「男子テニス界のBIG3」ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の存在感や、その牙城を崩そうというダニール・メドベージェフ(ロシア)、…

「男子テニス界のBIG3」ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の存在感や、その牙城を崩そうというダニール・メドベージェフ(ロシア)、ステファノス・チチパス(ギリシャ)ら若手の初トップ10入りなど、群雄割拠の様相を呈した今シーズン。ATP(男子プロテニス協会)の公式YouTubeでは、そんなトップ選手たちの2019年ベストショット集を動画公開している。

そのなかで今回は世界ランキング2位、「鉄壁のディフェンス」を誇るジョコビッチの名プレーを紹介する。

2018年に肘の手術から完全復活後、今シーズンも約10ヶ月間にわたり世界1位の座についていたジョコビッチ。身体の柔軟性や優れたスライディング(滑りながらボールを拾う)技術に下支えされた鉄壁の守備力と、正確無比なストロークで相手に強いプレッシャーを与え、時には観客を巻き込んで会場の雰囲気でも試合の主導権を握ろうとする。

相手をじわじわと追い詰めて、徐々に確実に仕留めるような試合運びが、ジョコビッチの強さと言えるだろう。動画でも、相手を抜き去るウィナー以上に、相手が根負けするようなシーンが印象的だ。

5月のクレーコート大会「ATP1000 マドリード」では、ドミニク・ティーム(オーストリア)から厳しい左右への振り回しを受けながらも相手コート一番深いところへ高いロブを返球。体勢を立て直して逆に打ち込み、相手のミスショットを引き出したというプレーもある。

そしてシーズン最終盤の「ATP1000 パリ」では、相手のグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)に見えない壁を感じさせるようなロングラリーを見せた。

このシーンは第1セット、お互いブレークポイント無しで迎えたタイブレーク。タイブレークのスコアはジョコビッチの4-5となり、相手のサービスに変わった劣勢のタイミングだった。ジョコビッチは、時折来る相手の深い攻め球も正確に返球。すると相手ディミトロフは攻めあぐねるように、コートのセンター寄りで様子を見るような展開になり、ジョコビッチも無理に攻撃せずしばらく付き合う。

それでも、その後ディミトロフはセンター付近からコート外へ逃げていくような逆クロスの片手バックハンドで、ジョコビッチを再び攻め込んだ。ジョコビッチは走り込んだあと持ち前の柔軟性で大きく開脚し、さらにハードコートでのスライディングを見せなんとかロブを返球。

すると、チャンスボールとなり前に詰めた相手ディミトロフだったが、最後はドライブボレーをわずかにサイドアウトしてしまった。打ち込んだコースにはジョコビッチが構えており、ディミトロフは一瞬の間にコースの迷いや、より厳しいところに打たなければならないというプレッシャーがあったのかもしれない。

実に計32本のラリーとなったこのポイント。ジョコビッチは派手なガッツポーズで「カモーン!」と吠え、満員の会場は大興奮となった。そしてジョコビッチは、一時3-5の劣勢だったこのタイブレークを逆転でものにし、結果的にはストレートで試合に勝利した。どれだけ攻め込んでも、どこに打ち込んでも勝てないとすら思わせるような、ジョコビッチらしさが出たプレーではないだろうか。

今シーズンを世界2位で終えたジョコビッチ。今年はグランドスラム「全豪オープン」「ウィンブルドン」やマスターズ1000の2大会を含め、計5つのタイトルを獲得した。また、初めて日本の「楽天ジャパンオープン」でもプレーし、日本のファンを大きく湧かせた。

来年2020年は東京オリンピックでプレーすることとなっており、同じく出場を予定しているフェデラーとともにファンにとって大きな楽しみが待っている。

なお、ジョコビッチのベストショット集の動画では他にも、鉄壁のディフェンスから逆に鋭いウィナーを決めるポイントや、ツアー最終戦「Nitto ATPファイナルズ」でのティームとの激しい打ち合いなどが紹介されている。

(テニスデイリー編集部)

※写真は「ATP1000 パリ」でのジョコビッチ

(Photo by Quality Sport Images/Getty Images)