8月31日にニューヨークで行われたメッツ-マーリンズ戦で、大リーグ最年長選手と最年長野手による今季初の「長寿対決」が実現した。■メジャー最年長のコロンとイチロー、現地でも注目された「高齢対決」 8月31日にニューヨークで行われたメッツ-マー…

8月31日にニューヨークで行われたメッツ-マーリンズ戦で、大リーグ最年長選手と最年長野手による今季初の「長寿対決」が実現した。

■メジャー最年長のコロンとイチロー、現地でも注目された「高齢対決」

 8月31日にニューヨークで行われたメッツ-マーリンズ戦で、大リーグ最年長選手と最年長野手による今季初の「長寿対決」が実現した。42歳のイチロー外野手(マーリンズ)と、43歳のバートロ・コロン投手(メッツ)。イチローにとっては1年目の2001年から対戦を重ね、通算打席数はジョン・ラッキー(カブス)に次いで2番目に多い相手。試合前の時点で通算106打数29安打、打率2割7分4厘という数字が残っていた。

 ESPNのメッツ番アダム・ルービン記者は「2人合わせて86歳48日。これは2012年にジェイミー・モイヤー(49歳)がヘンリー・ブランコ(40)と対戦して以来の高齢対決」とツイート。年齢を足すことに意味があるかは別として、この2人の対決に米メディアも少なからず注目していた。

 体型やプレースタイルが変わらないイチローに対し、風貌や投球術を変化させながらスターターとして生き残っているコロン。一見対照的なプロセスを歩んでいるように見える2人だが、キャリアを重ねるにつれて共通項も増えてきたようだ。

 コロンは中継ぎとして今季の契約を結んだが、投手陣に故障者が続出する状況で先発として28試合(中継ぎは1試合)に登板し、チーム最多の13勝をマーク。8月26日のフィリーズ戦で通算230勝目を挙げた。かつて150キロ台中盤の剛腕としてならしたコロンだが、140キロ前後の速球を微妙に動かす制球力を武器に巧みに打者を打ち取るスタイルに変わった。

 対するイチローも4番目の外野手として開幕を迎えたが、外野のレギュラートリオの代役起用や代打などチーム状況に応じた臨機応変な起用法に対応し、不可欠な戦力として活躍。8月7日には史上30人目となる大リーグ通算3000安打を達成した。安打ペースは全盛期に劣るが、強靱でしなやかな肉体を維持し、走攻守で高いレベルをキープしている。

■特別な空気が漂う両者の対決、年齢の「足し算」は来年も継続されるか

 50歳まで現役続行を希望するイチローに対し、コロンも来季以降の現役続行に意欲を示す。一つの目標としてドミニカ共和国出身メジャーリーガーの最多勝(243勝)という節目の数字がある。「これをクリアできれば辞めても満足」と話す。その先には中南米系メジャーリーガー最多勝(245勝)が迫っている。イチローにとっての日米通算安打でのピート・ローズ超えと大リーグ3000安打がそうだったように、目の前にある節目の数字がモチベーションになっている。

 そしてまた、メッツという球団の居心地の良さも現役を続ける上で重要なファクターとなっているようだ。昨季終了後にフリーエージェントとなった右腕は、メッツと1年の再契約を結んだ。この時点でチームの先発枠がほぼ固まっていたが、あくまで中継ぎ兼6番目の先発投手という役割を引き受けてまで残留を決めた。イチロー同様にチームメートから愛されている右腕は「最高のチームメートともう一度ワールドシリーズを目指したい」という希望があったから。節目の記録とプレーする環境面を励みにする姿勢は、両者に共通した点と言える。

 イチローもコロンも、お互いのことを多く語らないが、マウンドで対峙すれば特別な空気が漂う。約1年ぶりの対決では、イチローが第1打席で140キロのツーシームを右前に鋭くはじき返した。その後の第2打席は三飛、第3打席は一飛に倒れ、3打数1安打。ここまでのところ、両者ともに来季も契約を勝ち取るだけの成績を残している。2人の対決はどこまで続いていくのか。年齢の「足し算」が来年も継続されることを願うばかりだ。

伊武弘多●文 text by kouta Ibu