という選択肢は野球人としての可能性を広げてくれると思います。
山崎勝也選手 履正社高校⇒京都産業大学(現・4年生)
Q: 山崎さんは履正社高校で甲子園にも出場し、ベンチ入りも果たしています。大学でも硬式野球部に入部するという考えはなかったのでしょうか?
「硬式野球に関しては、高校でやり切りました。ただ、野球から離れることはしたくなかった。そこで、新しい挑戦という意味も込めて軟式野球を選びました。入部前は、『軟式は硬式よりレベルが落ちる』というイメージを持っていましたが、すぐに軟式特有の面白さに気づき魅了されまいた」
Q: 昨年は大学硬式野球代表のキャプテンとしてチームを引っ張りました。そんな山崎さんの目から見て軟式と硬式の違いをどう捉えていますか。
「硬式のトップレベルの選手が軟式を始めても、慣れるまでにかなりの時間を要すると思います。僕の場合は、4年かけて『ようやく慣れてきたな』という感覚です。というのも、チームとしての戦略・戦術から、必要な技術まで大きく異なります。特に打撃技術に関しては、間違いなく軟式のほうが高度な技術が必要となる。インパクトのポイントをしっかり捉えないと、ポップフライの山を築くことになります。同じ野球というよりは、別のモノと捉えています。
Q: 軟式野球が今後浸透していくために必要なことは何でしょうか?
「指導者の絶対数が足りてないのは、大きな課題だと思います。大学の軟式野球部では、しっかりと教えられる指導者の数が少ない。大学によっては、ゼロということも珍しくない。先述したように、軟式の特徴としては高い技術が必要となります。指導者の絶対数が増え、競技のレベルが上がれば観戦する側からみても魅力的なスポーツに進化する可能性を秘めています。そういった地道な作業がまだまだ必要な時期です。代表監督からは、『君たちの動きや行動で軟式野球が変わる』と声を掛けてもらっているので、代表に選出された場合は責任を持って軟式の魅力を伝えていきたいと思います。
全日本大学軟式野球連盟HP
http://junbf.jp/