アメリカ・ニューヨークで開催中の「全米オープン」(8月29日~9月11日)は 6日目、男女のシングルス3回戦、ダブルス2、3回戦が行われた。 第6シードの錦織圭(日清食品)は世界ランク42位のニコラ・マウ(フランス)を4-6 6-1 6…

 アメリカ・ニューヨークで開催中の「全米オープン」(8月29日~9月11日)は 6日目、男女のシングルス3回戦、ダブルス2、3回戦が行われた。

 第6シードの錦織圭(日清食品)は世界ランク42位のニコラ・マウ(フランス)を4-6 6-1 6-2 6-2で退け、グランドスラム4大会連続のベスト16入りを果たした。

 ダブルスでは日比野菜緒/ニコール・ギブズ(LuLuLun/アメリカ)が、ミカエラ・クライチェク/ヘザー・ワトソン(オランダ/イギリス)に2-6 6-3 7-5で逆転勝ち。日比野にとってはグランドスラムで初の3回戦進出を決めた

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 そろそろ、もうちょっとギアを上げていきたい------。

 初対戦の34歳、マウに第1セットを奪われながら4セットで勝利したあと、錦織自身が言ったことだ。試合内容と錦織の気分は、その言葉がもっともよく表していたかもしれない。

 1セットダウンの第2セットも第3ゲームで先にブレークポイントを握られるなど、序盤の展開は非常に苦しかった。しかしここをなんとかキープし、続くゲームは相手のダブルフォールトも生かしてブレークに成功。このセットは第6ゲームでふたたびブレークして勝負を決めた。

 今やダブルス世界1位のマウはダブルス巧者らしいネットプレーやプレースメントの妙を見せ、片手打ちのバックハンドのダウン・ザ・ラインは強烈だった。また、錦織の弱点と言われるサービスに対する攻めの姿勢は徹底していた。

 そんな状況で、試合を通じて錦織のファーストサービスの確率が46%では自身の首を締めてしまうのも当然だ。第2セットにいたっては38%しかなかった。 「確率を上げないと余裕がなくなってしまう。今一番の課題です」 スピードを押さえ気味に見えるのもそのためか。

 第3セットは最初の3ゲームがブレーク合戦となったが、錦織がその数でまさった。錦織はピンチになると、ときに目の覚めるようなショットでしのぎ、マウのほうは第2セットが終わってから手首の治療を受けていた。試合が進むにつれて精彩を欠いた原因はそこにもあっただろう。第7ゲームでマウは2本のダブルフォールトをおかし、錦織がふたたびブレーク。このあたりからは続く第4セットも含め、完全に錦織が試合を支配していた。

 記者会見での錦織は、最終的に勝ったということ以外は、ほとんど満足していないというような顔だった。それでも40位台の選手にすらこうして勝てる。その事実は、脇腹を痛めながら4回戦まで進んだウィンブルドンでも証明されたことだ。

 それを体が覚えたから本能的に力をセーブしている、ということがひょっとしたらあるだろうか。それならば、相手のレベルが上がっていくにつれて錦織自身が期待するようにギアは自然と上がってくるはず。ここから先の変化が興味深い。  まず次の4回戦、相手は身長211cmのビッグサーバー、イボ・カルロビッチ(クロアチア)だ。会見のときはまだ対戦相手が決まっておらず、「カルロビッチのほうがやりたくはない」と言っていたが、避けられなかった。

 エースの数は3回戦では14本とカルロビッチにしては少なかったが、2回戦では24本、その前の1回戦はフルセットにもつれたこともあって、61本も決めている。ブレークチャンスはそうそう訪れない。錦織にはまた辛抱が必要な一戦になりそうだが、2回戦で気にしていた目が今は「大丈夫」だということは、何よりの朗報だ。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)