2019年を振り返って、WTAが「今年のベストマッチ」を発表。グランドスラム部門の1位には、大坂なおみ(日本・日清食品)がペトラ・クビトバ(チェコ)に劇的勝利を飾った「全豪オープン」決勝戦が選…

2019年を振り返って、WTAが「今年のベストマッチ」を発表。グランドスラム部門の1位には、大坂なおみ(日本・日清食品)がペトラ・クビトバ(チェコ)に劇的勝利を飾った「全豪オープン」決勝戦が選ばれた。

2019年グランドスラム部門ベスト5

1位:「全豪オープン」大坂なおみ対ペトラ・クビトバ

2位:「全豪オープン」セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)対シモナ・ハレプ(ルーマニア)

3位:「ウィンブルドン」カロリーナ・プリスコバ(チェコ)対シェイ・スーウェイ(台湾)

4位:「全米オープン」ビアンカ・アンドレスク(カナダ)対エリース・メルテンス(ベルギー)

5位:「全仏オープン」アシュリー・バーティ(オーストラリア)対アマンダ・アニシモワ(アメリカ)

運命の決勝

2019年最初のグランドスラム「全豪オープン」のタイトルをかけて、大坂とクビトバが初めて対決。2人はどちらも、それまで四大大会の決勝戦で負けたことがなかった。また大坂は、自身初のグランドスラム優勝を成し遂げた2018年の「全米オープン」から、グランドスラムで13試合連続勝利中だった。

対するクビトバは、2011年と2014年の「ウィンブルドン」で2度の四大大会優勝を果たしていた。だが彼女は、強烈なサーブを叩き出す左手を2016年12月に自宅に侵入した強盗のせいで負傷しており、この試合が復帰後初のグランドスラム決勝だった。また、この試合の勝者は世界ランキング1位の座を手に入れることも分かっていた。それはどちらにとっても初めての出来事であった。

大坂は出だしから好調で、激しい戦いではあったもののストレート勝利でグランドスラム連続優勝を達成するかに見えた。第1セット、両選手ともサービスゲームを全てキープ。だがタイブレークで大坂がクビトバを制して、セットを奪った。

第2セットでは、大坂はゲームカウントを0-2と出遅れたが猛反撃し、5-3に。試合時間1時間半後、クビトバのサービスゲームで、トリプル・マッチポイント(3回チャンスがあるマッチポイント)を掴んだ。ところが鋼のメンタルを持つクビトバはその3回のチャンスをことごとく阻み、5-5に戻した。徐々に苛立ちを募らせる大坂はエラーが増え、それに乗じたクビトバが連続4ゲームを奪い第2セットを取った。その最後のポイントは、大坂のダブルフォールトであった。

勢いに乗ったクビトバが、そのままロンドンのグラスコート以外での初メジャータイトル獲得なるかに見えた。だが最終セットに入ると、大坂は素早く失意から立ち直り、21歳の年齢に似合わぬ切り替えを見せた。重要なポイントでバックハンドを決めて相手のサービスをブレークし2-1とした。それ以後クビトバはブレークをゆるさなかったが、相手のサーブをブレークできず、大坂は90%近い確率でファーストサーブでのポイントを取り、一度だけあったブレークポイントも凌いだ。結局あの一回のブレークが、この両者ともに完璧に近いプレーをした試合の勝敗を決めたことになる。結果、大坂が7-6(2)、5-7、6-4で優勝した。

2人のコメント

大坂は、「(第3セットの初めは)私はロボットみたいになっていた。ただ自分に与えられた指令を実行していたの。これまでの人生でずっと練習してきたことを黙々とやっていただけで、いろんなことに反応して余計なエネルギーを使うことをしなかった。でも、終わりが近くなって来た時、これが意味していることの重大さを考えるようになったの。だから、また“カモーン”って叫び始めたんだと思うわ」と語った。

外からは、彼女が2回のグランドスラム優勝者になるまで早かったように見えるかも知れないが、彼女は「ここまで来るのに、ものすごい努力をしてきた。誰もがこのレベルにとどまるために、どれだけの犠牲を払っているか知っている。その時間や努力を考えると、早いとは感じないないわ。むしろ長かったと感じてる」と話している。

そしてクビトバは「この負けはとても辛いけれど、自分がひどいプレーをしたとは思っていないの。思っているのは、もう一回か二回、もっと攻撃的に攻めれば良かったかも知れないと思うだけ。第2セットは本当に粘り強く戦ったから、自分に誇りを持てるわ。そして第3セットは、そう、一回のブレークだけ。それがテニスってものなのよね。彼女は本当に強い。結果を出している。“全米オープン”で勝ち“全豪オープン”で勝った。すごいことだわ。彼女がすごい選手だってことは確かよ」とコメント。

「以前のようなテニスのレベルに戻りたかった」と、怪我から再帰した彼女は言う。「それがどんなに難しいか分かっているわ。私の左手は100%じゃない。そして、これからも100%になることはないの。それが現実。だから、最小から最大を生み出す努力をするわ。今はいい感じだと思う。いいテニスができている。ここまで戻って来られるとは思っていなかったわ」

意味することは

歴史に刻まれたのは、大坂のグランドスラム14回連続勝利。四大大会連続優勝、シモナ・ハレプ(ルーマニア)を抜いての世界ランキング1位到達。1年前の大坂は、世界ランキング72位だった。

大坂は「全豪オープン」での優勝後、2回コーチが交代したり、他の3つのグランドスラムでは準々決勝までも進めなかったりと、不安定なシーズンとなった。アシュリー・バーティ(オーストラリア)と1位を取ったり取られたりしながら、年末1位はバーティに奪われたものの、「東レ パン・パシフィック・オープン」と「チャイナ・オープン」で8ヶ月ぶりに優勝。大坂にとって過去最高の年末3位で一年を終えた。

クビトバは「全豪オープン」の後、自己最高ランキング2位まで戻したが、彼女も他の3つのグランドスラムでは準々決勝までも進めなかった。腕の負傷に苦しみ、「全仏オープン」を含めていくつかのトーナメントに出場できなかった。

それでもシドニーとシュツットガルトで2タイトルを獲得。年末ランキングを2年連続7位とし、過去9年間で7回目のトップ10入りを果たした。大坂とクビトバは、共に年度末の「WTAファイナルズ・深セン」の出場権を得て参加。2回目の対戦を果たし、そこでも3セット接戦の末、大坂が勝利を収めた。

(テニスデイリー編集部)

※写真は「全豪オープン」での大坂なおみ(左)とクビトバ(右)

(Photo by Mark Kolbe/Getty Images)