現在、オランダリーグには6人の日本人選手がいる。 そのなかで、中山雄太(ズヴォレ)はウインターブレークまで6試合と、もっとも出場機会に恵まれなかった。負傷による戦線離脱もあったが、左サイドバック→センターバック→ボランチと目まぐるしくコン…
現在、オランダリーグには6人の日本人選手がいる。
そのなかで、中山雄太(ズヴォレ)はウインターブレークまで6試合と、もっとも出場機会に恵まれなかった。負傷による戦線離脱もあったが、左サイドバック→センターバック→ボランチと目まぐるしくコンバートが続き、戸惑いがあったのかもしれないが、レギュラー定着を果たせなかった。
チームを救う同点ゴールを決めた中山雄太
ところが、オランダリーグ年明け最初の試合で、日本人選手として先発出場を果たしたのは、唯一、中山だけだった。
第18節までズヴォレはリーグワースト3位の42失点と守備にもろさがあり、ヨン・ステーへマン監督は冬合宿でチームを4バックから5バックシステムに作り直し、1月21日のユトレヒト戦に臨んだ。中山は左のセンターバックを務めた。
前半4分、ユトレヒトの左サイドアタッカー、ヒラノ・ケルクのドリブルをスライディングタックルで止め、すぐに立ち上がってから前線のレナート・ティーにロングフィードを通すと、中山の左足が冴えだした。
しかし、敗北寸前のチームを救ったのは、中山の”右足”だった。
2−3のビハインドを負った89分、相手ペナルティエリアの中へ駆け上がった中山は、デニス・ジョンソンが右から上げたクロスをダイレクトシュート。ボールはゴール右隅に突き刺さり、15位と低迷して残留争いに苦しむチームに貴重な勝ち点1をもたらした。
「あの時間帯はキャプテン(ペレ・クレメント)から『前に来い!』と言われて、ボランチの位置でプレーしていました。チームが負けている状況だったので、僕自身も点を獲りに行く姿勢を出そうと思っていた。その姿勢が、ゴールに結びついてよかったです。
今季、うちのチームは勝つか負けるかのどっちかで、ほとんど負けていた。これで引き分けは2試合目なんです。僕としては勝てなかった悔しさがありますが、チームとしては非常に大きな勝ち点1でした。ただ、5バックにしたにもかかわらず3失点したので、反省する部分が多いです」
シーズン後半戦の巻き返しに向けていいスタートを切った中山は、こう誓った。
「僕らはカップ戦もなくリーグ戦だけですので、全試合出場を心がけたいです。それが、いずれオリンピックや日本代表につながると思う。今日みたいに結果がついてくればベストですけれど、これからのハーフシーズンはしっかり試合に出場し続けることを意識したい」
中山が起死回生の同点ゴールを決めた翌日、AZ対ヴィレムⅡが行なわれた。菅原由勢はレギュラーの座こそ奪えてないが、シーズン前半戦の台風の目となったAZで右サイドバックや右ウイングで頻繁に出場機会を得て、すっかりチームに馴染んでいる。
ヴィレムⅡ戦で菅原はベンチスタートとなった。だが、「カルビン・ステングスのコンディショニング次第で先発の可能性大」(全国紙『アルヘメーン・ダッハブラット』)と、チーム内序列はかなり高い。
菅原は1−1の74分から右ウインガーとして登場し、再三サイドから小気味よいプレーを披露したがクロスの精度を欠き、消化不良に終わった。そして、チームも1−3で敗れてしまった。
「(自身の役割は)攻撃を活性化させることが目的でしたが、チームが全体的に後ろに重く、前線に(ボールが)入っても距離感が遠く、味方同士がバラバラになっているのをピッチに入って感じた。もっとコミュニケーションを取って、チーム内を変化させることもできればよかった。そこも含めて課題だと思います」
現在2位のAZにとっては、後半戦の初戦に勝って首位アヤックスとの勝ち点3差をキープし、ライバルにプレッシャーをかけ続けたいところだった。だが、逆に3位のヴィレムⅡに勝ち点5差まで詰められる結果となった。
それでも、AZはチームのポテンシャルの高さから、現在オランダ国内で最も注目を集めているクラブであることに違いはない。
2020年の目標を「東京五輪で金メダル」と掲げる菅原は、オランダリーグ、オランダカップ、ヨーロッパリーグを並行して戦うAZにおいても、「全部、勝ちに行けばいいんですよ。じゃなければダメだと思う」と、タイトル奪取に燃えている。
「あとは自分自身、もっと出場時間を確保しないといけない。そこが大前提です」
22歳の中山は、U−23日本代表でキャプテンマークを巻く選手。そして19歳の菅原も、五輪メンバー入りの可能性を争う有力候補だ。彼らはU-23アジア選手権で惨敗し、メディアやファンから大批判を浴びたU-23日本代表の仲間のことをどう感じているのだろうか。
批判を浴びているU-23日本代表に、キャプテンとして『そうじゃないんだ』とメディアやファンに言いたいこともあるのでは?
中山にそう訊くと、「U-23アジア選手権について僕が言うことはないですが……」と前置きしつつも、「ただ、あの結果で終わったということは、同年代として一緒にやってきた仲間として、僕自身も悔しい」と述べた。
「その悔しさをどうするかというのは、みんな自分のチームに戻ってやるだけ。僕自身も今、どうするかというと、ズヴォレでやるしかない。そして、3月(南アフリカ戦、コートジボワール戦)に選ばれるためにがんばって、そこで集まった選手たちでしっかりアクションを起こしていきたい」
U-23アジア選手権の日本戦を3試合見て、菅原は「アジアの選手は死ぬ気でゴール前を守ってくるので、それを崩す何かが足りない」と感じていた。
しかし、サウジアラビア戦で食野亮太郎、シリア戦で相馬勇紀、カタール戦で小川航基がゴールを決めたことで、「チームとして崩せてない時に、個人で決める能力がある選手がいるということが証明できた」と彼は言った。
菅原は基本的に右サイドバックである。U-23日本代表の守備に関してどう感じたのだろうか?
「いや、自分は選ばれてないですし、自分はピッチに立ってないので、そんなに言う立場にないと思いますけれど……」と前置きしたうえで、スペイン・スーパーカップの1シーンを例に挙げてこう語った。
「最近、レアル・マドリードとアトレティコ・マドリードの試合で、フェデ・バルベルデ選手(レアル・マドリード)がレッドカードで止めたシーンがありました。ああいうプレーが日本にも時には必要だと思う。
(バルベルデの退場覚悟のファウルには)批判・称賛、いろいろあると思いますが、チームが勝たなければ話になりませんし、ましてや僕らは国を背負っている立場ですから。ファウルのことだったり、(ボールや失点の)取られ方をオリンピックで気づくより、この段階で気づけたのはよかった」
世間からU-23日本代表に向けられた激しい批判に対し、菅原は「厳しい目で見てもらうのが一番。そんな甘い言葉なんて必要ないと思う。『このままじゃグループリーグ敗退』と言われても、選手はやるしかない。跳ね返していけたらなと思います。なんの心配もないです」と、頼もしく言い切った。