2010年代は、テニス史上最も物語に溢れた10年として記憶されるのは間違いない。ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、セレナ・ウイリ…

2010年代は、テニス史上最も物語に溢れた10年として記憶されるのは間違いない。ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)らがグランドスラムやその他の大会で残した成績は、まさに圧倒的という他はなく、現代のテニススターとは何たるかの基準を作り上げた。

また、2010年代は選手たちがSNSを介し、自分たちの世間へのイメージをコントロールし始めた最初の10年としても記憶されるだろう。選手たちはそれまでも自分の感情を表現する場があったが、SNSのおかげで、ファンに自分の個性を直接見せることができるようになった。

米テニスメディアのBaselineは、皮肉っぽいものから、優しいもの、ふざけたつぶやきまで、印象に残った2010年代のテニスツイートを時系列に紹介している。早速振り返っていこう。

「この新しいコミュニケーションツールへようこそ」(2013年8月23日)/ラファエル・ナダル

2013年というとそこまで昔ではないように感じるが、SNS上は今とは少し異なる世界だった。選手たちはまだTwitter初心者で、使い始めていた選手たちもどのように自分の主張をするべきかまだ捉えきれていなかった。そんな時期に、ナダルがアナ・イバノビッチ(セルビア)をSNS上で歓迎し、次のようなやりとりをしていた。

ナダル「この新しいコミュニケーションツールへようこそ。ツイートの交換を楽しみにしているよ」

イバノビッチ「ありがとうラファ。でもなんでそんなに改まってるの?!(笑)」

「同じ鷹なのに・・・ラファ・・・」(2013年12月29日)/アンディ・マレー

現実世界で起こった愉快な一面も、SNSで垣間見ることができる。マレーは「僕とすごく落ち着いた感じの鷹」という言葉を添えて、鷹と撮った2ショット写真をTwitterに投稿。その横にはナダルの姿もあり、マレーの次の投稿で「同じ鷹なのに・・・ラファ・・・」という一言と共にナダルの手の上で大暴れする鷹と慌てるナダルの写真が公開された。これにより、マレーがナダルよりずっとうまく鷹を扱うことができることが分かった。

「今夜の一枚…:)」(2014年10月18日)/マリア・シャラポワ

シャラポワが「今夜の一枚」としてアップしたのは、2014年「WTAファイナルズ」の時の写真だが、この写真は10年に一枚の写真として記憶されている。これからパーティらしく着飾った女子のトップ選手たちが、何かの時間待ちらしく、ズラリと並んで座ってスマートフォンに没頭したり、表情もなくボーっとしていたり。1つの大会で何千万円といったお金を稼ぐスター選手たちも、時には普通の人々に戻るようだ。

逆さの写真と共に一言「オーストラリアにいるからこれでいいよね」(2015年1月16日)/トマーシュ・ベルディヒ

トマーシュ・ベルディヒ(チェコ)が現役の間に遺したものは、コート上での功績だけにとどまらず、オンラインでのオリジナリティも挙げられる。例えば、オーストラリアが地球の反対側にあることを文字通りに画像化した時。「謝らなければいけないんだけど…、いやオーストラリアにいるからこれでいいよね」と、逆さの写真で自分の状況を表現した、なんともユニークなツイートだ。

「感覚を養おう」(2018年7月24日)/ステファノス・チチパス

この10年の終わりには、ATPツアーに新世代のスターたちが台頭してきた。「全仏オープン」で2度ファイナリストとなったドミニク・ティーム(オーストリア)、「全米オープン」準優勝のダニール・メドベージェフ(ロシア)、そしてもちろん2018年「Next Genファイナルズ」チャンピオンで2019年「Nitto ATP ファイナルズ」チャンピオンとなったステファノス・チチパス(ギリシャ)。チチパスはプロになってまだそんなに長くはないが、ネット上で活発に発信し続けている。独特な言葉に写真を添えるのが、彼の得意のスタイルだ。このツイートでは広い温水プールらしきものの手前でジャグジーに浸かったチチパスの写真に「感覚を養おう」の言葉が添えられている。

「ビーチの散歩を楽しむっていうのは、こういう意味なんだよね」(2019年3月17日)/大坂なおみ

女子テニスでも、2010年代後半に数々の新星が登場した。例えば、アシュリー・バーティ(オーストラリア)、ビアンカ・アンドレスク(カナダ)、そして大坂なおみ(日本/日清食品)だ。大坂は、2018年「全米オープン」と2019年「全豪オープン」のグランドスラム2連勝を果たした頃にはすっかりSNSのプロだった。こちらがその好例。

「ビーチの散歩を楽しむっていうのは、こういう意味なんだよね(笑)」と、「全豪オープン」の豪華なトロフィーを手に満足そうに浜辺を歩く大坂の写真が添えられたこのツイートは、1,000リツイート、1万5000いいねを獲得した。

2010年代のテニスには、良い時も悪い時もTwitterが共にあった。次に何が来るのかは誰にもわからないが、それをどう使うかは選手たちの手に握られている。

(テニスデイリー編集部)

※写真はレーバーカップでのティーム(左)とフェデラー(右)

(Photo by Clive Brunskill/Getty Images for Laver Cup)