2020年シーズン10大注目ポイント@前編 あと1カ月半で2020年シーズンが始まろうとしている。 果たして、どんなシーズンになるのか。そして、どのようなところに注目すればシーズンを楽しむことができるか。着目すべきポイントを挙げて、新シ…

2020年シーズン10大注目ポイント@前編

 あと1カ月半で2020年シーズンが始まろうとしている。

 果たして、どんなシーズンになるのか。そして、どのようなところに注目すればシーズンを楽しむことができるか。着目すべきポイントを挙げて、新シーズンを予想していこう。



昨年6度目のドライバーズチャンピオンに輝いたルイス・ハミルトン

(1)2020年はシーズン序盤が勝負?

 2020年は前年からレギュレーションが変わらず、基本的にはどのチームも正常進化型のマシンで戦う。そのため、勢力図の大シャッフルは考えにくい。

 そう言えるもうひとつの理由が、2021年に大きなレギュレーション変更を控えているからだ。マシンがガラリと変わるため、どのチームもできるだけ早く2021年型の開発にリソースをシフトしたいところ。

 加えて、2021年にはバジェットキャップが導入されて、年間予算が最大1億7500万ドル(約190億円)に制限される。その導入前の2020年のうちに、可能なかぎり今後に向けた設備投資や開発を進めておきたいというのが、各チームの本音なのだ。

 そのため、2020年はシーズン序盤で「タイトル争いの可能性が乏しい」と判断したチームは、その後の開発を早々にあきらめて2021年シフトを進めることになる。激しい争いが繰り広げられている中団グループも同じく、2020年の開発競争に加わるより2021年シフトを選ぶチームが出てくるだろう。

 すでにどのチームも発表&開幕仕様のマシンパッケージと、シーズン第1弾となるヨーロッパラウンド序盤の大型アップデートまでは計画が進んでいるはず。だが、その後も2020年型マシンの開発を続けて2020年の成績を追い求めるかどうかの判断は、シーズン序盤数戦の戦闘力をもって判断することになる。

 2020年はタイトル争い、そして中団グループ争いのそれぞれで、早期に脱落者が出る可能性がある。開幕ダッシュがこれまで以上に重要なシーズンとなるだろう。

(2)ドライバーズチャンピオンの栄光は誰の手に?

 昨年はシーズン途中に勢力図が激しく移り変わる展開となったが、2020年は同レギュレーション2年目とあって、トップ3チームの実力は拮抗するものと思われる。

 各チームのマシン作りも、メルセデスAMGは昨年の弱点であったストレートを強化、フェラーリは低速コーナーを強化と、それぞれがお互いに近づいていくような方向性となるだろう。

 レッドブル・ホンダはまだハッキリとした方向性は提示していないものの、昨年から何かひとつが尖ったマシンというよりも、各要素の平均点の高いマシン作りを目指しそうだ。そういう意味では、2020年は3強が同じような平均点の高いマシンパッケージへ収束していくと考えられる。

 そんななかでドライバーズチャンピオンを争うのは、やはり6度戴冠のルイス・ハミルトン、フェラーリと2023年までの長期契約を結んだシャルル・ルクレール、そしてレッドブルの「絶対的エース」マックス・フェルスタッペンということになるだろう。

 3チームの実力が拮抗すれば、ドライバーズチャンピオン争いもこの3人の激しい三つ巴の争いになる可能性は高い。

 ハミルトンが制すれば自身7度目の王座獲得となり、ミハエル・シューマッハの記録に並ぶ。そして優勝回数でも現在84回のハミルトンは、シューマッハが持つ91回の最多記録を2020年中に抜く可能性もある。すでにポールポジションの回数は大きく上回っており、名実ともに史上最強のF1ドライバーの称号を手にすることになる。

 フェルスタッペンにしても、ルクレールにしても、彼らが制すれば当然ながら初戴冠となる。長く君臨してきたハミルトンと戦い、それを下してのタイトル獲得は、まさしく世代交代の象徴とも言える瞬間となるだろう。

 フェルスタッペンとルクレールはカート時代からライバル関係にあり、かつてのハミルトンとニコ・ロズベルグのような関係だ。昨年のオーストリアGPで接触してルクレールが初優勝を逃して以来、お互いに特別視している間柄でもある。

 彼らの間でタイトル争いが繰り広げられることになれば、単なる速さのぶつかり合いにとどまらず、感情剥き出しの人間ドラマになることは必至。ある意味では、F1にとって新たな魅力となるだろう。

 もちろん、彼ら3人以外にもチャンスはある。

 セバスチャン・ベッテルは2021年以降の契約が決まっていない。それだけに、フェラーリでキャリアを続けるにしても、新天地を求めるにしても、今シーズンが正念場となる。

 バルテリ・ボッタスも2019年シーズンは、予選でチームメイトのハミルトンと同等以上の速さを見せることが増えた。課題のタイヤマネジメントが向上すれば、優勝争いに加わる機会が増えるはずだ。

 アレクサンダー・アルボンは急遽トロロッソへの起用が決まった昨年、それまで一度もF1のドライブ経験がなかったにもかかわらず、わずか4日間の走行でシーズン開幕に臨み、シーズン後半戦にはレッドブルに昇格して安定した走りを見せた。

 今年はF1のこともレッドブルのことも十分に理解したうえで、開幕前のテストで準備をしっかりと整えてからシーズン本番に臨むことができる。シーズン中にできなかった実験的なことも、テストではできる。2020年はより成長したアルボンの走りが見られるだろう。

(3)メルセデスAMGのコンストラクターズ7連覇を阻止できるか?

 前述のとおり、2021年はトップ3チームが同じようなマシンパッケージへと収束していく可能性がある。そんななかで強いのは、やはりチームの総合力に優れたメルセデスAMGだろう。

 2019年はライバルが自滅したレースもしっかりと拾い、自分たちが最速ではなかった週末にも着実に勝利を奪取。終わってみれば、21戦15勝という圧倒的な結果を収めた。

 一方のフェラーリは、そうした「勝ち切る」という点であまりに弱い。彼らに逆転の可能性があるとすれば、メルセデスAMGを圧倒するような速さを持つマシンパッケージを作りあげた時だろう。それならば、彼らも焦りや混乱なくレースを戦い、勝利を収めることができるはずだ。

 しかし、昨シーズンの夏休み明けから6戦連続ポールポジションを獲得した際に手にしていたとされるパワーユニットの優位性は、レギュレーション解釈が明確化されたことで封じられた。パワーの優位を保つためにフェラーリはパワーユニットのレイアウト変更を進めているというが、それがどこまでうまくいくか。

 レッドブル・ホンダがコンストラクターズタイトルを手にするためには、アルボンの存在が重要になる。フェルスタッペンは速さも強さも兼ね備えたドライバーだが、アルボンは速さでまだまだフェルスタッペンとは大きな差があり、3強チーム6台の一番後ろを走ることが少なくなかった。これではタイトルを獲ることはできない。

 2019年も速さでは、フェラーリを上回る場面が多かったレッドブル。だが結果として、ほぼ常に各レースでの獲得ポイント数はフェラーリを下回っていた。いくらフェルスタッペンが孤軍奮闘しても、2台が揃って上位で戦えなければコンストラクターズタイトルを獲ることはできない。

(中編)へ続く>>>