男子テニスの国別対抗戦、デビスカップ・ワールドグループ・プレーオフ「日本対ウクライナ」(大阪・靭テニスセンター/9月16~18日/ハードコート)。日本の3勝0敗で迎えた3日目はシングルス2試合(3セットマッチ)が行われ、ダニエル太郎(エ…

 男子テニスの国別対抗戦、デビスカップ・ワールドグループ・プレーオフ「日本対ウクライナ」(大阪・靭テニスセンター/9月16~18日/ハードコート)。日本の3勝0敗で迎えた3日目はシングルス2試合(3セットマッチ)が行われ、ダニエル太郎(エイブル)がアルテム・スミルノフを、西岡良仁(ヨネックス)がダニロ・カレニチェンコをそれぞれ下し、日本が5勝0敗として3日間の戦いを終えた。

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 すでに昨日の時点で日本の勝利は決定していた。デッドラバー(消化試合)となったこの日、会場の靭テニスセンターは朝からポツリポツリと雨が降り、11時に予定されていたシングルス第1試合は13時30分からのスタートとなった。

「雨で試合がないと思っていたので慌てました」とダニエルが笑う。スミルノフとの第1セットは3-6で落としたが、第2セットからエンジンがかかり、7-5 6-1の逆転勝利。16時から始まった第2試合は西岡が格の違いを見せつけ、657位のカレニチェンコを6-2 6-2と寄せつけず、日本の5戦全勝が決まった。

フルセットマッチを制したダニエル

西岡は余裕のストレート勝利

 ウクライナを相手に1試合も落とすことのない完全勝利。「5-0で終われてホッとしています。当初は5-0(で勝てると)は考えていなかったし、選手の力が引き出されて、より高いところでプレーできるようになっていることに驚きました」と日本の植田実監督。エースの錦織圭(日清食品)も「一人ひとりが勝利し、チームとしてまたレベルアップできたと思う」と語った。

 指揮官が口にしたように、ウクライナに5-0の勝利は確かに予想外だった。大きかったのは開幕試合のダニエル太郎の勝利だ。ウクライナは錦織が欠場とわかると、世界ランク321位のアルテム・スミルノフに代え、105位のセルゲイ・スタコウスキーで勝負をかけてきた。ランク的には88位とダニエルが上だが、実績や経験ではスタコウスキーが上回る。

 ダニエルはスタコウスキーを相手に、しつこく食らいついていった。第1、第2セットともにタイブレークを制しての2セット連取。蒸し暑さの中、30歳のスタコウスキーにダメージを与えるには“最高の”奪い方だった。第3セットのスタコウスキーにはもう余力は残されていなかった。ダニエルのストレート勝利が日本にリズムと勢いをつけ、続く西岡にバトンが渡った。

 ウクライナの最大の誤算は世界ランク50位のエース、イリヤ・マーチェンコの不調だった。錦織の全米オープン4強には及ばないものの、マーチェンコも16強。少なくとも日本のナンバー2と対戦する初日の勝利は、ウクライナにとっては必要不可欠だった。しかし、西岡のアグレッシブなプレーもあり、マーチェンコはミスショットを連発。疲労もあり、持ち味を発揮できないまま、4セットの末に敗れた。

 ウクライナはマーチェンコとスタコウスキーの2人で単複3勝をもぎとるつもりだった。しかし、初日の2連敗で勝利のシナリオは崩壊。マーチェンコの疲労は大きく、ダブルスには投入できなくなった。日本はフレッシュな錦織/杉田祐一(三菱電機)できっちりと3勝目をあげた。「初日に若い2人が勝ちきってつないでくれたことが大きかった」という錦織の言葉がすべてを物語っている。

ウクライナのフィリマ監督(左)

 ホームだったらまた違った結果になっていたか。ウクライナのミハイリ・フィリマ監督に聞くと「それはわからないけど」と言って続けた。「ホームだったら、もっと戦いやすかったことは間違いない。サーフェス、ボール、屋外屋内など、すべて自分たちで選ぶことができる。それに最近はホームで連勝しているしね」。

 敗れればワールドグループから転落の危機だった。それでも植田監督は初日に錦織を温存し、ダニエル、西岡の若い2人を起用した。その期待に応えた2人も見事だったが、その勇気ある決断が5勝0敗という最高の結果につながった。「チームの戦い方の新しい道が見えた」と植田監督。今後の日本デ杯チームにとっても大きな意味を持つ完全勝利だった。

完全勝利を果たした日本チームとスタッフ

(テニスマガジン/編集部◎牧野 正)