日本では優勝争いやクライマックスシリーズ進出争いが繰り広げられる中、来季に向けた戦力を各球団が整備し始める頃だ。また、シーズン中に引退を表明し、チームに貢献してきた功労者には、引退試合が企画される。■メジャーで増えている開幕前の引退表明、名…

日本では優勝争いやクライマックスシリーズ進出争いが繰り広げられる中、来季に向けた戦力を各球団が整備し始める頃だ。また、シーズン中に引退を表明し、チームに貢献してきた功労者には、引退試合が企画される。

■メジャーで増えている開幕前の引退表明、名プレーヤーには各地で“お土産”も

 日本では優勝争いやクライマックスシリーズ進出争いが繰り広げられる中、来季に向けた戦力を各球団が整備し始める頃だ。また、シーズン中に引退を表明し、チームに貢献してきた功労者には、引退試合が企画される。

 今季も千葉ロッテのサブロー外野手がすでに引退を発表しており、それに合わせて球団は引退特設ページを創設。9月25日の試合は、当初の予定ではマリンフェスタユニホームを着用する予定だった。しかし、これを急きょ変更し、サブローが22年間ともに戦ってきたピンストライプユニホームを着用して臨むことを決めた。さらに、来場者全員にサブロー応援ボードとMarines Magazine特別号を配布予定。SNSを活用した取り組みも予定されており、ハッシュタグ「#ありがとうサブロー」をつけて投稿したサブロー関連の画像が試合前にビッグビジョンで表示される。

 日本ではシーズン終盤に自らの限界を感じ、またはチームの方向性によって引退を余儀なくされる場合がある。一方、メジャーリーグで最近多くなっているのが、シーズン開幕前に引退を表明するケースだ。今シーズンはレッドソックス所属で”ビッグ・パピー”の愛称で親しまれているデビッド・オルティスがすでに引退を表明している。各地では最後の試合になるだろうとファンも歓迎ムードで、対戦チームもそれぞれユーモア溢れる“お土産”をプレゼントしている。

 ブルージェイズがカスタムで真っ赤なコートをプレゼントしたことも最近話題となった。これは冬の寒い気候で知られるトロントならではの地域色を含めた品と言えるだろう。個人的に印象に残っているのは、ヤンキースのマリアノ・リベラが引退を表明したシーズンにミネソタでの最後の遠征に訪れたときのことだ。ツインズは主力選手らの折れたバットで作った椅子をプレゼントした。カットボールを武器にこれまでいくつものバットをへし折ってきたリベラに適した、ツインズとしては自虐的でユーモア溢れる品だ。

■シーズンオフに引退となっても、翌シーズンに引退セレモニーを開催するケースも

 開幕前に引退表明をできるということは、オルティスやリベラ、そしてデレク・ジーターのようなスーパースターの“特権”と言えるかもしれない。スーパースターたちにとっては、まだ現役1年を残して引退を表明するのは大変難しい決断であるはずだ。体が動かなくなるまで現役にこだわる選手も多いが、戦力的には厳しい立場へ追い込まれる場合もある。

 これとは対照的にシーズン中には引退を表明せず、シーズンオフを迎えてしまう場合もある。チームの来季以降の戦力として構想に入らずにFAのまま引退してしまう選手もこれまで多数存在している。だがそういったケースでも、チームの功労者である選手には1日契約をして翌シーズンに引退セレモニーを開催する。ヤンキースでプレーした松井秀喜氏もその1人だ。

 メジャーリーグでは最後の1試合にも価値を持たせようと、ワイルドカード枠も近年は2つに増え、今年の順位表を見ても分かるように本当に最後まで目の離せない戦いが多い。もちろん争いに加わっていないチームもあるが、手を抜かずに最後まで全力で戦うことがリーグに対するリスペクトでもある。

 長年ライバルとして戦ってきた相手でも、最後はリスペクトを込めてみんながそのキャリアを称える風潮がある。それでも試合が始まれば真剣勝負そのもので、試合前はいつもと違った”引退試合”を匂わす空気は流れるかもしれないが、1打席、1球の引退試合という日本流のものは少ない。

■文化の違いで送り出し方にも違い

 今季、ヤンキースのアレックス・ロドリゲスは会見で引退という言葉を使わなかったものの、現役の最後の年となることを表明した。ここ数年、DHでの出場が主となっていて、引退試合となる最後の試合はサードとしての出場を嘆願したが、監督は即却下した。結果的にリードを奪い、勝利が近づいた場面でサードのポジションにつき、ベタンセスが奪三振で相手を抑えたところで途中交代した。

 引退を表明した選手に対してのリスペクトはあるが、どんなときでも勝利第一であるというメジャーリーグにおける典型的な例だろう。監督も選手の希望は尊重し、真剣勝負の中で生まれた守備の機会をしっかりと与えた形にはなったが、僅差の試合であったら最後の”配慮”は生まれていなかったかもしれない。

 それに対して、功労者への最大限のおもてなしとして一打席の”引退試合”を行い、花束を贈呈して球場全体で送り出すというのが日本流。文化の違いがあるため、送り出し方の違いがあるのは当然であり、それぞれの良さが存在する。

 どちらにせよ、引退試合をしてもらえる選手が素晴らしいキャリアを歩んできたことに変わりはない。今年もまた、素晴らしい成績を残してきた名選手たちがグラウンドを去っていく。

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

新川諒●文