専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第235回 今シーズンの女子プロツアーの賞金女王レースは、最後まで盛り上がりましたなぁ。これで、ゴルフ業界はウハウハでたまらんでしょう!――なんて、もろ手を挙げて喜べる状況では…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第235回

 今シーズンの女子プロツアーの賞金女王レースは、最後まで盛り上がりましたなぁ。これで、ゴルフ業界はウハウハでたまらんでしょう!――なんて、もろ手を挙げて喜べる状況ではありません。

 元気なのは、女子ツアーのみで、男子ツアーはジリ貧状態が続いています。加えて、アマチュアゴルファーの減少傾向が依然続いており、用具販売などは、ヒット商品以外はさほど売り上げが伸びていないそうです。

 冷静に周囲を見てみると、今のうちに何かしら手を打っておかないと大変なことになる――そういう危機感を多くの人々が抱いていることが、ひしひしと感じられます。

 ここはまず、地上波放送が激減しても、人気や収益を保持しているプロ野球を参考にして、ゴルフ界にも再発展への有効な打開策がないものか、探ってみたいと思います。

(1)プロ野球の収益モデル
 テレビ放送が激減し、莫大な放映権料を失ったプロ野球ですが、実のところ、各球団の経営はそこそこ順調です。その要因のひとつは、入場者数の増加。それに伴うグッズなど物販の売り上げが伸びているからです。

 従来、弱くて人気薄のチームは外野席がガラガラでしたが、今や下位チームでも、さまざまな工夫をこらして観客を呼び、大入り満員ということが多いです。ひと試合平均で3万人ほど入って、1年でホーム開催は70試合くらいあるわけですから、どんだけすごい収入になるんでしょう。

 地上波のテレビ中継がほぼ消えてからほどなくして、広島東洋カープでは”カープ女子”が台頭し、その流行りに乗って地域密着の応援で大盛況です。

 横浜DeNAベイスターズにおいては、スタジアムのバックネット裏の屋上に『ベイディスカバリーBOXシート』を新設。みんなで(特製の包み付きの)お弁当を広げて、わいわい騒げるシートが好評となっています。

 他にも、『プレミアムテラス』や『リビングBOXシート』など、豪華でくつろげるスペースがてんこ盛り。もはや、野球観戦は名目で、それらの席に行きたいがために、球場に行く、という本末転倒なことまで起きているようです。

 結局、野球って「2アウト満塁。カウント2-3」みたいな時に集中して見ればいいわけで、あとは飲み食いしていても大丈夫なんですな。

 ゴルフも、選手がショットやパットを打つ以外は結構時間があるわけで、こうした野球場における工夫を、うまくゴルフ場にも転化できないものか、と思っています。

(2)ゴルフ場への観客動員
 なんで、ゴルフの試合に人が来ないのか?

 そもそも会場が僻地にあり、交通の便が悪いからです。だから、都会の交通の便がいいところにコースを造ればいいんですが、それはさすがに現実的ではありません。ならば、近郊のコースを改造して、スタジアム化したら、どうでしょうか。

 アメリカ・アリゾナ州にあるTPCスコッツデールは、PGAツアーのフェニックスオープンの開催地として有名です。トーナメントが開催される1週間の総入場者数は、60~70万人と言われています。

 圧巻なのは、同コースの象徴でもある16番ショートホール。360度観客席に囲まれていて、まさに野球のスタジアムのよう。そこだけで、およそ2万人を収容できると言われています。

 このレベルは大げさでしょうが、交通の便がよろしい地域に、4日間で10万人ぐらい集客できるコースを造ってみては? と思うのです。

 ちなみに、日本のツアー最高入場者数(4日間)は、1992年の中日クラウンズで、6万1530人です。その数字を見れば、10万人の入場者数も、決して不可能じゃないですよね。

 簡易施設のスタジアムを常設し、その施設内には売店やレストランがあって、水洗&洋式&エアコン付きのトイレが100台ほど設置してあるといいでしょうね。

 そして、日本のツアーなら、男子、女子、シニアの3大ツアーのトーナメントを、毎年必ず1試合は開催する。あとはコンサートなどのイベントにも使ってもらい、スケジュールが空いている時に、一般に開放すれば問題ないでしょう。

 こういうコースを造るか、立地のいいどこかのコースを改造すれば、そのコースの認知度が上がり、プロトーナメントの動員数もアップするんじゃないですか。




ゴルフで格闘することはありませんが、これくらいの臨場感があったら面白いでしょうね

(3)熱心に試合を見ない人を呼ぶ
 ベイスターズのホームとなる横浜スタジアム、通称「ハマスタ」が集客に成功したのは、ある意味、熱心に試合を見ない人を呼んだから。家族連れや女子会仲間がBOXシートでワイワイやるのは、賑やかで楽しそうです。

 ゴルフにおいても、何回かVIP席で観戦したことがありますが、多くの方々は、さほど試合を見ていません。みんな、「どうもどうも」「ようこそ、いらっしゃいました」と社交をやっているケースが多いです。

 かつて、F1のモナコグランプリを、モナコのマンションで見るパーティーの模様がテレビで映っていましたけど、誰も目の前の公道レースを見ていませんでした。むしろ、窓を開けて「うるさいわね」くらいの勢いでしたから。実際、F1はスピードが速くて、ヘアピンカーブじゃないと、肉眼で視認できませんし。

 だから、そのパーティーでは、3割ぐらいの人がテレビ観戦していて、あとはモナコグランプリをネタに、シャンパンを飲んで騒いでいる、そんな姿が映っていました。

 というわけで、ゴルフ場にも、テレビモニターがあるプレハブのVIPルームをいくつか設置して貸し出せばいいんです。先に触れたゴルフ場内に常設するスタジアムにも、家族や仲間たちで楽しめるBOXシートやVIPルームを設置するといいでしょうね。そうすれば、お金がたくさん入ってきます。

 要するに、お金を落とすセレブ客は、緑の多い場所で、シャンパンを飲んで、美味しいものを食べて、「シブコもなかなかがんばってるじゃん」と、上から目線でモノを言って、日がな一日楽しめればいいんです。

 とにかく、セレブ感をくすぐる施設を作って、ゴルフを真剣に見ないお客さんをたくさん集めたもの勝ちっていうことですよ。

(4)キャラクター&ブランド
 その昔、中学生の時、アーノルドパーマーの傘マークがついたベストを着ていた記憶があります。木村少年が、生まれて初めてゴルフブランドらしきものと接触したのです。

 あの頃のゴルフブランドの威力は、凄いです。まったくゴルフをやらないし、ルールさえ知らない田舎の少年にベストを買わせるのですから。

 そう思うと、今の中学生がゴルフブランドの服を買うか? というと、都会でもほとんどないでしょ。

 今後、トーナメント会場では、そうしたブランドショップやグッズコーナーを充実させ、積極的に販売していくことも大事でしょう。コース周りをイベント会場化し、そこに有名選手着用のポロシャツや、ブランド化したタオルやキャップなどを豊富にそろえて販売するんです。ゴルフ系タレントを総動員して集客し、楽しいお祭り広場みたいになれば、なおさらいいでしょうね。

 野球もそうですが、実は音楽業界も新たな試みによって収益維持を図っています。

 音楽業界は、CDがまったく売れず、さらにダウンロードも、ストリーミングサービスにやられて、儲からないビジネスとなりつつありました。そこで、同業界がやったことは何か?

 ひとつは、フェスです。簡単に言えば、コンサートをイベント化して、行けば楽しいと思わせて、そこでお金を払ってもらうことにしたのです。

 ゴルフも、トーナメント専用コースを造って、フェスのようにして、楽しい一日を過ごしてもらう。そして、ときどき試合も見る。そんな感じで盛り上がるビジネスモデルを誰か作ってくれないですかね。

 やっぱりここは、YouTubeで1000億円を記帳した通帳を見せびらかせていた前澤(友作)さんの登場ですかね。そんなことを期待しています。