ノーサイドの笛が響き渡り、歓喜の表情を浮かべる早大ラグビー蹴球部員たち。実に11年ぶりに『荒ぶる』が国立に響いた瞬間だった。23年ぶりとなった早明頂上対決。試合は前半、SH齋藤直人主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)のPGで先制。その後、NO…

 ノーサイドの笛が響き渡り、歓喜の表情を浮かべる早大ラグビー蹴球部員たち。実に11年ぶりに『荒ぶる』が国立に響いた瞬間だった。23年ぶりとなった早明頂上対決。試合は前半、SH齋藤直人主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)のPGで先制。その後、NO・8丸尾崇真(文構3=東京・早実)などの得点で31点を奪う。後半、明大が意地を見せ、反撃をあびる。しかし、WTB桑山淳生(スポ4=鹿児島実)がトライを挙げ、勝利を引き寄せた。

 6万人近い大観衆の声援の中、早大ボールでキックオフ。早大は序盤からアタックを仕掛ける。FWとBK一体となり、フェーズを重ねていく。すると、たまらず明大がペナルティー。これを齋藤主将が落ち着いてPGを決め、3点を先制した。続く前半12分、ラインアウトから一度縦を突くと、すぐさまラックからブラインドサイドに展開し、待っていたCTB中野将伍(スポ4=福岡・東筑)にボールが渡る。相手をひきつけ、丸尾につなぐとそのままインゴールに飛び込み、リードを広げた。その後は関東大学対抗戦(対抗戦)で幾度も突破を許した明大のロック箸本龍雅らを徹底的にマーク。ゲインラインを超えさせない。ディフェンスから流れを呼び込んだ早大は26分、ラインアウトから左展開。CTB長田智希(スポ2=大阪・東海大仰星)が角度をつけ走り込み、抜け出す。さらに、1人をかわし、インゴールを駆け抜けた。その後も明大の追随を許さず。34分、39分にも追加点を挙げ、31-0と大幅にリードを奪い、試合を折り返した。


インゴールに飛び込む丸尾

 後半は前半と全く異なった様相を呈す。開始早々、サイドラインを突破され、右隅に明大はこの試合初となるトライを奪う。しかし、早大も反撃を見せる。後半6分、明大ボールのスクラムを猛プッシュ。ボールを奪い返し、連続攻撃で突破を試みる。接点で優位に立つことで数的有利の状況を生み出すと、最後はSO岸岡智樹(教4=大阪・東海大仰星)から左隅にいたWTB古賀由教(スポ3=東福岡)にパスがつながり、インゴールでグラウンディング。38-7と差を戻す。明大の勢いを摘んだかに思えたが、ここから逆襲が始まる。前半抑え込めていた強力なフィジカルを有するランナーが息を吹き返し、何度もラインブレーク。3連続で失点してしまい、たちまち得点圏内の10点差となる。すると、会場は異様なほど「明治コール」に包まれた。「次の得点が試合の命運を握る」。そう誰もが感じていただろう。そんな中、次の得点を奪ったのは早大だった。34分、早大ボールのスクラムから丸尾が素早く持ち出し、相手を振り切る。一人をひきつけてパスをつなぐと、桑山が走り切り、値千金のトライ。終盤に得点を許すが、前半のリードを守り切った早大が11年ぶりの優勝を果たした。


試合を決定づけるトライを挙げる桑山

 対抗戦の早明戦と異なった最大の点を「ディフェンスの部分」と齋藤主将が語るようにでは特に前半、ディフェンスの局面では突破を許すことなく、反則を誘発させた。その結果主導権を握り、前半だけで31得点もマーク。昨年度学生王者である明大を窮地(きゅうち)に追いやった。優勝を目指し挑んだ今季の早大。11年ぶりの『荒ぶる』を歌った歓喜の瞬間を振り返り齋藤主将は「本当に安心した」と安堵の表情を浮かべた。11年にも渡る苦難である吹雪の時代を乗り越え、紫紺を砕いた早大。その先に見えた景色は全部員の努力が実り、優勝という大輪の花を咲かせた。齋藤主将が率いるチームは終幕。すでに次の世代へと思いは託されている。優勝という経験を胸にそれぞれの舞台で、また新たな花を咲かせてくれるだろう。連覇に向けた戦いはもうすでに始まっている。


全体集合写真

(記事 小田真史 写真 石井尚紀、涌井統矢)

コメント

SH齋藤直人主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)※記者会見から抜粋

――今のお気持ちをお願いします

 監督同様6万人近くの観客の中、それからラグビーの試合は初めてという状況の中試合ができたことうれしく思います。前半あれだけ得点を奪えて、ハーフタイムの時にどこかで気のゆるみが出るのではないかと思っていました。なのでしっかりと気を引き締めて後半に臨もうと思っていました。気を緩めたつもりはありませんが、これだけ後半に失点してしまったということはどこかに気の緩みがあったということで反省したいです。ですが、最後結果として勝てたことは良かったと思います。

――関東大学対抗戦(対抗戦)の早明戦とは異なった点はどういったところでしょうか

 試合を終えてみて考えるとやはり、ディフェンスの部分ですね。40日前の早明戦と時と比べて成長したのは、1対1のタックルの部分です。前はゲインされて、テンポを出されてああいうスコアに終わってしまいました。

――ディフェンスの練習を多くするなどの準備をしていましたか

 タックルの練習を多くするというよりはタックルに入る前のセットの部分の姿勢の部分「勝ちポジ」と呼んでいます。その部分を練習の最初から最後まで意識しようと早明戦以降やってきました。その意識付けがきょうの40分、特に前半できたのかなと思います。

――終わった瞬間の率直な心境を改めて振り返っていただけますか

 終わった瞬間は本当に安心しましたね。この一年もそうですが、負けたら終わりの戦いが始まる中で早明戦あのようなかたちで敗戦してしまいました。どうにかしてチームが変わらないといけない。そういったプレッシャーをチーム全員が感じてそのプレッシャーを努力して、撥ね退けた40日間だったと思います。昨日の試合前練習から試合前の円陣まで支えてくれた多くの人や、試合出れない部員の分まで23人が結果を出してそういったメンバーたちの努力を肯定しようという話をしていました。なので、全部員のこれまでの努力を勝って肯定できたことはよかったですし、安心しました。

CTB宇野明彦主務(スポ4=神奈川・横須賀)

――ノーサイドの笛が鳴った瞬間の気持ちは

 もう、うれしいの一言に限ります。笛の音を待ちわびていました。

――前半は突き放しましたが、後半は相手からの追い上げられました

 絶対に勝ってくれると信じていたので、負けるとは思っていませんでした。冷静に、時間が過ぎていくのを見ていました。

――前日練習について

 気持ちが入った練習でした。上のチームがどう感じ取るかが大事だとは思うのですが、それでも直人が「下のチームがいい練習をやってくれたから」と言ってくれた時に、「きょうちゃんとできてよかったな」と安心しました。

――スローガンである『For One』はどのようなものですか

 『One』は日本一でした。そのために自分が大切にしていたことは、グラウンドではタックルですし、グラウンドを離れれば主務としての仕事です。それが自分の責任なので、それを果たすことがチームの勝利につながると信じてやってきました。それが自分にとって、『One』のために(For)やるべきことだったと思います。

――祝勝会ではたくさんの人から声を掛けていただいたと思います

 「おめでとう」と言っていただけてとてもうれしいです。自分がやってきたことは本当に正しかったんだなと思える瞬間なので、やってきてよかったなと思いました。

――同期に向けて

 みんながいなかったら選手と主務の両方ができていなかったので、本当に嬉しかったです。この同期だから兼任できて、選手としても頑張ってこれたなと思うので、感謝の気持ちでいっぱいです。

――どんな四年間でしたか

 最高です。こんなに幸せな組織に4年間も所属できて、自分ができることをやらせていただいて本当に幸せに思います。涙が耐えられなかったですね(笑)。最初は優勝して嬉しかったのですが、その後も主務として表彰式の段取りなどやらなければならないことがたくさんありました。1回そっちをやるだけやって、その後メンバーと会えてで迎えた時に「ありがとう」と真っ先に言ってくれて本当にありがたかったですね。

――早大ラグビー蹴球部で学んだことは

 目標に対してブレないことだと思います。どんな代でも日本一を掲げてやってきているチームですし、それが伝統なので、「日本一になる」という目標が前提としてあります。その中で、やるべきことをやっていくということが必要だなと思いました。一人一人の積み重ねで日本一になれる、ということを学べましたね。

――これからどのような社会人になっていきたいですか

 ここの経験を無駄にしないようにしたいです。早稲田のラグビー蹴球部を卒業した人として扱われるので、先輩方が残してくれたブランドというか、早大ラグビー蹴球部の名に恥じないような人間になりたいと思います。

フランカー幸重天副将(文構4=大分舞鶴)

――優勝が決まった瞬間はどのようなお気持ちでしたか

 自分たちが『荒ぶる』を取ったんだなという…。信じられない気持ちと喜びでよく分からなかったです。

――前半は明大を圧倒しました。あの出来はチームとして想定内でしたか

 でき過ぎだなという感じでした。明治が追い上げる力があるのは分かっていたので、後半が始まる時は「ゼロゼロの気持ちでいこう」と話していました。

――対抗戦での対戦時に苦戦したセットプレーでは引けを取っていませんでした

 スクラムはプレッシャーを受けていたのできつかったですが、ラインアウトは良かったと思います。

――後半は明大に攻め込まれる時間が続きました

 明治は底力がありますし、プライドもあるので、苦しい展開になってしまいました。

――そうした状況でどのようなことを話していましたか

 「攻める気持ちを忘れるな、下を向くな」ということはずっと話していました。

――負傷交代となりましが、容態は大丈夫ですか

 脳震盪でした。全然大丈夫です。

――ピッチ外からどのような心境で試合を見ていましたか

 「守ってくれ、頼んだ」という思いでした。

――プレーヤーとして臨む最後の試合でしたが、ご自身のプレーの評価はいかがでしたか

 70点くらいですが、勝ったので良かったです。

――やり切ることができましたか

 そうですね。悔いはないです。

――副将として過ごしたこの一年間はどのような日々でしたか

 春に直人(SH齋藤直人主将、スポ4=神奈川・桐蔭学園)がいなかったりしましたが、例年に比べたら順調にきていた中で、対抗戦の明大戦でショックを受けました。でもそこから生まれ変わってリベンジができて、いい一年でした。

――早大での四年間を振り返っていかがですか

 入った時はまさかここまで自分がくると思っていなかったですし、幸せな四年間でした。

――同期の皆さんにはどのような思いがありますか

 この代で一緒に『荒ぶる』を取れて幸せですし、これからも集まって飲んでいきたいです。

――後輩の皆さんには来年度も『荒ぶる』をつかんでほしいですか

 そうですね。今年以上にプレッシャーもかかると思いますし、4年生が抜ける穴が大きいのはみんなも分かっていると思うのですが、この優勝を経験できたのは大きな財産だと思うので、チーム一丸となって頑張ってほしいです。

フッカー森島大智(教4=東京・早実)

――優勝という結果でしたが今の心境としてはいかがですか

 このために今まで頑張ってきたので、最高です。

――トロフィーを持ったとき、いかがでしたか

 祝勝会で少しずつ優勝を実感してきました。

――対抗戦の明大戦と比べて、ラインアウトはいかがでしたか

 本当に分析した結果が出たと思います。

――ラインアウト、完璧でした

 そうですね、100%。ここで100%の成功率、最高です。

――親子2代での『荒ぶる』となりましたが、いかがでしたか

 今まで本当に、お父さん凄くて。自分は活躍できなくて不甲斐ない思いをさせてると思ってたので、ここで優勝できて、親孝行できて良かったです。

――お父さんに何か言われましたか

 「本当におめでとう」と言ってもらいました。

ロック下川甲嗣(スポ3=福岡・修猷館)

――優勝しての心境はいかがでしょうか

 シーズンを通して『荒ぶる』は目標だったんですけど、対抗戦で明大に負けてからその気持ちはより強くなって、明大戦終わってからやってきたことが報われたかなと思います。うれしいです。

――最大の勝因はどこだと考えていますか

 FWがファイトできたことだと思います。一対一は、ブレイクダウンでプレッシャーをかけられて相手にやりたいようなプレーをさせないということを試合前に話していたので、それが前半はいいかたちでできました。流れができたのでよかったです。

――前半を31-0で終えて、心境はいかがでしたか

 「これはいける」と思いました。やっぱりその少しの気の緩みが、後半点を取られることにつながってしまったのかなと思います。

――明大戦に向けての練習はどのようなことをされてきましたか

 明大というよりは、自分たちにフォーカスして全日本はやってきました。自分たちがやりたいラグビーができたから勝てたんだと思います。

――試合を通して明大のFWにはどのような感想がありますか

 やっぱり大きくて重いなという印象がありますね。その分を運動量でカバーしていかないといけないと思っていたので、それができてよかったです。

――ロックとして、フィールドを動き回るプレーをしたいと以前目標を話されていました。達成できたでしょうか

 達成できたと思います。

――前半2トライ目ではトライアウトからのトライでした。ラインアウトリーダーとしてどのように振り返りますか

 あれは準備してきていたプレーだったので、練習でやったことができたなと思います。

――新しい国立競技場で大観衆に囲まれての早明戦でした。プレッシャーはありましたか

 プレッシャーに感じるかなと(試合前は)思ったんですけど、すごい幸せな気持ちでした。緊張はしましたけど、それも楽しんでできました。

――対抗戦と全国大学選手権(大学選手権)で明治の変わった点はありましたか

 明治が変わったというより自分たちが変われて、この結果が出たんだと思います。

――4年生に向けて一言お願いします

 自分たち下級生からしたら本当にすごい財産を残してくれたなと思います。大学日本一という景色を僕らは見られたので、もう一度そこを目指して頑張ろうという気持ちになりました。

――来季の抱負をお願いいたします

 今回自分たちは大学日本一になって、次は追われる立場になるので、優勝したのはきょうしっかり喜んで、僕は今日の試合の前半を忘れて、後半はゲームの展開をみんなに忘れてほしくないです。

フランカー相良昌彦(社1=東京・早実)

――優勝されて、率直な今のお気持ちは

 試合直後はあまり実感がなかったのですが、試合後にスタジアムを周ったりこのように祝勝会を行ったりするうちにようやく実感が湧いてきたという感じです。

――決勝であると同時に、ご自身として初の早明戦出場となりましたがいかがでしたか

 いつもの試合では緊張して眠れなかったりするのですが、今回は決勝戦ですし国立の舞台でできるということもあってとにかく楽しみという感じで、わくわくしていて、緊張はあまりなく試合に臨むことができました。きょうは自分でトライもできましたし、いつもよりいいプレーができたかなと思います。

――前半39分、ご自身でトライを決められました。トライシーンを振り返っていただけますか

 CTB中野将伍さん(スポ4=福岡・東筑)と一緒に走り込んだのですが、相手が将伍さんの方に目がそれた時に自分の前が空いたという感じだったので、チームプレーで取れたトライだったかなと思います。

――その他個人のプレーについてはいかがでしたか

 タックル回数だったりボールキャリーの回数だったり、ブレイクダウンに絡むなど、とにかくきょうはワークレートの部分でたくさん仕事ができたように思うので、そこが良かったかなと思います。

――ディフェンスについては

 ファーストタックラーが刺さって、ダブルタックルが素早く当たることで、前に出てゲインさせなかったシーンが多くあったので、改善できていたと思います。

――卒部する4年生に向けて一言お願いします

 自分は1年生として結構自由にやらせてもらっていて、ミスなどをカバーしてもらったので、感謝しています。

――来季に向けての意気込みをお願いします

 自分が1つ上の学年に上がるので、今度は自分が後輩たちのミスをカバーするプレーをして、少しはリーダーシップを発揮できるようにしたいです。

――ご自身にとってのファーストイヤーとなりましたが、どのような1年でしたか

 充実しすぎている1年になったと思います。正直監督が父親ということもあって、あまり出場する機会が与えられないかなと思っていたのですが、自分の活躍を認めて他の選手と同様に早い段階から使ってくれて、決勝でトライを決めるようなしっかりした結果を出せたと思うので、そういう部分で充実していたと思います。

NO・8丸尾崇真(文構3=東京・早実)

――試合を終え、優勝が決まった瞬間のお気持ちをお願いします

 素直にうれしかったですが、笛が鳴った瞬間に次のスタートでもあるのでそればかり考えてしまって、また1年後ここに戻って優勝したいなと、そんなことばかり考えていました。

――ゲインする場面も多く見られてとても活躍している印象でした。ご自身のプレーを振り返っていかがですか

 今シーズンで1番良かったかなと思いますね。対抗戦(関東大学対抗戦)はあまり自分の中でも良くなくて、もどかしい気持ちがあったのですが、最後の最後でやっといいプレーができたと思います。

――早大のNO・8としてふさわしいプレーが達成できましたか

 ふさわしくなくはなかったかなと思います。あと1年あるので、それをちゃんと証明していきたいと思います。

――新国立でのファーストトライを挙げました。トライシーンについては振り返っていかがですか

 サインプレーでうまく決まったので良かったです。結果としてファーストトライにはなりましたが、それよりもチームにいい流れを持ってこられたのが良かったと思います。

――スクラムについてはいかがでしたか

 いくつか押せた部分もありましたが、それでも全体的に見たらほぼ負けているので、それは来季のいいモチベーションに、そして目標にしたいと思います。決勝でSTを取ろうというのがFWの目標だったのですが、それはまだ達成できていないので、また頑張ります。

――FWを強みとする明大からモールトライを取りましたが、振り返っていかがですか

 良かったですね、本当に。相手の強みを抑えてこちらが勝つというかたちで、相手のFWに精神的にもいいダメージを与えられたかなと思いますね。

――対抗戦の早明戦との違いはどのようなところにあったと思いますか

 本当に細かいところだと思います。やってきたことを出すには本当に細部にこだわり切るしかないので、そこにこだわり切れたのがきょうで、こだわれなかったのが対抗戦だと、そう思います。

――早実出身の選手が全員トライしたことについて何かありますか

 高校の監督の大谷寛さんが喜んでるんじゃないですか(笑)。

――卒部する4年生に向けて一言お願いします

 まず、優勝おめでとうございます。お世話になりました。いい経験ができたので感謝しています。

――来季、自分たちの代に向けて意気込みをお願いします

 きょう日本一になって、日本一にならないと意味がないなと思ったし、きょう負けていたらそれは初戦敗退と同じだし、やはり(来年も)この決勝で勝ちたいなと思いました。

SO岸岡智樹(教4=大阪・東海大仰星)※囲み取材より抜粋

――前半について

 前半はセットプレーからフェーズを重ねずに、どちらかというと『用意したプレー』で得点を重ねていきました。前回の天理大戦と同じようなプレーといいますか、サインは違いますが意図としては、しっかりフォワードがセットプレーで頑張って中盤でマイボールを獲得した中で、準備していたセットプレーでトライを取り切るということでした。それが得点に繋がったのだと思います。

――明治に対して取れるという自信はありましたか

 取れるという自信はなかったですが、「取るしかない」という思いでした。ディフェンスに関しては1年間積み重ねてきたものをしっかりやり切るというだけだったので、取り切ることができたという面で前半はかなり良かったと思います。明治さんとしては、かなり早稲田からのプレッシャーを感じていたのかなと感じていましたね。

――前回から復帰しているCTB中野将伍選手(スポ4=福岡・東筑)について

 ダイレクトに使う場面と、逆に彼を囮にした裏プレーを使い分けました。前半でいうとラインアウトから逆目に残して丸尾(NO・8丸尾崇真、文構3=東京・早実)のトライにつながったプレーもありましたが、ラインアウトに一度参加させることによって変則的なプレーができて、明治さんもあそこまでは予測していなかったのではないかと思います。そういうサインプレーを用意していましたし、それができるのは彼のポテンシャルありきです。彼がいることによって選択肢が増えるので、きょうの試合でもキーマンだったと思います。

――外に人を余らせて、そこでいいトライを取るシーンが多かったです

 内側のFWがしっかり頑張ってくれているのもありますし、明治さんも「一人では止められない」と思っている中野将があそこに立ってくれている時点で、天理大のフィフィタ選手に早稲田が2人でディフェンスに行ったように2人で来るなと思っていました。しっかり中野を使う部分と囮にする部分の使い分けが前半はうまくできたと思います。中野将が縦に行くオプションと長田がカットアウトをするオプションというのを同時に持っている中で、あとは味方の声と僕の判断で攻めていくことができたかなと思います。中野はゲインラインを突破する嗅覚を持っているので、そういうところに絡んでくれるという意味ではうまく機能していましたね。

――DGを2本狙った場面について

 前半僕らがリードしていたこともあり、時間を使うことは考えていました。明治さんは1回インゴールを割ってしまったキックがあったり、インゴールが狭かったこともあり、ロングキックを多用するという意味ではしんどいです。逆にDGならインゴールを出てしまってももう1回ドロップアウトなので時間が稼げますし、相手はチェイスをしなければいけないので無駄に走らせることができます。かなりちゃんと走ると簡単に60メートルくらいは走るので、そういう意味では疲労という部分も含めて、時間と相手のフィットネスコントロールができたのではないかと思います。

――ディフェンスについて

 アップでは少しボールをポロっとしてしまう場面もありましたが、逆にそれが「やるしかない」という気持ちになり、前半は完全に主導権を握ることができました。最初の入りに関しては気持ちといいますか、ディフェンスのコンタクトの部分で圧倒することができて得点につながったと思います。逆に後半は前回王者らしく「攻めるしかない」という意図が伝わってくる果敢な攻撃の中で、僕らも紙一重のところでディフェンスしていました。

――前半の大量得点は想定内でしたか

 そこは想定外でしたね。得点に関しては想定外でしたが、ありがたいものはありがたいので(笑)。でも後半最初のプレーでトライを取られてしまうなど、後半の入りは若干浮き足立ってしまったのが出たと思います。

――12月1日の敗戦から得た一番の財産は

 小さなことにこだわるという意味で、早稲田としては『早稲田クオリティ』と置き換えていました。早稲田だからしなければならないこと、スタンダードの高さを高めるということを、敗戦から1ヶ月間積み上げてきたことで、今回リベンジが果たせたと思います。あの敗戦では何が悪かったというより全てにおいて明治さんが1枚も2枚もうわてだったので、それを超えなければきょうの勝ちにはつながらないと1ヶ月間連携を取りながらやっていました。

――高校の日本一と大学の日本一の違いは

 日本一になる難しさというものを、大学の過去3年間で感じていました。正月を越えることができない年もありましたし、正月を越えられても決勝には進むことができなかったりしたこともあって。試合が終わったあとに涙が止まりませんでしたが、やっとここまで来ることができましたし、最高の舞台でしっかり四年間やってきたことを出せましたし、今回の勝利の方がうれしさはあると思います。

――高校時代のライバルである齋藤主将とのHB団について

 大学1年生の大学選手権(全国大学選手権)初戦の同大戦できょうの逆のスコアのようなゲーム展開で負けた時に、齋藤主将が「絶対に勝てた」ということだけをつぶやいていて。「こいつを勝たせたい」と僕は思いました。それを最後の年でキャプテンとして齋藤を胴上げすることができたというのは、本当によかったなというふうに思います。高校時代は桐蔭学園のキャプテンであり、キーマンとして僕らもマークしていたので、大学で同じチームになって味方になった時は心強かったです。決勝の舞台でも彼が率先してバッキングのディフェンスやアタックでもリーダーシップを発揮してくれていたのは助けになっていました。

――3年生からの2年間でチームがとても良くなりました

 もちろん監督やコーチ陣が変わって。やるラグビーが変化したのはあります。でも、大学日本一を目指すところの違いかなと。僕が1、2年生の頃は、大学選手権で勝ち進む未来が見えていなかったと振り返って思います。逆に今年は本当にチャンスもありますし、「自分たちの手で掴みとって決勝まで行くんだ、そして勝つんだ」という言葉がかなり強くなったのが、今回現実になったのかなと思っています。

WTB古賀由教(スポ3=東福岡)

――優勝おめでとうございます。今の率直な気持ちをお聞かせください

 すごくうれしいです。日本一は気持ちがいいものだなと思いました。

――きょうの試合はどのようなお気持ちで臨まれましたか

 すごく良い環境を提供してもらっているので、それに感謝しつつ、きょうはとりあえず楽しもうという気持ちで臨みました。

――明大とは対抗戦で敗れて以来の対戦となりました。勝利の一番の要因は何だと考えていますか

 40日間の準備だと思います。僕たちはここで勝つために負けてからずっと練習してきたので。その準備が良かったのかなと思います。

――その練習の結果が優勝というかたちで表れて、どのように思っていますか

 まずは、すごくうれしいです。40日間の努力が報われたかなと思います。

――今試合でも何度か大きくゲインができていました。明大ディフェンスと対峙する上で意識していたことは

 FWも含めて、将伍さん(CTB中野将伍、スポ4=福岡・東筑)や長田(CTB長田智希、スポ2=大阪・東海大仰星)が内側で頑張ってくれている分、僕たち外側の人間はやっぱり外でゲインしなきゃいけないということは試合前からずっと準備していたので、そこでゲインできたのは良かったのかなと思います。

――天理大戦後のインタビューで「体を張って自分の責任を果たす」とおっしゃっていました。実際にやってみていかがでしたか

 特にディフェンスも抜かれることがなかったので、80分間立てなかったのは申し訳ないことですが、自分が持っている力は全て出せたかなと思います。

――前半終了時、後半開始時ともに全速力でグラウンドを駆け抜けていました。それはどのような心境でしたか

 前半終わって(ロッカールームに)戻るときには、こっちはまだまだ体力あるということを、相手チームを含めて会場全体にも表現する気持ちで走っていました。後半最初に出てきたのはたまたまなのですが、早く試合がしたいという気持ちでした。あと40分間しかないけれど、結局20分になってしまいましたが、もっともっとこのグラウンドに立ちたいなと思いました。楽しかったです。

――新しい国立競技場での初めてのプレーでした

 なかなか入ることができないところなので、貴重な経験ができたなと思います。

――今年1年間を振り返って

 前半、半年間はけがでチームに迷惑をかけました。後半は青学大戦から復帰して、ずっとAチームで試合に出続けられたのはすごくうれしかったです。1年生も2年生も最後けがで離脱するっていうかたちになっていたので、3年生になって初めて秋のシーズンを通して元気にラグビーができてよかったと思います。

――この試合をもって、4年生は引退となります。そんな4年生に一言お願いします

 僕からしたら兄貴的な存在なので、4年生がいなくなることはすごく不安です。けれど、きょう4年生が置いていったものを僕たちは引き継がないといけないので、何かは分からないですが、引き継いだものをまた来年も後輩に見せられたらなと思います。

――来年は古賀さんたちの代になります。少し気が早いですが、来季に向けての意気込みをお願いします。

 まだ全然考えられていませんが、来季は「今年の4年生」という才能あふれた選手たちがいなくなってしまうので、自分たちみたいな平凡がどこまで通用するか、すごく楽しみだしワクワクしています。

CTB中野将伍(スポ4=福岡・東筑)※囲み取材から抜粋

――準備していた通りの試合展開てしたか

 最初の丸尾のトライとかは準備していたサインプレーでした。いい感じにボールを貰えてうまく繋げたかなと思います。BKが前に出ていこうと風になっていたので、自分は起点になって周りのスペースを生かすということを考えて試合に臨みました。

――ゲームの入りが良かったですが、どこがポイントでしたか

 練習から常にゲームの入りを意識しようと今年はやってきましたし、最初は「みんなが前に出る」という強みであるディフェンスのところでしっかりとできたのが、最初の流れにつながったのかなと思います。いいポジションでセットしていつでも出れる準備しようと声かけはしていましたね。『勝ちポジ』を取ろうとは話していました。

――『勝ちポジ』とはどういった意味でしょうか

 ただ棒立ちするんじゃなくて、いつでもスタートポジションをとってセットするということです。

――そういった意識付けができていることがあれだけプレッシャーをかけられる要因でしょうか

 そうですね。常に『勝ちポジ』というのは声を掛け合ってやっていたので、対抗戦が終わってから再度強調するようになりました。きょうもタッチラインから聞こえてきました。対抗戦の早明戦の時にはまだ意識が足りていなかったので、出だしが遅れて食い込まれる場面は多かったのかなと思います。あとはシステムのところでも一人一人が自分の役割ができていたのでいいディフェンスができたかなと思います。

――明大のアタックの分析などもされましたか

 分析もしますが、まずは自分たちのディフェンスのかたちを作ることから意識しました。

――ブレイクダウンに関してはいかがでしたか

 ブレイクダウンに関しては、ボールキャリアに対して2人助けあってボールを出そうという話はしていました。そこはキャリアーが前に押し込めていて、サポートが早めにできた分ブレイクダウンにかける人数は少なくできたかなと思います。

――味方の声は聞こえましたか

 セットプレーの時は寄って話せるんですけど、フェーズが重なると何度か伝わらないプレーもありましたし、フェーズ中は聞こえにくい場面はありました。

――その中でのプレーというのはいかがでしたか

 しっかりと準備をしてきたことをやったので、きょういきなりやろうというプレーはなかったので、やろうとしていたことは統一できていたと思います。なので、コミュニケーションが取れない時でも大きなミスにはつながらなかったのかなと思います。一応アタックに関してはサインプレーはありますけど、「全員オプション」でやっているので全員ボールを受けられるように動いていたので、空いてる選手がいいかたちでもらえたのかなと思います。

――齋藤主将や岸岡選手とは1年時から共にピッチに立ってきました

1年生から比べたらみんな成長できていると思いますし、お互いの強みや、やりたいことが分かったのでいいプレーができたなと思います。

――けがをして試合から離れている期間で成長した部分はありますか

 けがをした時は「早く試合したいな」という思いがありました。ただ、チームのことも大事ですけど、まずは自分の治療のことに専念して、復帰した時にしっかりとしたパフォーマンスができるようにトレーニングしました。特にここというよりかはフィジカル面でも体全体を日々追い込んでいました。

――不安はありませんでしたか

 できる限りの準備をしていたので、復帰した時には特に不安はなかったですね。

CTB長田智希(スポ2=大阪・東海大仰星)

―― 11年ぶりの大学選手権優勝を達成された今のお気持ちは

 とてもうれしいです。

――昨年の大学選手権、今年度の対抗戦で敗戦した明大に対してどのような準備をしてきましたか

 明治に対して何をするかというのもあったんですけど、これまで一年間早稲田が積み上げてきたものを出そうということでこの試合に挑んで、それが前半からうまいことはまったかなと思います。

――前半のご自身の独走トライを振り返って

 あれは一つ用意してたサインプレーがあったので、それがうまくいったかなという感じです。

――前半は無失点で終えました

 前半も結構ディフェンスのところでしっかり前に出て1人目がしっかり下に入ってということで、いいディフェンスができてたんですけど、後半になるとちょっと疲れが出てきたときに(明大に)走られたりしたので、今シーズンは終わったんですけど来年以降の課題かなと思いました。

――後半追い上げられた中でも勝ち切れた要因はなんでしょうか

 試合前に話していたことですが、決勝となるとどっちが勝ちたい気持ちがでかいのかというのが大きいという話があったので、それがひとつの大きな要因だったと思います。

――このチームで戦ってきた1年を振り返っていかがですか

 今年は始まったときから日本一を狙える代だなと、特に4年生にいいプレーヤーがたくさんいて、今年は絶対に日本一を取りたいなと思って挑んだので、最高の結果が得られてよかったなと思っています。

――来年度からは上級生となりますが、今後への意気込みをお願いします

 今シーズンも昨シーズンも含めて、試合に出させてもらってるんですけどやっぱり先輩のプレーに助けられている部分が多かったので、来年からは自分から引っ張っていけるように、自分からタテに出たりチームを引っ張っていくプレーができるように頑張りたいと思います。

WTB桑山淳生(スポ4=鹿児島実)

――国立競技場という大きな舞台での決勝でしたが、どのようなお気持ちで試合に臨まれましたか

 僕自身は、国立でも秩父宮でも関係なく一戦一戦大事にするっていうのを心がけてて、その中でもきょうは早稲田としての最後の試合、勝っても負けても最後の試合だったんで、昨日の夜からいろいろ思うことはあったり、いろいろ思い浮かべてみたりして、すごい、なんていうか趣深い気持ちになってました

――対抗戦からどのようにチームとして、または個人として変化したことが勝ちにつながったと思いますか

 チームとしては、もっと攻めの意識を強めよう、アタックもディフェンスもどちらも一回も守りに入らずに攻めることを心がけてやってました。個人としてはWTBとしての役割、やっぱりトライを取るっていう部分が今まで対抗戦まではすごく弱かったのかなっていうのは心の中に思ってて、大外にいる人間なんで、トライっていうのは結果なんでそこの過程が大事って言われれば過程が大事なんですけど、それでもやっぱり僕はトライを取りたいっていう気持ちを持って、トライを取るためのボールタッチの数を増やしたりっていうのを特に意識しながらやってて、決勝でトライを取ることができたのはすごく良かった点かなと思います

――そのトライシーンですが、振り返ってどのようなお気持ちですか

 サイン自体とはちょっと異なってたんですけど、そこで崇真(丸尾崇真、文構3=東京・早実)が抜けたときに明治のディフェンダーよりも早くサポートにつくことができたからトライを取ることができたっていうシーンだったんで、早稲田として、早稲田らしさの部分でサポートの寄りの部分だったりディフェンスで前に出続ける部分を含めて、早稲田らしさが出た場面だったんじゃないかなと思います

――前半と後半に大きな得点差があり、後半では明治の流れで失点を重ねましたが焦りなどはありましたか

 少しはあったんですけど、それでもチームとしてもう一度自分らのやってきたことを振り返って、やってきたことを出そうとみんなで話してました

――ご自身の4年間を振り返っていかがですか

 1年生の最初でけがして、そこからリハビリ14ヶ月やって、2年生の時はAチームに絡めてたんですけど、大事な試合でAチームとして出場することはできなくて、そういう悔しい思いをして、それがあったから3年生4年生でAチームで出ることができて、BチームやCチーム、またその下のチームの気持ちがわかるようになって、個人としてっていうよりもチームとして勝ちたい、チームが勝つために自分が何をすべきかっていうのを模索し続けてた4年間だったんじゃないかなと今は思います

――最後に後輩に向けて一言お願いします

 後輩の子たちはみんないい選手がそろってると思います。学ぶ意欲だったりということを含めていい選手がそろってるので、これまで以上に頑張ってもらって、3年生は4年生にっていう最上級生になるっていう部分で、またチームとして今の3年生のチームのチームカラーを作っていってほしいなと思います

全国大学選手権
早大スコア明大
前半後半得点前半後半
311435
45合計35
【得点】▽トライ 長田、桑山、古賀、相良昌、丸尾、森島 ▽ゴール 齋藤(6G、1PG)
※得点者は早大のみ記載
      

早大メンバー
背番号名前学部学年出身校
久保 優スポ3福岡・筑紫
 後半40分交代→17横山  
森島 大智教4東京・早実
 後半40分交代→16宮武  
小林 賢太スポ2東福岡
 後半33分交代→18阿部  
三浦 駿平スポ4秋田中央
 後半39分交代→19中山  
下川 甲嗣スポ3福岡・修猷館
相良 昌彦社1東京・早実
幸重 天文構4大分舞鶴
 後半33分交代→20大崎  
丸尾 崇真文構3東京・早実
◎齋藤 直人スポ4神奈川・桐蔭学園
10岸岡 智樹教4大阪・東海大仰星
11古賀 由教スポ3東福岡
 後半21分交代→23梅津  
12中野 将伍スポ4福岡・東筑
13長田 智希スポ2大阪・東海大仰星
 後半40分交代→21小西泰  
14桑山 淳生スポ4鹿児島実
15河瀬 諒介スポ2大阪・東海大仰星
 後半39分交代→22吉村  
リザーブ
16宮武 海人政経2東京・早大学院
17横山 太一スポ2東京・国学院久我山
18阿部 対我社2東京・早実
19中山 匠教4東京・成城学園
20大﨑 哲徳文構2東京・国学院久我山
21小西 泰聖スポ1神奈川・桐蔭学園
22吉村 紘スポ1東福岡
23梅津 友喜スポ4岩手・黒沢尻北
※◎はゲームキャプテン、監督は相良南海夫(平4政経卒=東京・早大学院)