2020年シーズン10大注目ポイント@後編(7)新人ドライバー&2年目のルーキー筆頭株は? 2020年は残念ながら、新人ドライバーがひとりしかいない。FIA F2王者のニック・デ・フリース(オランダ・25歳)はフォーミュラEに活躍の場を…

2020年シーズン10大注目ポイント@後編

(7)新人ドライバー&2年目のルーキー筆頭株は?

 2020年は残念ながら、新人ドライバーがひとりしかいない。FIA F2王者のニック・デ・フリース(オランダ・25歳)はフォーミュラEに活躍の場を求め、F2参戦4年目の経験を生かして混戦のなかランキング2位となったニコラス・ラティフィ(カナダ・24歳)がウイリアムズからF1デビューを決めた。

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昨年マクラーレンですばらしい走りを見せたランド・ノリス

 ラティフィはすでにレーシングポイントやウイリアムズで公式テストやFP1出走の経験を積んでおり、F1マシンには慣れ親しんでいる。

 しかし、FIA F2での戦いぶりを見ると、厳しさは否めない。2018年は王者ジョージ・ラッセル(イギリス・21歳)とは大きな開きがあり(ラティフィはランキング9位)、チームメイトだったランキング3位のアレクサンダー・アルボン(タイ・23歳)にもダブルポイント以上の差をつけられた。

 そのラッセルでさえかなり苦労している、ウイリアムズからのデビューである。すでに1年の実戦経験とメルセデスAMGでのテスト経験を持つラッセルと渡り合っていくのは、かなり大変だろう。

 本人も、それは熟知しているという。2020年は「学習の年」と位置づけて具体的な数値目標は設定せず、結果を急がないつもりだと話している。

 昨年はFIA F2のランキング上位3名がF1デビューを果たした。そのなかで、前出のふたり以上に好走を見せて評価を上げたのが、2018年にFIA F2でランキング2位となったマクラーレンのランド・ノリス(イギリス・20歳)だ。

 2年目の今年は、昨年のように堅実に走って確実に結果を残すレースよりも、ルノーやアルファタウリ、ハース、レーシングポイントといったライバルと僅差で戦うレースが増えるだろう。そういったプレッシャーがかかる場面で、ノリスがどのような走りを見せるか。

 それは、レッドブル・ホンダで2年目を迎えるアルボンにも言えること。今季は開幕前にしっかりと準備を整えてから挑むだけに、マックス・フェルスタッペンとの差が今までどおりではチームからの信頼は得られないだろう。

 彼ら若手ドライバーは今年、まさに真価を問われることになる。その成否が彼らの今後のキャリアを大きく左右することになるだけに、彼らの走りに要注目だ。

(8)初開催&復活グランプリの楽しみ方は?

 2020年は、ベトナムGP(第3戦)がカレンダーに加わる。場所はハノイの中心部から10kmほどのところの市街地。公道を2/3、パーマネント部分を1/3で構成した「半公道サーキット」となる。

 街中の立地と鈴鹿やシルバーストンのようなダイナミックな高速コーナーの連続もあり、サイドバイサイドのバトルも期待できるという。これまでの市街地レースとは、かなり異なるグランプリになりそうだ。

 サーキット設備の準備の遅れが懸念されていたが、昨年のうちに公道部分のF1開催に向けた舗装が一気に進み、年明けにはパーマネント部分に位置するピットビルディングも完成。4月第1週目の開催に向けて、順調に準備は進んでいるようだ。

 ベトナムはハイネケンやピレリなどF1に関係するメーカーが熱い視線を送っているように、活気のあるマーケットだ。経済成長著しいベトナムの勢いが感じられるグランプリになるのではないだろうか。

 韓国GPやインドGPのように、数年で消滅してしまうのではないかと危惧する声もある。だが、中国GPと同じように、地元の企業主導というよりもF1側の前向きな姿勢が強いだけに、すぐに姿を消すことはないだろう。

 日本からも近く、チケットも3日間で1〜4万円と、ほかのグランプリに比べれば安価である。日本のファンにとっても、シーズン序盤の観戦スポットとして人気が出そうだ。

 また、5月にはオランダGP(第5戦)が1985年以来、35年ぶりに復活する。もちろん、マックス・フェルスタッペンの活躍を受けてのものだ。

 すでにヨーロッパ内にとどまらず、どこのグランプリ会場でも観客席をオレンジ色に染めるフェルスタッペン応援団が目立っている。オランダに最も近いベルギーGPが最大の”オレンジ色”勢力となっていたが、今年は満を持してオランダGPが超満員でオレンジ色に染まるはずだ。

 あまりにコンパクトゆえ、オランダGPの行なわれてきたザントフォールト・サーキットでは「F1開催は難しいのではないか」と言われていた。だが、大改修を受けて大きく生まれ変わっている。

 鈴鹿サーキットのコースデザインをアドバイスしたジョン・フーゲンホルツが支配人を務めていたサーキットだけに、コーナーの形状や地形アップダウンの生かし方など、似た部分もある。今回の改修では、最終コーナーにはインディアナポリス以上の急傾斜が付けられるなど、F1マシンのダイナミックな走りが見られそうだ。

(9)F1世界選手権70周年でスペシャルイベント目白押し?

 1950年に始まったF1世界選手権が、今年で70周年を迎える。

 F1はすでに70周年記念ロゴを公開し、各所にこれを使ってアピールを始めている。シーズンを通して70年を祝うイベントを展開していくとのことで、どんな趣向が凝らされるのか楽しみだ。

 60周年を迎えた2010年には、開幕戦に15台を超える過去の名車が集められてデモ走行が行なわれた。だが、70周年の今年はそういったイベントにはならないかもしれない。

 現在F1を所有するリバティメディアは、過去の栄光を大切にしながらもそれを称賛するだけではなく、未来の可能性を感じさせるものにしたいとしている。

 彼らがF1にどんな未来を描こうとしているのか、それが感じられる70年目のF1世界選手権になりそうだ。

(10)日本人F1ドライバーはいつ誕生するのか?

 2019年は山本尚貴(31歳)がスーパーフォーミュラとスーパーGTのタイトルを手にスーパーライセンスを取得し、日本GPのFP1に出走した。だが、それ以上の発展はなく、レギュラーシートの候補にはならなかった。

 FIA F2に参戦した松下信治(26歳)も、常に上位を争う速さを見せたもののトラブルや不運も多く、スーパーライセンスを取得することはできなかった。

 2020年はFIA F2に角田裕毅(19歳)と松下が参戦する見込みで、彼らがスーパーライセンスとF1昇格を目指す。

 角田はレッドブル・ジュニアドライバーとして、ヘルムート・マルコからの評価も高い。昨年はFIA F3初年度で、チーム力が乏しいなかでも健闘を見せて勝利も収めた。

 FIA F2は3年、4年とキャリアを重ねて頭角を現わすドライバーも多く、ステップアップして初年度で結果を残すのは難しい。昨年末に参加したテストでも適応に苦労したようだが、F1よりも1年先駆けて18インチタイヤが導入される2020年開幕前の2回の合同テストで、どこまで適応できるかが重要だ。

 松下はGP2時代を含めてこのカテゴリーで4年を過ごしてきたものの、チーム体制がよくないなかで2シーズンを戦わなければならなかった。その間にチームメイトだったセルゲイ・シロトキン(ロシア・24歳)とアレクサンダー・アルボンは、その後に実力を示してF1にステップアップを果たしている。

 それだけにF2の各チームは松下の力量を正確に把握しており、今年もその腕を買われての起用となったようだ。

 ふたりともにランキング4位以上の結果を残さなければ、F1に必要とされるスーパーライセンスは取得できない。なおかつF1にステップアップするためには、ホンダとレッドブルの関係値を考慮しても、レッドブルもしくはアルファタウリにシートが空かなければ難しいだろう。

 しかしFIA F2で力量を示せば、テストやFP1出走、リザーブドライバーといったステップが見えてくる。今、ふたりの日本人ドライバーはその目前まで来ているというわけだ。

 彼らがいかに速くF1までにステップを駆け上がるか、楽しみにしたい。