チャンピオンズリーグ(CL)のグループリーグが終了、決勝トーナメントを戦う16チームが出揃った。 その内訳はスペイン4(レアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリード、バレンシア)、イングランド4(リバプール、マンチェスター…
チャンピオンズリーグ(CL)のグループリーグが終了、決勝トーナメントを戦う16チームが出揃った。
その内訳はスペイン4(レアル・マドリード、バルセロナ、アトレティコ・マドリード、バレンシア)、イングランド4(リバプール、マンチェスター・シティ、トットナム・ホットスパー、チェルシー)、イタリア3(ユベントス、ナポリ、アタランタ)、ドイツ3(バイエルン、ライプツィヒ、ドルトムント)、フランス2(パリ・サンジェルマン、リヨン)となる。
スペイン、イングランド、イタリア、ドイツ、フランスというUEFAリーグランキング1位から5位までのクラブが、ベスト16の枠内に順当に収まることになった。このところのCLの傾向だが、風が吹かなすぎて、正直、あまり面白くない。
最終節でリバプールに敗れたものの、チャンスを演出した南野拓実(ザルツブルク)
昨季、あと一歩で決勝進出を逃す大健闘を見せたアヤックス(オランダのリーグランキングは11位)は、最終節でバレンシアと対戦。引き分け以上でグループH2位以内が決まる段までこぎ着けていたが、そこで0?1と敗れ、チェルシー、バレンシアという実了派との三つ巴の争いから抜け出すことができなかった。
今季、フレンキー・デ・ヨングとマタイス・デ・リフトをそれぞれバルセロナとユベントスに引き抜かれたものの、補強や新星の台頭で、戦力ダウンの幅を最小限にとどめたという印象だった。最後のバレンシア戦もアンラッキーな要素が強く、健闘虚しく敗退した格好だ。
グループリーグの組み合わせが、ランキング上位国に有利に設定されている大会の規定を恨めしく思わずにはいられない。ハキム・ジエク、ドニー・ファン・デ・ベーク、アンドレ・オナナなど、ビッグクラブから狙われている選手はまだまだいる。アヤックスはこのままCLの舞台からフェードアウトしていくのか。
ほぼ無風に終わったグループリーグ。とはいえ、その中には新顔の姿も見て取れる。ライプツィヒとアタランタだ。ともにクラブ史上初となる決勝トーナメント進出である。しかし、こう言っては何だが、ランキング上位国の恩恵で組み合わせに恵まれたことも事実だ。ほかのランキング上位国のチームが複数、同じグループにいなかった。アヤックスとは異なる優位な立ち位置が、この2チームには与えられていた。
最後まで2位争いがもつれる展開になったのは、アタランタが2位に滑り込んだC組、アトレティコがレバークーゼンに競り勝ったD組、ザルツブルクがナポリを逆転する可能性がゼロではなかったE組、そしてドルトムントとインテルが争ったF組となる。
健闘したのはF組のザルツブルクだ。ナポリがゲンクに敗れ、自らがリバプールに勝利すれば、2位に滑り込む可能性があった。ホームでのリバプール戦の結果は0-2で、チームは敗退したが、南野拓実はゴール前で惜しいチャンスを演出するなど、それなりに活躍した。欧州各紙の採点を見ても、ザルツブルクのアタッカー陣の中で、南野は最上位に推されていた。
CLにおける活躍は、選手の価値を高めることにつながる。来季、ザルツブルク以上のクラブから引きがあったとしても不思議はない。ザルツブルクにとっては惜しい話だが、南野個人にとっては悪い話ではない。
一方、グループリーグで強さが目立ったチームはといえば、圧倒的な成績を収めたチームはバイエルンになる。唯一の6戦全勝で、得点24、失点5(得失点差+19)も、他の追随を許さない断トツの成績だ。昨季の準優勝チーム、トットナムと戦った最終節(ホーム)でも、その爆発力をいかんなく発揮。スコアこそ3-1ながら、内容的には2-7で大勝したアウェー戦と同様の開きがあった。
スピーディーで多彩。右からも左からもバランスよく攻撃したバイエルン。ブンデスリーガでは現在7位と低迷しているが、スパーズ相手に2試合通算10対3で大勝する姿に、潜在能力の高さを見た気がする。
マウリシオ・ポチェッティーノからジョゼ・モウリーニョに監督を代えたトットナムは、モウリーニョらしさが加味され、ますます堅守速攻型になった印象だ。だが、欧州一を狙うには、スタイル的に古い気がする。ビッグクラブを向こうに回し、1勝はできても、2勝、3勝と勝利を重ねることは難しいのではないか。
昨季、優勝したリバプールには安定感を感じる。決勝トーナメントに備え、本気を出していないと見るか、昨季から横ばいとみるか、微妙なところだが、悪い方向には進んでいない。
マンチェスター・シティはその逆だ。あくまでも現段階だが、横ばいというより下降線を辿っているように見える。欧州一に向かう勢いというものを見て取ることができない。
レアル・マドリードとバルセロナの2大巨頭は、昨季より右肩上がりしている。現状、バイエルン、リバプール、そしてA組でレアル・マドリードを抑えて首位通過したパリ・サンジェルマンと接近したレベルにあると見る。
選手個人に目を当てると、若手の台頭が目立つ。それも20歳以下の若手が各チームにゴロゴロいる。
筆頭はアトレティコのジョアン・フェリックスだ。10月のバレンシア戦で故障すると、チームは低迷。その存在感の大きさがあらためて浮き彫りになった。CLに先発復帰を果たしたのは、突破がかかったグループリーグ最終戦(ロコモティブ・モスクワ戦)。2-0の勝利とその復帰が深い関係にあることを印象づけた。11月に20歳になったばかりだが、アトレティコの浮沈の鍵を握る選手になっている。
バイエルン対トットナム戦で、最も光っていたと言いたくなる活躍を見せたのも10代の若手だった。バイエルンの左サイドバック、アルフォンソ・デイビス(19歳)だ。左サイドからスピーディーな攻撃を再三仕掛け、スパーズDFを大いに慌てさせた。相手に向かっていく姿勢に目を見張るものがあるカナダ人SBだ。
バイエルンはさらに終盤、18歳のオランダ人FWもデビューさせている。ジョシュア・ザークツィー。パッと見ただけで、かつてのルート・フリットを彷彿とさせる大物感を抱かせたものだ。スパーズで唯一のゴールを奪った選手も、この日がCLデビュー戦となる19歳のイングランド人、ライアン・セセニョン(19歳)だった。
マンチェスター・シティのCBとして、交代出場ながら最終節のディナモ・ザグレブ戦でCLデビューを飾ったイングランド人、ティラー・ハーウッド・ベリスに至っては、まだ17歳だ。バルサのアンス・ファティ(バルセロナ)も17歳。ロドリゴ・ゴエス(レアル・マドリード)は18歳。そのほかにも10代の若手がビッグクラブにゴロゴロいる。この低年齢化は、かつてないムーブメントと言える。久保建英は、出るところに出れば、稀な存在とは言えないのだ。
ベスト16の顔ぶれには特段、新鮮味は感じられないが、選手は別だ。若手からベテランまでが入り乱れた、混沌とした時代を迎えている。決勝トーナメントの大きな見どころのひとつと言えるだろう。