ポルトガル南西のリゾート地、ポルティマンを本拠地とするポルティモネンセ(ポルトガルリーグ1部)に、昨年7月に加入した安西幸輝。シーズン当初からフル出場を続け、リーグ17位(第18節終了時)と苦しむチームで奮闘している。 安西は東京ヴェ…
ポルトガル南西のリゾート地、ポルティマンを本拠地とするポルティモネンセ(ポルトガルリーグ1部)に、昨年7月に加入した安西幸輝。シーズン当初からフル出場を続け、リーグ17位(第18節終了時)と苦しむチームで奮闘している。
安西は東京ヴェルディユースで育ち、2014年にトップチームデビューを果たすと、右サイドバックのレギュラーを奪取。2018年に移籍した鹿島アントラーズでも活躍を続け、翌年3月には日本代表入りも果たした。
確実にステップアップを果たしてきた安西に、ポルトガルでのプレーを選んだ理由、日本代表への思いなどを聞いた。
昨年7月、鹿島からポルティモネンセに移籍した安西©Portimonense SAD
――ポルティモネンセへの移籍を決意した理由は?
「東京ヴェルディのユースの先輩でもある中島翔哉選手が、このチームで活躍して(同リーグの強豪・)FCポルトに移籍するのを見て、僕もそうなりたいと思って移籍を決意しました」
――プロ1年目のオフにはプレミアリーグのウエストハムに短期留学をしていますが、海外移籍は昔から意識していたのですか?
「プロ入りが決まった頃は、『まずは試合に出られればいいや』と思っていたんですけど、人って欲が出るじゃないですか(笑)。ルーキーイヤーの開幕戦でスタメン出場し、シーズンも41試合(J2)に出ることができたので、『もしかしたらJ1や海外でもプレーできるかも』と思い、オフ期間を利用してウエストハムに短期留学をしてみたんです」
――ウエストハムで得るものはありましたか?
「アンディ・キャロル(ニューカッスル)、アレクサンドル・ソング(シオン)、マーク・ノーブル(ウエストハム)たちと一緒にプレーをして、フィジカル面で大人と子どものような差があると感じました。なので、日本に戻ってから筋トレをやるようになりました」
――ポルティモネンセでも出場機会が多くなっていますが、現地の生活には慣れましたか?
「食事は美味しいですし、サッカーに集中できる環境なので、すぐに慣れました。ただ、国内での試合の移動はすべてバスなので、めちゃくちゃきついです(苦笑)。とくにFCポルトのスタジアムに行く時は、8時間近くかかるので本当にたいへんです。試合後も宿泊はせず、夜中にバスで帰ります。日本では考えられないですよね」
――ポルティモネンセと鹿島のサッカーの違いは?
「こっちの選手たちは、ワンプレーに懸ける必死さ、ボールホルダーに対するプレッシャーの速さが段違いです。技術に関しては、鹿島の選手たちのほうがあると思います」
――現在、何を課題にプレーしていますか?
「日本よりも積極的に仕かける選手が多いですから、守備のレベルを上げなければいけないと思っています。クロスボールの数も多いので、身長があまり高くない(172cm)僕も対応も考えないといけない。長友佑都選手(ガラタサライ)も背は高くない(170cm)ですけど、あれだけ守れるのはすごいですし、学びたい部分がたくさんあります。今後、日本代表でスタメンを獲ることを考えても、守備面をさらに磨いていきたいです」
――安西選手は右利きですが、左右で精度の高いキックを蹴られるところが武器ですね。
「もともと左で蹴ることは苦手ではありませんでした。ヴェルディのユースでパス&コントロールの練習を繰り返してうまくなっていったので、その時のトレーニングに感謝ですね」
――安西選手は左右のサイドバック、MFでもプレーができますが、より得意なサイドはありますか?
「あまり変わりませんけど、左サイドでの守備が少し難しいと感じています。右サイドでの守備は、縦への進路を防ぎつつ、利き足の右足を最初に出してボールを奪いにいきます。でも、左サイドでも右足から先に出してしまうと、サイドラインにスペースができて縦に突破されやすくなってしまうので、できるだけ左足から出すように意識しています」
――サイドバックでプレーし始めたのは、いつですか?
「小、中学校時代は主にMFをやっていましたが、高校1年生の時にサイドバックを本格的にやるようになりました。僕は我が強い選手ではなく、うまく周りに合わせてプレーするタイプでしたし、当時はほかの選手よりもスタミナもあったので『サイドバックは自分に合っているのかな』と思いました。
このポジションは試合中にフリーになることが多く、前に上がるタイミングを見計らってボールを受けられますから、攻撃に面白さを感じています。サイドバックをやり始めた頃は、『守備をやらなくてもセンターバックがカバーしてくれるんだろう』と思っていましたけど(笑)、今は守備も頑張っています」
――これまで順調にキャリアを積み重ねてきたように思えるのですが、ユース時代も含めて苦しかった時期はありましたか?
「高校2年生の夏にケガをして、3カ月くらいで復帰したんですが、その初日の練習で足首を骨折してしまって……。そこからまた長くプレーできない日々が続き、『プロになるのは無理だ』という考えが頭をよぎりましたし、本当につらかったです。
でも、当時ヴェルディユースの監督を務めていた冨樫剛一さんが『絶対にプロになってもらうから、ちゃんと治して焦らずやれ』と言ってくれて、その言葉を信じて毎日リハビリをしていました。その経験があったからこそ、プロ1年目から試合に出ることができ、今があると思っています」
日本代表でもスタメン奪取を目指す
photo by Sakuma Hidemi
――現在は多くの日本人選手が欧州のリーグでプレーしています。ライバルとして意識している選手はいますか?
「ライバルとは少し違うかもしれませんが、鹿島の元チームメイトで仲がよかった鈴木優磨(シント・トロイデン)とは、『一緒にステップアップしていこう』と話をしています。俺も優磨も、心の底から『さらにレベルの高いチームでプレーできる』と思っているので、いずれ同じチームでプレーをしたり、対戦相手としてマッチアップできたら最高ですね」
――リーグでの活躍の先に日本代表への定着が見えてくると思いますが、意気込みを聞かせてください。
「昨年の3月に初めて代表に呼ばれて、海外組の選手たちのプレーを見た時に、クオリティーの高さにビックリしました。同じ日本人でもこれだけスピード感が違うのかと。その時はボリビアとコロンビアと試合をしたんですけど、彼らのプレーもすごかった。
そこで『海外で活躍できなければ日本代表のスタメンにはなれない』と実感しました。まずはポルトガルでさらに成長し、代表のスタメンを奪取して、小さい頃からの夢であるW杯に出たいです」
■安西幸輝(あんざい・こうき)
1995年5月31日生まれ。兵庫県出身。幼稚園でサッカーを始め、小学校4年生から東京ヴェルディの下部組織で育つ。2014年にトップチームに昇格すると、1年目からJ2で41試合に出場するなど活躍。2018年に鹿島アントラーズに移籍し、翌2019年7月にポルティモネンセに加入した。