アメリカ・ニューヨークで開催中の「全米オープン」(8月29日~9月11日)は 11日目、女子シングルスの準決勝などが行われ、第1シードのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が第10シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)に2-6 6-7(5…
アメリカ・ニューヨークで開催中の「全米オープン」(8月29日~9月11日)は 11日目、女子シングルスの準決勝などが行われ、第1シードのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が第10シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)に2-6 6-7(5)で敗れる番狂わせが起きた。もうひとつの準決勝は、第2シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)がノーシードで元女王のカロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)を6-4 6-3で下し、今季3度目のグランドスラム決勝進出を決めた。
また、ジュニアの部で第7シードの綿貫陽介(グローバルプロTA)が地元ワイルドカード(主催者推薦)のセバスチャン・コルダ(アメリカ)に逆転勝ちして準々決勝に進出。ちなみにこのコルダは、1998年全豪オープン・チャンピオンのペトル・コルダ(チェコ)の息子だ。ダブルスでは堀江亨(関スポーツ塾・T)/清水悠太(西宮甲英高)組がマッチタイブレークを制して準決勝進出を果たした。ウクライナの選手と組んだ本玉真唯(S.ONEグリーンTC)は相手ペアの棄権により、不戦勝でベスト4入りした。 ◇ ◇ ◇
最後までセレナらしさ、女王らしさが完全には戻ってこなかった。世界11位とはいえこれまでグランドスラムは3回戦が最高。そんな24歳のプリスコバに敗れたことは、今季のグランドスラムで唯一決勝に進めないということ、全米では2年連続の準決勝敗退に終わったこと以上の重大な意味があった。
現在、2位のケルバーが準決勝まで勝ち上がってきた時点で、セレナは優勝するしかその椅子を守る手はなかったのだ。つまり、世界1位陥落----。
プリスコバはフラット系の伸びのあるショットで、得意のフォアハンドから積極的に仕掛けていく。第1セットの第3ゲームでプリスコバがブレーク。30-0からの4ポイント連取だった。第7ゲームで2度目のブレークに成功した。
第2セットも第3ゲームでブレークを許したセレナだが、第6ゲームでブレークバック。ひとたび追いつけば、そこから怒濤の反撃を開始するのがセレナだが、この日はまだ危なっかしかった。すぐ次のゲームは一度ブレークポイントを握られながらなんとかキープ。タイブレークには持ち込んだが、4-3で迎えた自分のサーブポイントでダブルフォールト。さらにプリスコバが6-5で握ったマッチポイントでも…。まだまだ勝負はわからないという緊迫した場面だったが、ダブルフォールトという残念な幕切れに逆転劇を期待するスタンドの熱気は行き場を失った。
力を発揮しきれなかったのは、プレッシャーだったのか、疲れだったのか。セレナとプリスコバはともに前日に準々決勝を戦っている。ケルバーとウォズニアッキは中一日空けての準決勝だ。にもかかわらず、夜7時からの最初の試合がセレナとプリスコバだったことを疑問視する声もあった。また前日は、プリスコバが昼間に1時間足らずで試合を片付けたのに対して、セレナは午後7時からのナイトセッションを2時間以上戦っていた。セレナは今月35歳になる。この状況から記者会見では「疲れ」を疑う質問が出たのだが、セレナは答えた。
「疲れは問題じゃない。私はもう20年もプロでやっている選手なのよ。もし24時間で回復できないなら、もうツアーをやめるべきよね」
その代わりに、2回戦で痛めたという膝を敗因の一つに挙げた。
これでセレナの連続1位保持は186週でストップする。シュテフィ・グラフ(ドイツ)と並んでの最多タイ記録だ。単独記録に塗り替えるチャンスは、もうセレナには訪れないかもしれない。ここまで3年半を要するのだから。
記者会見ではランキングにまつわる質問をいっさい受け付けなかったセレナ。その負けん気の強さでまたいつか返り咲くのか。史上22人目の女王となるケルバーは、その後、新女王らしく記念の日をストレート勝利で飾った。
(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)