2019年ATPアワードのカムバック賞は、怪我から復帰し再度トッププレーヤーとしての存在感を示した選手に贈られる。今年ノミネートされたのはアンディ・マレー(イギリス)、アンドレイ・ルブレフ(ロシア)、ジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス…

2019年ATPアワードのカムバック賞は、怪我から復帰し再度トッププレーヤーとしての存在感を示した選手に贈られる。今年ノミネートされたのはアンディ・マレー(イギリス)、アンドレイ・ルブレフ(ロシア)、ジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)、スタン・ワウリンカ(スイス)の4人。受賞者は選手の投票で選ばれ、今月中に発表される。

選手名:復帰前最高ランキング/2019年最低ランキング/2019年最高ランキング/差異

アンディ・マレー:1位/503位/125位/+378

アンドレイ・ルブレフ:31位/115位/22位/+93

ジョーウィルフリード・ツォンガ:5位/239位/29位/+210

スタン・ワウリンカ:3位/68位/16位/+52

アンディ・マレー

元世界1位のマレーは、慢性的な股関節の痛みが原因で2017年の後半は大会に出場できず、2018年も6大会に出場するにとどまった。2019年の「全豪オープン」の頃にはマレーは感情的になり、このまま続けていく自信がないと認めた。

マレーは「もう20ヶ月も激しい痛みと戦っているよ…(僕のチームにも)このまま続けられないと伝えたんだ。終着点が必要だと。これまで、痛みがいつなくなるか分からないまま、ただプレーし続けていたから」と語った。「ウィンブルドン」までプレーすることを望んでいたが、「全豪オープン」でのロベルト・バウティスタ アグート(スペイン)との記憶に残る激戦の後には、「もし今日が最後の試合だとしたら、素晴らしい最後になったよ」と述べていた。

2週間後に人工股関節手術を受けた。マレーが「素晴らしい、完全に人生を変えた」と表現した手術から5ヶ月後、「ATP500 ロンドン」で実戦に復帰、フェリシアーノ・ロペス(スペイン)と組んだダブルスで優勝。8月には「ATP1000 シンシナティ」でシングルスに復帰。リシャール・ガスケ(フランス)に敗退したものの、復活に向けてさらに一歩踏み出し、スペイン・マヨルカで行われたチャレンジャー大会「ラファ・ナダル・オープン」、そして「ATP500 北京」での準々決勝進出を含むアジアシリーズの3大会、それぞれで勝利を重ね自信を取り戻していった。

マレーは2019年の締めくくりとして「ATP250 アントワープ」決勝でワウリンカに3-6、6-4、6-4で勝利し、2017年の「ATP500 ドバイ」以来となったシングルスでの優勝を遂げた。試合後、マレーは「(この優勝には)すごく大きな意味がある。ここ数年はすごく大変だったから…今日は素晴らしい試合だったと思うよ。この位置に立てると思っていなかったから、とても嬉しい」と語った。

アンドレイ・ルブレフ

2018年初め、ルブレフの将来は明るく見えた。シーズン開始直後「ATP250 ドーハ」で決勝に勝ち進んだ。ガエル・モンフィス(フランス)に敗退したが、2月にはランキングを自身最高の31位にまで上げた。しかしその2ヶ月後、腰の疲労骨折治療のため病院で毎日3時間磁気療法を行い、自宅で昼食を食べ、ソファーに座って過ごしていた。

やがてコートに復帰し、「ATP500 ワシントン」「Next Gen ATPファイナルズ」で準決勝に進出しても、彼はまだ途方に暮れていた。「まるで自分がそこにいないみたいな感じだった」と彼は表現した。「自分が、怪我をする前のうまくプレーできていた過去にいるように感じていた。今この瞬間、ここで力を出すという精神的な部分を回復するのに数ヶ月かかったよ」

2019年の1月には、ルブレフは100位圏外へと落ちてしまった。3月のマスターズ戦、「ATP1000 インディアンウェルズ」と「ATP1000 マイアミ」の両方で予選から出場して本戦3回戦まで勝ち上がり、ランキングを再び上げ始めたが、彼のテニスが本当に復活したのは今年の後半になってからだった。「ATP500 ハンブルグ」では世界4位のドミニク・ティーム(オーストリア)を破り決勝に進んだ。その後の「ATP1000 シンシナティ」では、彼の若いキャリア最大の勝利とも言える一戦があった。準々決勝に駒を進める途中、過去7回の優勝を誇るロジャー・フェデラー(スイス)をストレートで破ったのだ。

ランキング50位内に返り咲いたルブレフは、「ATP250 ウィンストンセーラム」と「ATP250 サンクトペテルブルク」で準々決勝に進み、さらにランキングを上げていった。「全米オープン」では初戦でステファノス・チチパス(ギリシャ)と対戦し、再びトップ10選手に対する勝利を上げ、4回戦進出。10月には地元開催の「ATP250 モスクワ」で優勝し、22歳の誕生日をトロフィーで祝った。翌日、ランキングは22位となり、自己最高を更新。「言葉にできない。ここでの勝利が僕にとってどんな意味を持つのか、表現する言葉が見つからないよ」と語った。

ジョーウィルフリード・ツォンガ

元世界5位のツォンガは、2018年11月に過去12年間で最低となる262位まで順位を下げた。様々な怪我に悩まされ、2018年初めの2大会に出場した後、4月に左膝の手術を受けた。9月に復帰後も6試合中1試合しか勝つことができなかったが、明るい側面を見れば、そのうち5試合は最終セットまでもつれ込んでいた。

しかしツォンガは、2019年シーズン最初の大会で、今もなおトッププレーヤーであることを見せつけた。「ATP250 ブリスベン」では、タナシ・コキナキス(オーストラリア)とアレックス・デミノー(オーストラリア)を破り、準決勝まで勝ち進んだ。2月には「ATP250 モンペリエ」決勝でピエール ユーグ・エルベール(フランス)とのフランス人対決を制し、15ヶ月ぶりの優勝を遂げた。「ここモンペリエでの優勝は僕にとって素晴らしい瞬間だった…戻ってくるまで多くの努力をしてきたので、嬉しいご褒美だ。このレベルで戦い続けられたらと思うよ」とツォンガは語った。

ツォンガは、2007年以来初めてチャレンジャー大会に出場し、成果を上げた。「チャレンジャー大会でプレーすることで、また自分がテニスをする理由を見つけることができたよ」と語り、5月にボルドーの大会で準々決勝まで勝ち残って、ATPランキングを100位以内まで上昇させた。「条件は常に(ツアーレベルの大会より)厳しい。常に戦いがある」

9月には「カシス・チャレンジャー」と「ATP250 メス」の優勝を含む13試合連続勝利を収めたが、連続勝利は「オルレアン・チャレンジャー」の準決勝で途絶えた。地元の「ATP1000 パリ」でも輝きを見せ、準々決勝に勝ち進んだ。ラファエル・ナダル(スペイン)に敗れたものの、シーズン30勝以上を達成し、トップ30への返り咲きを果たした。

スタン・ワウリンカ

2017年8月に膝軟骨の治療のため2回の手術を受けたワウリンカ。昨シーズンはランキングを263位から66位まで戻すことができた。しかし元世界3位のワウリンカは、自分の実力を信じ、いつか自分のベストなテニスを見つけることができると繰り返し語っていた。

今年、彼の忍耐と楽観論は報われることとなった。34歳のワウリンカはATPツアーの2大会で決勝に、そしてグランドスラム2大会で準々決勝まで勝ち進み、トップ20に復帰、世界16位でシーズンを終えた。

2月の「ATP500 ロッテルダム」では、2017年の「全仏オープン」以来20ヶ月ぶりの決勝進出を果たした。決勝ではガエル・モンフィス(フランス)に敗れたが、ワウリンカは「すごく安心した」と語った。「手術後初めての決勝だったので、トッププレーヤーたちに僕が今もこのレベルで戦えることを示せたのは、とても重要なことだった」10月に「ATP250 アントワープ」でまたも決勝まで勝ち進んだが、同じくカムバック賞にノミネートされたマレーに惜しくも敗れた。

2019年は、トップ10選手相手に4勝6敗の成績を残した。その中には「全米オープン」の準々決勝へ進む途中で、当時世界1位だったノバク・ジョコビッチ(セルビア)からもぎ取った勝利も含まれる。「全仏オープン」では世界6位のステファノス・チチパス(ギリシャ)を5時間を超える2019年屈指の名勝負の末破り、ベスト8に勝ち残った。さらにワウリンカは同大会中に、通算500勝を達成した9番目の現役選手となり、大きな節目を祝った。「これで終わりじゃない」と彼は言った。「このまま頑張って600勝を目指すよ!」

(テニスデイリー編集部)

※写真はマレー(左上)、ルブレフ(右上)、ツォンガ(左下)、ワウリンカ(右下)

(Getty Images)