ATPの2019年を振り返ると、いくつかの激しいライバル関係が存在した。今回はその一つ、ロジャー・フェデラー(スイス)VSドミニク・ティーム(オーストリア)のライバル関係を見てみよう。何年か後…

ATPの2019年を振り返ると、いくつかの激しいライバル関係が存在した。今回はその一つ、ロジャー・フェデラー(スイス)VSドミニク・ティーム(オーストリア)のライバル関係を見てみよう。

何年か後に振り返れば、ティームは2019年を自分がオールコート・プレーヤーになった年だと考えるだろう。その証拠には、彼とフェデラーとの闘いを見ればいい。2019年まで、2人の対戦成績は2勝2敗のイーブンだった。ティームは2016年、ローマのクレーコートでフェデラーにストレート勝利。さらにシュツットガルトのグラスコートでも勝ったが、フェデラーはその後2月に手術した左膝を休ませるため、2016年は「ウィンブルドン」より後の大会には出場しなかった。フェデラーは2018年「Nitto ATPファイナルズ」の、ロンドンのO2アリーナの球足の速いコートでティームにストレート勝利を収めて対戦成績を五分とするが、2019年のこのライバル関係はいささか一方的な結果となった。

「ATP1000 インディアンウェルズ」決勝 3-6、6-3、7-5でティーム勝利

フェデラーはマスターズ1000大会の中でも特にここインディアンウェルズでは強かった。彼とノバク・ジョコビッチ(セルビア)は同大会最多優勝記録(5回)で並んでいる。フェデラーは2018年まで出場した4回連続で決勝へ進出し、うち1回(2017年)優勝している。

2019年も、2月にドバイで通算100個目のタイトルを取ったばかりのフェデラーは、インディアンウェルズで1セットも落とすことなく決勝へ上り詰めており、準決勝では対戦するはずだったラファエル・ナダル(スペイン)が膝の怪我のため試合前棄権したので、休養も十分だった。

一方のティームは、2019年に入ってからこの大会の前まで、わずか3勝しかしていなかった。だがここインディアンウェルズの球足の遅いハードコートで、彼はフェデラーに対し厳しいバックハンドを次々に繰り出し、マスターズ1000大会で初めての優勝を飾ったのだ。ティームは第1セットを取られ、第2セットでも早々にブレークポイントを握られたがそれを凌ぐと勢いに乗った。

試合後にティームは語った。「試合中、僕はずっとゾーンに入っていた。この素晴らしい決勝をロジャーと戦えて嬉しい。これまで2回、マスターズ1000の決勝で敗れたけど、今度は勝つことができて、グランドスラムで優勝したみたいにいい気分だよ」

「ATP1000 マドリード」準々決勝 3-6、7-6(11)、6-4でティーム勝利

5月、「ATP1000 マドリード」でフェデラーは3年ぶりにクレーコートの大会に出場。しかもクレーでトップ10選手に勝ったのは2015年「ATP1000 ローマ」準決勝でのスタン・ワウリンカ(スイス)戦が最後だった。

だが運はフェデラーに味方しているようだった。3回戦でガエル・モンフィス(フランス)と対戦したフェデラーは、2度のマッチポイントを凌いで、この大会で2度準優勝しているティームとの準々決勝に勝ち進んだのだ。

ところが3回戦とは逆に、準々決勝でマッチポイントを逃したのはフェデラーの方だった。インディアンウェルズの時と同じように、ティームは第1セットを落としながら逆転。そこまで7連勝していたティームは、第2セットのタイブレークで7-8と9-10で迎えた相手の2回のマッチポイントを凌いで勢いづき、最終セットの第3ゲームと第9ゲームでブレークして勝利した。

「僕のストロークは特にフェデラーのバックハンドに対して効果的なんだ。彼と戦う時は、絶対に自分のベストを出さないといけないし、その上で少しの運も必要だ。インディアンウェルズでもここでもその両方があった、だから勝てたんだ」とティームは語った。

フェデラーがマッチポイントを握りながら敗れたのはこれが21回目で、2018年「ウィンブルドン」準々決勝でケビン・アンダーソン(南アフリカ)に敗れて以来だった。

「Nitto ATPファイナルズ」グループステージ 7-5、7-5でティーム勝利

だがフェデラーが6回の最多優勝記録を持つ年末の「Nitto ATPファイナルズ」では、もちろんフェデラーが意地を見せるだろうと思われた。フェデラーは10月に故郷バーゼルで10度目の優勝を遂げており、インディアンウェルズと「ウィンブルドン」で惜しくも逃した、マイアミでのマスターズ1000に並ぶ「ビッグタイトル」を狙っていた。

だがティームは絶妙のタイミングで球足の速いハードコートでの戦い方を見出していた。2019年より前にティームはツアーレベルで11回の優勝を遂げていたが、そのうちハードコートでのタイトルは2つしかなかった。それが2019年は、10月だけで「ATP500 北京」と母国での「ATP500 ウィーン」の2タイトルを獲得したのだ。

ここロンドンで休養十分な状態のフェデラーを打ち負かすのは、これまでとはまた違うチャレンジだったはずだが、ティームはそれをも克服した。第1セットを取ったティームは第2セットの第11ゲームでブレークし、続く最終ゲームで握られた2つのブレークポイントを凌いで勝利した。

「彼に勝つためには、すべてがうまく運ばなくてはならない。これはとても嬉しい勝利だ。彼と戦うのはいつもすごく光栄なことだ。勝てばさらに嬉しいよ、特にこの彼の得意な室内ハードコートで勝つなんて」とティームは言った。

その2日後、ティームは2018年のアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)に続いて大会史上2人目の、フェデラーとジョコビッチの両方に勝った選手となった。その後、彼は最終日まで勝ち残るが、決勝でステファノス・チチパス(ギリシャ)に敗れた。

フェデラーと6回以上対戦した選手は74人いるが、そのうち対戦成績で勝ち越しているのはティームを入れて以下の5人だけだ。

<フェデラーとの対戦成績>

ジョコビッチ:26勝23敗

ナダル:24勝16敗

ティーム:5勝2敗

ズベレフ:4勝3敗

エフゲニー・カフェルニコフ(ロシア):4勝2敗

※写真は「ATP1000マドリード」でのティーム(左)とフェデラー(右)

(Photo by Alex Pantling/Getty Images)

翻訳ニュース/ATPTour.com