鈴木創士(スポ1=静岡・浜松日体)は、入学以降抜群の安定感でチームに貢献してきた。11月には1万メートルで28分台に突入。満を持して臨んだ箱根では、7区に登場し、6区終了時点でシード圏外の12位にはじき出されていた早大を、9位まで引き上げ…

 鈴木創士(スポ1=静岡・浜松日体)は、入学以降抜群の安定感でチームに貢献してきた。11月には1万メートルで28分台に突入。満を持して臨んだ箱根では、7区に登場し、6区終了時点でシード圏外の12位にはじき出されていた早大を、9位まで引き上げる力走を見せた。区間2位、1年生歴代最高記録という結果を残し、チームを窮地から救うことができた要因は何か。また、鈴木が今後挑んでいく目標とは。

※この取材は1月22日に行われたものです。

「自分で考えて取り組んできたことが身になった」


質問に答える鈴木

――解散期間はどのように過ごしましたか

 帰省して、ゆっくりしました。ほとんど寝ることと友達と遊ぶことを繰り返していました。

――周囲の方から、箱根での走りに対して反響はありましたか

 親戚などが家に来て、おめでとうと声を掛けてくれたのですが、対応するのも疲れるくらい眠かったです。

――箱根後は疲労が長く残りましたか

 そうですね。今少し故障してしまっているのですが、疲労が抜けきっていなかったせいかもしれないです。解散期間明けから痛みが出たので、疲労のせいか久しぶりに走って体がびっくりしてしまったのかはまだわからないのですが。

――箱根について伺います。7区への出走が決まったのはいつ頃でしたか

 4日くらい前だったと思います。それまでは3区か7区のどちらかという状況でした。直接はっきりとは言われなかったです。

――7区に決まった時の心境は

 復路のエース区間なので、1月3日のレースにいい流れを作らないといけないと思いました。

――7区に抜てきされた意図をどのようにくみ取りましたか

 平坦な所の方が得意と伝えていたので、なるべく平坦な区間を選んでくれたのだと思います。また、レース展開を変えてくれるのではないかという期待も込められていたのではないかと思います。

――集中練習から直前の調整まで、調子はいかがでしたか

 とても調子が良くて、ジョグ一つ取ってもすごく質が良かったです。

――集中練習では、積極的に前に出たのですか

 そうですね。先頭を引っ張ることもありました。智樹さん(太田・スポ4=静岡・浜松日体)、千明さん(龍之佑・スポ2=群馬・東農大二)、中谷さん(雄飛・スポ2=長野・佐久長聖)など強い先輩たちに食らい付いて、あまり勝つことはできなかったですが、同じくらいで競ることが前よりできるようになって、力がついていることを感じました。

――区間順位やタイムなど、具体的な目標は決めていましたか

 全く決めていなかったです。1年生の最高記録を抜ければいいなと思っていた程度で、レースプランも具体的には何も考えていませんでした。相楽さんと話した段階では全く展開が読めていなくて、もう少し上位で来て単独走になることを予想していたのですが、実際にはまずシード圏内に入らないといけない状況だったので、最初から突っ込んで入ってどこまで粘れるかチャレンジしようという走りになりました。

――レースの展開が読めないからプランは立てなかったということですか

 そうですね。挑戦しようということだけは決めていたので、どのような展開だったとしても最初ハイペースで入って、後半どこまで粘れるか試そうと思っていました。

――事前対談では、速いペースでの余裕度を上げたいという話をしていましたが、集中練習で成果は得られましたか

 結構克服することができました。箱根では1キロ2分56~57秒くらいのペースがアベレージで、僕のやりたいことに対して合格点くらいかなと思います。

――序盤からハイペースで入りましたが余裕はありましたか

 余裕はなかったですが、粘り強さが自分の持ち味なのでやるしかないという気持ちでした。10キロから15キロが落ち込んでしまったので、そこは課題だと感じました。

――前日の往路の結果をどのように受け止めていましたか

 往路がどのような結果だったとしても、狙う目標は総合3位以内だったので、絶対に引かないという気持ちでした。

――当日走り出す前、ご自身の状態をどのように感じていましたか

 よく分からなかったです。調子が良いのか悪いのかよく分からない状況でした。前日の宿舎で出たご飯が唐揚げとかエビフライで、今まで結構食事には気を使っていたので本当に大丈夫かなという気持ちでいたのですが、まあまあ走れました(笑)。

――全日本大学駅伝対校選手権(全日本)では緊張しなかったということでしたが、箱根はいかがでしたか

 全くしなかったですね。実感がなかったというのが一番近い表現だと思うのですが、タスキを渡された位置でしっかり自分の走りをするだけだと思っていました。青学大の選手が中継所に入ってきた時は、「あと10分くらいしたら俺も走っているのかあ」くらいの気持ちでした。

――レース前やレース中に監督から指示はありましたか

 レース前は、最初に突っ込んで後半は粘れということだけでしたね。レース中は、「ヒーローになれるぞ」と声を掛けてもらいました。途中の区間順位も教えていただいていて、区間2位まであと5秒くらいの区間5位前後で走っていたので、「ここで頑張れば区間2位だぞ」ということをずっと言っていただきました。意外と相楽さんの言葉には反応できましたし、それだけの余裕があったということだと思います。

――ご自身ではどれくらいの区間順位を想定していたのですか

 区間5番に入りたいなと思っていたので、2位という結果は上出来だと思います。

――7区を走る選手で意識していた選手はいましたか

 青学大の中村選手(中村友哉・4年)ですね。全日本で同じ区間を走って抜かれたことが悔しくて、彼にだけには負けたくないと思っていました。

――シード圏外の12位でタスキを受け取りましたが、どこまで詰めようと考えていましたか

 シード圏内が見えるところで直希さん(太田・スポ2=静岡・浜松日体)に渡せばなんとかしてくれると思っていました。10位まで2分近く離れていたので、さすがに追い付くのは無理かなと考えていて、8区で直線に出た時に前が見える位置で渡したいと思いました。

――最初に拓大の前に出てから、しばらく前の選手が見えない状況が続いたと思いますが、振り返っていかがですか

 すごく苦しかったです。単独走だった10~15キロは15分5秒くらいかかってしまって、すごくタイムが落ち込みましたね。10キロの給水で大木さん(皓太・スポ4=千葉・成田)から「拓大の後ろに付いてもいいぞ」と言われた瞬間に拓大の選手が離れてしまって、一人で行くしかない状況になったのですが、やはりプレッシャーがないと走れないですね(笑)

――中盤以降、中央学院大や創価大が見えてきてからの走りについて振り返っていかがですか

 抜かす時は気持ち良かったですし、テレビカメラが付いてきて、やっと来たかと思いました。中継所に近付くにつれて、沿道の人も増えてきて、走っていて気持ちいいな、楽しいなというふうに感じていました。

――タスキを渡す時は何か声を掛けましたか

 テレビで見たら何か言って背中を押していたのですが、あまり覚えていないです。

――区間2位、1年生歴代最高記録という結果についてどのように評価しますか

 予想以上の結果が出て素直にうれしいですし、自分がここまで箱根に向けてやってきた成果が結果として出てくれたのではないかと思います。

――どのような取り組みが、予想以上の結果に繋がったと考えていますか

 集中練習の中で、1キロ2分55秒のペースで余裕を持つという課題に対して、誰にも負けないくらい距離を踏まなくてはいけないとか、練習で2分50秒のペースで当たり前に走れるようにしないといけないとか、ウエイトトレーニングの必要があるとか、自分で考えて取り組んできたことが身になったのだと思います。

――チームの総合7位という結果についてどのように捉えていますか

 3位、あわよくば優勝を狙っていたので、正直悔しいです。結果的には優勝は無理だったと思いますが3位は100%狙えたと思いますし、2位の東海大に近い3位までいける力はあったのではないかと思うので、悔しいです。

ロードで強さを


7区序盤、拓大の選手を追走する鈴木

――チームとして、次の駅伝シーズンの目標は立てていますか

 はい。「三大駅伝総合3位以内」です。

――新体制での練習が始まっていると思いますが、現在のチームの雰囲気はいかがですか

 新体制に代わる1~2月は毎年少し気が抜けてダラダラする部分があったと聞いていたのですが、今年は気持ちが入っている人が多いのではないかなと思います。箱根前と同じ水準とは言わないですけれど、練習をプラスでこなすなど、気持ちが入っている選手が多いです。例えば安田(博登・スポ1=千葉・市船橋)は、僕や井川(龍人・スポ1=熊本・九州学院)が箱根を走るのを見て、自分も出たいと思って何か変えようとしているのではないかなと思います。

――今回は7区で快走を見せましたが、来年走りたい区間はありますか

 特にはないです。今年の区間を決める際、相楽さんから「お前はどこでも走れるから」と言われて、自分でもそう思うので、来年は任された区間でしっかり自分の走りをしたいです。往路に行くとは思うので、そこで結果を残したいです。

――どんなコースでも走れるという点は強みだと思いますが、ご自身の走りのどのような点がその強みに繋がっていると考えますか

 粘り強さですかね。コースの厳しさに関係なく粘り切れるというところは強みだと思います。今回も7区を走ってみて、意外と上り下りがきついなと感じ、苦しかったですが、気持ちで押し切ることができました。相楽さんからはレース後に上りが少し弱いと言われたので、来年はその課題も克服して強化すれば、よりどこでも対応できるようになると思います。

――今後出場する予定の大会を教えてください

 立川(日本学生ハーフマラソン選手権)に出ます。

――トラックシーズンの目標は決まっていますか

 関カレ(関東学生対校選手権)のハーフで入賞したいです。入学以降ここまである程度はめてきたつもりですが、関カレだけは唯一悔しい結果に終わってしまったので、借りを返さないといけないと思っています。

――今後はトラックシーズンも、ハーフなどの長い距離に挑戦していくということでしょうか

 そうですね。ロードに自分の走りが向いていると思っているので、ロードレースでの本当の強さを身に付けていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 町田華子)

◆鈴木創士(すずき・そうし)

2001(平13)年3月27日生まれ。173センチ、51キロ。静岡・浜松日体高出身。スポーツ科学部1年。自己記録:5000メートル14分06秒58、1万メートル28分48秒26、ハーフマラソン1時間5分07秒。2020年箱根駅伝7区1時間2分56秒(区間2位)。