ATPの2019年を振り返ると、いくつかの激しいライバル関係が存在した。今回はその一つ、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)VSダニール・メドベージェフ(ロシア)のライバル関係を見てみよう。ジョコ…

ATPの2019年を振り返ると、いくつかの激しいライバル関係が存在した。今回はその一つ、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)VSダニール・メドベージェフ(ロシア)のライバル関係を見てみよう。

ジョコビッチは2019年シーズンに入るまでメドベージェフに負けなしだった。過去2戦で1セットを落としただけだ。身長198cmのメドベージェフはその当時、ラリーではジョコビッチに対抗できたかもしれないが、一度の対戦で1セット以上を取ることはできなかった。しかし、メドベージェフが才能を大きく開花させた2019年シーズンにすべてが一変。彼はトップクラスの相手にも勝つ方法を身につけ、それは大きく崩れないことで知られるジョコビッチに対しても例外ではなかった。

「全豪オープン」4回戦 6-4、6-7(5)、6-2、6-3でジョコビッチ勝利

シーズン最初のグランドスラムである「全豪オープン」で、メドベージェフはこの一年がそれまでとは違ったものになることを予見させた。自身初のグランドスラム準々決勝進出を目指すメドベージェフは、それまで見せなかったような形でジョコビッチを押し込んだ。

二人は激しくボールを叩き合い、40打を超えるラリーを繰り返した。だが、メドベージェフは第2セットを取った後、勢いを失ってしまう。第3セットを2-1とリードした状態で迎えた相手のサービスの第4ゲーム、メドベージェフは3つのブレークチャンスを手にする。しかし、世界1位のジョコビッチが逆襲。そこからの15ポイントのうち12ポイントをものにして同ゲームをキープし、続く第5ゲームをブレーク。そのまま第3セットと第4セットを連取して勝利を収めた。

ジョコビッチは試合後こう語っている。「彼を破るのは大変だった。猫と鼠のにらみ合いみたいな試合ですごく時間がかかった。40から45くらいの打数のラリーを続けたんだ。相手にポイントをみすみす渡すようなアンフォーストエラーはできなかったから、すごく疲れる展開になったよ。彼のバックハンドは非常に安定している。だからバックの側ではあまりチャンスを得られなかったけど、ずっとフォアハンドでプレーするわけにもいかないからね。相手を両サイドに振って、ポイントを少しずつ積み上げていくしかないんだ」

ジョコビッチはそのまま「全豪オープン」を勝ち進み、決勝でラファエル・ナダル(スペイン)を破って大会最多記録となる7度目の優勝を飾っている。

「ATP1000 モンテカルロ」準々決勝 6-3、4-6、6-2でメドベージェフ勝利

メドベージェフがこの強敵相手に金星をあげる場所として、クレーコートを予想した者はほとんどいなかっただろう。それまでの彼は、クレーで2勝9敗、そしてトップ10選手に対しては1勝11敗と、大きく負け越していた。しかし3回戦で世界8位だったステファノス・チチパス(ギリシャ)を破ると、続く準々決勝でジョコビッチも撃破。これは、彼にとって世界1位からの初勝利だった。

ジョコビッチを破った後、メドベージェフは「僕のキャリア上、間違いなく最高の試合だ。テニスの内容でなく、結果という意味においてだけどね。人生で初めて世界1位を破り、マスターズ1000大会準決勝に到達できたんだから」と喜びを口にした。

この試合、メドベージェフが第1セットを取ったが、ジョコビッチが第2セットを取り返して勝負は第3セットに。そして最終セットで、メドベージェフは「全豪オープン」から大きく成長したことを示した。最初のサービング・フォー・ザ・マッチとなったゲームを落としたものの、すぐさままたこの日5度目のブレークを果たして勝利を掴んでいる。

ジョコビッチは試合後、こう述べた。「メドベージェフはコート上での動きを昨年から大きく改善した。この結果は妥当だね」

「ATP1000 シンシナティ」準決勝 3-6、6-3、6-3でメドベージェフ勝利

「ウィンブルドン」決勝でロジャー・フェデラー(スイス)の2つのマッチポイントをしのいで通算16回目のグランドスラム優勝を成し遂げたジョコビッチにとって、約1ヶ月ぶりに参加した大会となった「ATP1000 シンシナティ」。

一方のメドベージェフは、ジョコビッチが休んでいた間、北米のハードコートで研鑽を積んだ。「ATP500 ワシントン」と「ATP1000 モントリオール」で2大会連続の決勝進出を果たしたのである。そんな彼のハードコートでの躍進は、このシンシナティで1年前に史上初の「ゴールデン・マスターズ」(マスターズ1000の9大会を全制覇)を達成したジョコビッチを相手にしても続くことになった。

メドベージェフは第1セットを3-6で落とし、第2セットも2-3でリードされて第6ゲームは30-40の劣勢になっていたが、ブレークされるピンチを逃れると逆襲開始。以降は、スピードがありアングルのついたサーブでジョコビッチにリズムを作らせなかった。この試合の大部分でメドベージェフは2種類のファーストサーブしか使わなかったのだが、それが効果的だった。ジョコビッチはマスターズ1000の準決勝で第1セットを取った場合、2013年3月の「ATP1000 インディアンウェルズ」でフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)に敗れたのを最後に6年以上にわたって負けていなかったが、メドベージェフはそのジンクスを破ることに成功したのだ。

「正直言うと、自分でもどうやったのか分からないんだ」と、メドベージェフは試合後、ESPNのコメンテーターを務めるブラッド・ギルバートに打ち明けた。「第1セットではすごく疲れて、ノバクを相手にこの高いレベルのプレーを維持することはできないと思った。でも第2セットで流れが変わって、大きな違いを生んだ。観客からたくさんエネルギーをもらったよ。普段の僕はセカンドサーブが効果なければ攻めるんだけど、第1セットではノバクにやられてしまった。そんな時、思ったんだ。“どうせポイントを失うなら、普通のセカンドサーブを打つことはないんじゃないか?”ってね。それからはポイントが奪えるようになったよ」

その後も勝利を重ねたメドベージェフは、6大会連続でファイナリストとなり、シンシナティ、サンクトペテルブルク、上海の3大会で優勝した。この6大会の中には、初のグランドスラム決勝進出を果たすもナダルの前に敗れた「全米オープン」も含まれる。そして11月にはロンドンで行われた「Nitto ATPファイナルズ」初出場を果たし、年末ランキングで過去最高の5位につけたのである。

※写真は「全豪オープンP」でのメドベージェフ(左)とジョコビッチ(右)

(Photo by Fred Lee/Getty Images)

翻訳ニュース/ATPTour.com