ジョコビッチに敗れたものの、オーストラリアンオープン3回戦まで進んだ西岡良仁 西岡良仁(ATPランキング71位、1月20日づけ)が、オーストラリアンオープン(全豪)3回戦で、第2シードのノバク・ジョコビッチ(2位、セルビア)と対戦し、3-6…



ジョコビッチに敗れたものの、オーストラリアンオープン3回戦まで進んだ西岡良仁

 西岡良仁(ATPランキング71位、1月20日づけ)が、オーストラリアンオープン(全豪)3回戦で、第2シードのノバク・ジョコビッチ(2位、セルビア)と対戦し、3-6、2-6、2-6で敗退。自身初となるグランドスラム4回戦進出はならなかった。

 西岡は、昨年11月の男子国別対抗戦・デビスカップファイナルズ「日本対セルビア」でジョコビッチと初対戦した時は、1-6、2-6でまったくよさを出せずに敗れていた。その悔しさを晴らすべく、今回こそはという思いがあったが、ジョコビッチの壁はやはり高かった。

 ジョコビッチは第1セット第2ゲーム、第2セット第1ゲーム、第3セット第1ゲーム、各セットの序盤に西岡のサービスゲームをブレーク。常に先行して優位に試合を進めた。

「ブレークのアドバンテージを持って各セットをスタートできれば、リラックスできる。彼(西岡)のサーブは、アドバンテージではない。つまり武器ではないので、彼のサービスゲームの時、こちらにチャンスがあることはわかっていた。リターンをできるだけ攻撃的に打ち、ラインをとらえるようにして、コート上で彼を動かした」(ジョコビッチ)

 その言葉どおりジョコビッチは、左利きの西岡に対してバックハンドストロークのクロスをあまり使わず、バックハンドダウンザラインを多用。西岡のバックサイドにボールを集めた。

 一方西岡は、ほとんどのフォアハンドストロークを心地よく打てない中、バックハンドストロークであることを試みていた。

「バックでの打ち合いでは、彼は高い打点ならどこでも打てるし、(コートの)中へ入ってドロップショットを交ぜられると、(先の展開を)読めなくなってしまう。だから(自分が)低く打って、彼の高い打点からのダウンザラインを封じようとした。ただ、それは自分のやりたいテニスではなく、(フォアの)高いループのボールを使いたい。(低い弾道は)普段打っているボールではないので精度がよくなくて、打開策が見つからなかった」(西岡)

 ジョコビッチのファーストサーブの確率は74%で、サービスエースは17本、ファーストサーブのポイント獲得率は93%にまで達した。「こんなにリターンでポイントを取れなかったのは初めて」と語った西岡は、ジョコビッチのサーブを1回もブレークできずに敗れた。それでも、今回の全豪で初めてグランドスラムの3回戦に進出し、ステップアップできたと言える。

 身長170cmと小柄な西岡の持ち味は、ツアー屈指の俊足と左利き独特のグランドストロークだ。懐の深いフォアハンドストロークはトップスピン系、バックハンドストロークはフラットドライブが武器。岩渕聡デビスカップ日本代表監督は、西岡の成長を次のように分析する。

「明らかに力強くなっている。今まで持っていたディフェンスと粘り強さにフォアでの攻撃の速さがプラスされ、甘いボールに対して迷いなく攻めることができる。対戦相手にさらにプレッシャーを与えられる選手になった」

 今回の全豪で西岡らしさが出たのは、2回戦のダニエル・エバンズ(32位、イギリス)戦だろう。強風が吹き荒れる中、プレーが難しい状況ではあったが、どちらがシード選手なのかわからないほど、西岡の冷静な試合運びが光った。

 この試合の西岡のファーストサーブの確率とファーストサーブでのポイント獲得率は、ともに75%。ウィナーの数は、西岡が23本でエバンズが32本。ミスの数は西岡が19本、エバンズが39本だった。このスタッツから見えてくる自身のテニスの特徴を、西岡は次のように語る。

「アンフォースドエラーが少ない。このレベル(グランドスラム)では、相手にウィナーを取られるので気にしない。いかに相手にミスをさせるか、大事なところで打たせないようにするかが大事だと思っている」

 また、西岡には東京オリンピック出場への強い思いもある。今回の3回戦進出によって、ATPランキングポイント90点を獲得できたことでその目標に一歩前進した。

「やはりこういうところ(グランドスラム)でしっかりポイントを重ねていくことによって、オリンピックへの道も見えてくる」(西岡)

 オリンピックのシングルスは64ドローで、ストレートインは56枠。各国の出場枠は最大4人という制限があるため、ATPランキング60位以内に入っておくことが一つの目安となるだろう。オリンピック出場者は、6月のローランギャロス(全仏)終了直後のATPランキングによって決定される。西岡は今後、オリンピック出場も視野に入れながら戦うことになる。

 今回の全豪でジョコビッチから再び厳しい洗礼を受けた西岡だが、下を向くことなくその実力差を素直に認め、次を見据えている。

「粘るとか攻めるという以前に、そもそものベースを強くしないと(ジョコビッチには)勝てない」

 こうした西岡の潔い姿勢が、今後さらに強くなるための原動力になるはずだ。まだ時間はかかるかもしれないが、西岡はいま、トッププレーヤーへの道を漸進している。