思い出されるのは昨年の甲子園ボウル。自陣ゴール前でパントブロックを受け、早大は完全に流れを失った。「苦い記憶」と語るあの日から、K/P髙坂將太(創理3=東京・国立)は雪辱に燃えている。今季は関東大学秋季リーグ戦(リーグ戦)の立大戦では55…

 思い出されるのは昨年の甲子園ボウル。自陣ゴール前でパントブロックを受け、早大は完全に流れを失った。「苦い記憶」と語るあの日から、K/P髙坂將太(創理3=東京・国立)は雪辱に燃えている。今季は関東大学秋季リーグ戦(リーグ戦)の立大戦では55ヤードのFGを決めるなど、成長を遂げている。そんな髙坂に甲子園への意気込みは伺った。


「長いヤードでも絶対に決めきる」(高坂)


慶大戦の55ヤードFGを振り返る髙坂

――今シーズンはリーグ優勝を果たしたシーズンとなりましたが、どのような意気込みで臨まれていましたか

髙坂 昨年も試合に出ていたので、それを踏まえて、今年は最初の対談をした時に、「モメンタムを持ってこれるようなキッキングをしたい」と言ったんですけれど、それは本当に今シーズンずっと目指していました。昨年は機会を与えていただいてそれで出場するという受動的な感じだったんですが、今年はしっかり自分からやってやるといった気持ちでやっていました。

――その秋シーズンを振り返っていかがでしたか

髙坂 結果としては、そんなに悪くないと思うんですけど、もっとできたなと思います。特に、FGはゲームの流れとして重要な場面で外してしまったこととかがあり、甲子園では自分のFGというのは本当に全部100%決めることが、関西に勝つためには絶対に必要な事なので、しっかりこの2週間、3週間で気持ちを入れてもう1回100%で決められるようにやっていきたいと思います。

――立大戦では55ヤードのFGを決められていましたが、長い距離のFGに対する自信はいかがですか

髙坂 長いヤードになっても純粋に楽しんで蹴ろうという気持ちなので、普段の練習から長いヤードを想定して、それこそ甲子園でどんなヤードがまわってくるかもわからないので、今コーチをやっていただいている佐藤敏基さん(平28社卒=現IBM)の時も、最後にロングFGがまわってきたりだとか、今年もそうした長いヤードがいつまわってくるのか分からないので、そのようなことを常に考えて長いヤードでも絶対に決めきるといった気持ちでやっています。

――昨年と比べてFGやパントの飛距離は伸びていますか

髙坂 はい、伸びています。日々、トレーニングを積み重ねることで成長を感じています。

――法大戦では、試合開始直後にリターンTDを受けたり、昨年の甲子園ボウルがよぎるパントブロックをされたりしましたが、そのシーンについて振り返っていかがですか

髙坂 自分自身最初のリターンTDというのは初めての経験で、正直やられたときは初めてのメンタルに陥ったというか、ちょっと今までに想定していなかったことが自分の中で起きたので、その時は正直焦っていましたね。パントブロックもおっしゃった通り、甲子園ボウルに近いようなやられ方だったので甲子園の時の苦い記憶がよぎりました。やっぱり1年前の甲子園ボウルに負けたのもあのパントブロックというのが大きいと思いますし、それは自分が一番感じていたところでもあります。今回の法大戦でのミスは、あの甲子園ボウルのことを思い出させてくれたし、だからこそあのようなミスは二度としてはいけないなと改めてこの試合前に思わせてくれたので、甲子園ボウルでは、パントもミスがないようにやっていきたいなと思います。

――秋のリーグ戦でのFGの成功率は9/12という数字ですが、この数字はどのように捉えていますか。

髙坂 昨年もたしか2本か3本外しているんですけど、今年のFGのヤードというのは、オフェンスがすごい頑張ってくれてショートヤードで蹴る場面が多く、それをしっかりと決めきれて良かったと思います。秋シーズンに関してはFGでブロックされる場面もなかったので、いつも通りの状態で蹴らせてくれた鉄壁のラインズに感謝しています。外したところでいうと中大戦の2シリーズ目のFGを僕が外したてしまったんですけど、僕が決めてオフェンスがどんどんテンポにのっていく流れの中でそこを外してしまったのは、チームのモメンタム的に良くないことなので1つ1つ絶対に決めていけないなというふうに思います。

――今年見つかった自身の課題、そして収穫がありましたらお願いします

髙坂 1つ1つ細かい技術面での課題はあるので、でそれは日々コーチと一緒に取り組んでやっています。試合勘といったところも常に甲子園を意識しているというのは自分の中であります。メンタル面の課題のところでいうと、法大戦でメンタルが少し崩れてしまったりだとか、春シーズンの時とかも立命大戦でパントブロックのようなものを受けて、それに対して自分が動揺してしまい、その後の最後のウイニングFGを外してしまったりだとか、そうした気持ちを整えることの重要性は試合の中で経験させていただいているので、本当に最後甲子園に向けてメンタル面もベストな状態で臨まないといけないなというのが課題です。収穫は1つ1つの技術がやっぱり自分の中で向上しているというのが最近感じていて、秋シーズン中だったんですけれど、富士通フロンティアーズの西村さん(K/P西村豪哲)と一緒に練習させていただく機会があって、その時とかは今までの自分にはない技術やメンタルを教えていただいたりして、それがしっかり自分に身についているなというふうに感じているので、秋シーズンの自分が一番成長したと感じた部分はそこかなと思います。

――西村選手に教えてもらったことは具体的にはどのようなことですか

髙坂 技術的なこともメンタル的なことも両方教えていただいて、西村さんは多くの経験を積んでいる方なので、特にメンタル面で教わることはすごく大きかったですね。

「自分のキックのことだけ考えて最高の準備をするようにしています」(高坂)


試合展開はあまり見ず、自身の出番に備えるという髙坂

――秋シーズンからホルダーがQB宅和真人選手(政経3=東京・早大学院)からQB吉村優選手(基理3=東京・早実)に代わりましたが、違いを感じることはありますか

髙坂 単純に2人はどちらとも上手なんですが、自分から見てシンプルに吉村がうまかったので、吉村にしています。

――やはりホルダーは選手によって違ってくるものなのですか

髙坂 傾きだとかスピードだとかホルダーに求めるものは色々あるのですが、そのような中で吉村はいつも完璧な状態で置いてくれているのでそこは信頼しています。宅和ももちろん完璧なので、この2人はホルダーとして特に信頼しています。

――試合中はプレーをしていない時間のほうが長いと思いますがその時間の中ではどのような準備をされていますか

髙坂 あまり僕は試合中にオフェンスやディフェンスを見ないようにしています。ずっとベンチで歩いたりだとか、いい意味で何も考えないだとか本当に自分のキックのことだけ考えて最高の準備をするようにしています。

――キックは風や天候に左右されると思うんですが、何か工夫されていることはありますか

髙坂 その日に合わせてということはないのですが、FGであったらちょっとエイミングをずらしたり、パントだったらちょっと落とし方を変えたりだとか少し変えたりすることはあるのですが、基本的にはベースの自分の中の理想のかたちがあるので、そのかたちで蹴るようにしています。

――キッカーというポジションは点を取るだけでなく、パントやキックで陣地を取る、つまり数字に表れないかたちで試合の流れを引きつけるのが役割ですが、試合の中でキッカーというポジションの重要性というのはどのように捉えていますか

髙坂 僕が出てくる、キックオフとパントとFGという場面というのは試合において多くはなくて、だからこそ少ない機会でしっかり仕事をやりきるといったことが大事だと思っています。キックオフだったら試合の開始だとか点を取った後なのでキックでチームを勢いづけ、モメンタムを持ってくるために、1ヤードでも止めることが結果的にディフェンスにいい流れを持ってくることに繋がりますし、パントも1ヤードでも多く挽回することが求められていると思います。FGだったら100パーセント決める、キックオフであったら1ヤードでも奥に蹴る、パントでも1ヤードでも奥に蹴るという、完璧に仕事をやってチームの流れを壊さず、しっかりチームに流れを持ってくるといったところですね。

――昨年の甲子園ボウルを振り返っていかがでしたか

髙坂 鮮明に覚えているのがパントブロックですね。あの時にあの舞台に立ってパントブロックをされて、そのあとオフェンスがずっと攻めないといけないというふうになってFGも蹴る機会がなかったし、後はずっと試合の外に立ってグラウンドを眺めているだけという感じだったと思います。本当に、パントブロックをされたという思い出しか自分の中にはないです。気持ちとしては、昨年はあまりやってやろうといった感じではなくて、正直シーズンを通して試合に出場するのは1年目であったので、先輩の肩を借りて自分ができるだけのことを精一杯でやろうといった気持ちでした。

――2015年の立命大との甲子園ボウルでは、試合の最後に52ヤードのFGを決めきれず27-28の敗戦となった苦い経験が早大にはあります。キックが試合の勝敗を大きく分けてくる場面も想定されますが、プレッシャーなどは感じられていますか

髙坂 そのFGを蹴ったのが今僕のコーチをしていただいている佐藤敏基コーチなのですが、もし仮にそういった場面がまわってきたとしたらそれを決めることこそが、今佐藤コーチに教えていただいていることの使命だと思います。自分でもその場面の動画を見て感じるものは多くあって、もし僕が仮にこういった場面になった時に決めきることが、早稲田の歴史を変えるためには絶対に必要だと思うので、そういう場面のためにもしっかり準備万端にしていきたいなというふうに思います。

――ご自身の注目してほしいところはありますか

髙坂 やっぱりFGですよね。僕がチームを勝たせるには、FGを100パーセントしっかり決めきるといったところが必要条件だと思うのでそこを見ていただけたらなというふうに思います。パントもしっかりチームの流れを崩さないように、もちろんパントブロックをされないというのがは絶対ですし、しっかり1ヤードでも奥に蹴り、ディフェンスに良い流れを持っていきたいと思います。

――昨年はチームとしても個人としても悔しい思いをされたと思うのですが、今年の甲子園にかける思いはいかがですか

髙坂 今年はキッキングユニットというところに自分も主体的に関わっていて、だからこそ昨年キッキングでやられたので今年こそはそれで借りを返してやると自分は思っています。自分はしっかり完璧な仕事をして、オフェンスには点を取ってもらって、ディフェンスにもしっかり止めてもらってというふうに、早稲田全体で、早稲田のオフェンス、ディフェンス、キッキングが全部噛み合ってしっかり甲子園で勝てるようにしたいと思います。

――最後に甲子園ボウルに向けた意気込みをお願いします

髙坂 関西を倒して早稲田の歴史を変えられるように頑張ります!

――ありがとうございました!


甲子園ボウルへの意気込みを色紙に書いてくださりました!

(取材・編集 小野寺純平 写真 黒田琴子)

◆髙坂將太(こうさか・しょうた)
1997(平9)年12月11日生まれ。178センチ、80キロ。東京・国立高出身。創造理工学部3年。K/P。55ヤードのFGを決めるなど、昨年の悔しさをばねに大きく成長を遂げている髙坂選手。甲子園ではキックで流れを持ってくる、髙坂選手の蹴りに注目です!