「立教スポーツ」編集部の取材にも快く応じてくださった「僕じゃダメですか」――。指導者としてのセカンドキャリア―立大男子駅伝監督にお声がかかったきっかけを教えてください立大コーチの林さんと奇遇にも同じマンションで昔からずっと仲が良くて。「立大…


「立教スポーツ」編集部の取材にも快く応じてくださった

「僕じゃダメですか」――。
指導者としてのセカンドキャリア

―立大男子駅伝監督にお声がかかったきっかけを教えてください
立大コーチの林さんと奇遇にも同じマンションで昔からずっと仲が良くて。「立大が箱根事業を立ち上げるのだけども、だれか良い指導はいないか」って話をされたことがきっかけです。それで「僕じゃダメですか」と話をしました。林さんはびっくりしていたのですが、その流れで監督になったという感じですね

―なぜ「僕じゃダメですか」と返答したのですか
まだ指導者がおらず、ずっと選手たちでやってきたということを聞いて型のないチームだと感じたためです。前の監督がいると(指導の)型が既に作られているので、自分の型を作り直すことは大変なので…。だから何もないところに自分が入って、ゼロからやりたいって目標がありました。オリンピックも世界陸上もいろいろあって、怪我にも悩まされていた時期だったので次のセカンドキャリアも考えていて。要はタイミングです。いくら力があっても、努力があっても、タイミングがないとそこにいけないので。『このタイミングを逃したら僕のセカンドキャリアはないんじゃないか』と思ったので、考えることはなくすぐ「僕じゃダメですか」って言いました。

―5年で箱根駅伝に出場することへのプレッシャーはありましたか
いや、特にプレッシャーはないですね。時間は5年しかないので、それに僕がやれることをやろうかなと思っているだけなので。それをやり切れなかったら自分の力が無かったと。学校がこれだけバックアップ体制を作ってくれているので、できなかったら自分の責任と思っていますので。そこは腹をくくっていますね。

「身近で走ることでコミュニケーションを」。
誰よりも選手に近い監督へ

―実際に男子駅伝監督に就任してみての選手たちの印象を教えてください
(自分が)入った時はみんなも半信半疑だったと思います。やはりいきなり監督が来て、選手達としては今まで自由にやってきたのに「なんで?」という気持ちになるのが当たり前で。でも、(生徒たちは)それを受け入れてくれて。「こうなったらやるしかない」と腹を括ってくれたのもあると思うのですが、そこからの動きが早くて、僕が慣れるよりも先に生徒たちが慣れてくれたのかなと思います。僕は1年経って、やっと今になって慣れてきたなと感じるので。今までの選手たちは監督の言うことを素直に聞いてやればいいのですが、僕は彼らのことを一人一人分かっていかないと絶対にダメだと思っているので。それにちょっと時間を費やしたのですが、1年経って(やっとわかってきたかなと)。ただ4年生には申し訳ないですね。4年生とはもう半年早く会っていればもっと分かり合えた部分もあったんですけど…。けれど、その4年生が必死に(監督就任時に)「厳しくなるなら辞めよう」って言っていた人に「いやいや、こんなチャンスないから頑張ろうぜ」って止めてくれていて。もしその4年生がいなかったら…。4年生には感謝しています。

―指導を行ってきての手応えは感じますか
周りからも「自己ベストがよく出ているね」とか、「予選会でも暑い中でよくタイムが上がったね」と言われるのですが、現場で見ていると入った当初に練習メニューを出した時や入ってから数ヶ月練習した時と比べると、一人一人の選手が見違えるように強くなっています。昔から見ている人であれば誰しもそう感じると思います。

―練習メニューはいつも上野監督が考えていらっしゃるのですか
全部僕です。ですが練習の意図をしっかり説明してあげるようにしています。「なんでこの練習をやっているんだろう?ただ苦しいだけじゃん」で終わったら絶対に力もつかないし、やる気も出てこないんですよ。

―指導の上で一番大切にしていることを教えてください
強い子も弱い子も格差付けないで見ることです。同じ陸上部の人間なので、陸上部みな平等でやっていきたい。だから、弱い子は「じゃあ見ないよ」とかではなくて、弱い子も強い子も立場は一緒で見るということをできるだけ徹底しています。

―選手一人一人と関わる時間もたくさん必要ということですね
始まる前と終わった後などに無駄話でもいいからできるだけ絡むようにはしています。練習に対して練習のことを全て話すと疲れてしまうので、今日は「あの選手とこういうこと喋ろうかな」って近付いて。別に練習のことじゃなくてもしっかり会話しているじゃないですか。そうして選手もやりやすくなっていく。大きく言うと一人の部員は一人の陸上選手なので、それを一人の選手として見て育ててあげたいですね。

―上野監督の持ち味の一つに個人として選手と一緒に走れることがあると思います。ご自身ではどのように考えていらっしゃいますか
選手と身近で走ることができるとコミュニケーションも取りやすいです。やっぱり近くで話せることが自分では大きいと思っていますし、なにか(選手に)苦しいことがあれば近くで話してあげられるのが大きいと思います。


普段から選手とのコミュニケーションを欠かさない

野望はどこまでも――。
「全日本大学駅伝に出たい。それが本当の日本一決定戦だと思っているので」

―高校時代の恩師・両角監督(現東海大監督)との対談記事も拝見しました。両角監督への思い入れなどありましたら教えてください
先生が歩んでいた道を歩み始めるので、いつか箱根で優勝できるような環境を作りたいですし、両角先生を超えて行きたいです。

―上野監督ご自身のこれからの目標はありますか
あと4年後の2024年1月2日に(箱根駅伝の)スタートラインに立つことをマストとして、自分的にはその1年前に出たいと思っています。1年前に出ておけば選手たちに安心感が生まれますし、余裕を持たせてあげたいんです。あと全日本大学駅伝に出たいです。それが本当の日本一決定戦だと思っているので。それと個人的には日本選手権に出る選手をあと数年で育てたいです。あと(立大は)関東インカレでいつも短距離に頼っているので、長距離でポイントを取って1部に上がって1部で活躍したいです。東海大とか、そういう強者たちと戦って、外人選手の中に入っているところが見たいです。