アメリカ・ニューヨークで開催されている「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月29日~9月11日/ハードコート)の男子シングルス準々決勝で、第6シードの錦織圭(日本/日清食品)が第2シードのアンディ・マレー(イギリス)を1-6 6…

 アメリカ・ニューヨークで開催されている「全米オープン」(アメリカ・ニューヨーク/8月29日~9月11日/ハードコート)の男子シングルス準々決勝で、第6シードの錦織圭(日本/日清食品)が第2シードのアンディ・マレー(イギリス)を1-6 6-4 4-6 6-1 7-5で破り、ベスト4に進出した。

 屋根の閉まったアーサー・アッシュ・スタジアムのサウンド・システムからの大きな音が試合のキーポイントを妨害し、リプレイを引き起こしたあと、マレーは道を見失い、連続7ゲームを失って、最終的に錦織とのスリルに満ちた5セットマッチも失った。

 そのゴングのような音と主審マリヤ・チチャクのリプレイの判定が錦織のカムバックにつながり、勝った理由となったか否かは不明だが、それは間違いなくこの4時間を超えるシーソーゲームの中の記憶に残る場面のひとつだった。

 この異常な出来事についてマレーは主審と、もうひとりのオフィシャルと長々と論議したが、それは彼が14ポイントのうち12ポイントを落とした時間帯に起きている。彼はセットカウント2-1でリードし、さらに第4セットの1-1から1ブレークポイントをつかんでいた。しかし、そこからそのセットを落として2-2と追いつかれ、第5セットでは0-2であとを追うことになった。

 「間違いなく、この試合に勝つこともできたと思う」と、世界2位で2012年全米優勝者のマレーは言った。

 彼はこの短い調子の低下を認めたが、2年前に決勝に進出した錦織が準決勝に進んだことを可能にした、ほかの理由に注意を向けることのほうを好んだ。

 「僕は(勝つに)十分なだけの回数、相手のサービスをブレークした」とマレー。「ただ、十分なだけサービスをキープできなかった。それが違いだった」。

 おそらく----。

 しかしマレーは、すぐに上記の判定に文句を言い、続く3ポイントを落としてゲームも失った。それから、続くエンドチェンジの際に、その前にも似たようなことが起きたがプレーは続いたと主審に言って、執念深く同じ話を蒸し返した。

 「まったく同じことが」とマレーは語気を強めて言った。「そのことはあなたに言った通りだ」。

 彼はまた大会のスーパーバイザーとも話し、「これはフェアじゃない」と言って自分の正当性を申し立てた。

 第4セットの(マレーから)1-4の場面でも、スピーカーから同じような音がした。それは、アナ・コニュ(クロアチア)対アグネツカ・ラドバンスカ(ポーランド)の女子の試合の間にも起こった。

 全米テニス協会は、『デジタル・オーディオ・サウンド・プロセッサー』の調子が悪く、ナイトセッションの前に取り替えられるだろうと言った。

 これらの不満と、ひと騒動にも関わらず、第5セットでマレーは5-4とリードした。しかし、彼はそれ以上、ゲームを取れずに終わるのである。5-5の30-30の場面でマレーはダブルフォールトをおかし、錦織にブレークポイントを献上する。錦織は体を精いっぱい伸ばしてのボレーのウィナーで、そのチャンスをものにした。

 マレーはラケットをネットに投げつけ、悪態をついた。そしてまもなく、7大会連続での決勝進出という彼のキャリア最高の快進撃が終わりを告げたのだった。

 「より先までいきたかった」とマレー。「でも今日は、そうなる運命ではなかった」。

 彼は2度目のウィンブルドン優勝、リオ・オリンピックの準決勝で錦織を倒しての2度目の金メダルを含め、ここ27試合で26勝していた。

 しかし今回は、効果的なドロップショットと最後の3ゲームでメンタルを強く保った精神力によって、錦織が勝者となった。

 「コート上はエキサイティングすぎたが、僕は冷静さを保とうと努めた」と錦織。「落ち着きを保つのは難しかった…多くのアップダウンがあったから」。

 錦織は準決勝で、第3シードのスタン・ワウリンカ(スイス)と対戦する。錦織とマレーの試合のあとナイトセッションで行われた準々決勝で、ワウリンカはフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)を7-6(5) 4-6 6-3 6-2で下した。

 もうひとつの準決勝では、ナンバーワンのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が第10シードのガエル・モンフィス(フランス)を迎え撃つ。

 マレー対錦織の試合は、第2セット3-3の場面で雨がプレーを中断させた。中断はこの試合2度目のことで、アーサー・アッシュ・スタジアムの屋根はその驟雨によって第2セットの間に閉じた。その間、20分の中断が、錦織のコーチで1989年全仏チャンピオンのマイケル・チャンにロッカールームに降りていき、錦織にアドバイスをするチャンスを与えた。

 「(あの中断は)戦略を再編成するのに大いに役立った」と錦織は言った。「試合に勝つには、何かを変えなければならなかった」。

 もしかすると、それが違いを生み出したのかもしれない。マレーはまた、屋根が閉じたインドアでプレーすることが、錦織がよりよいリターンをする助けになったと考えていた。

 実際、錦織は最後のゲームでブレークを果たして、そのセットを取っている。15本ものストロークを交わしたあとにマレーがバックハンドをネットに引っかけた瞬間、第2セットは6-4で錦織の手にわたった。

 第3セットの終わりに、優位性はマレーに戻った。錦織がバックハンドをミスし、マレーがブレークして5-4とリードを奪ったのだ。もっともそのとき、グランドスラム大会で8タイトルを誇る彼のコーチであるイワン・レンドル(アメリカ)はゲスト・ボックスで顎に手をあてて座っていたが、祝うムードを表情に出してはいなかった。

 マレーは次のゲームでサービスをキープしてそのセットを取り、セットカウント2-1としていい調子であるように見えていた。しかし、第4セット1-1の場面ですべてが変わったのである。(C)AP