アメリカ・ニューヨークで開催中の「全米オープン」(8月29日〜9月11日)は5日目、男女のシングルス3回戦、ダブルス1、2回戦が行われた。 日本勢は大坂なおみ(日本)が第8シードのマディソン・キーズ(アメリカ)を勝利目前ま…

 アメリカ・ニューヨークで開催中の「全米オープン」(8月29日〜9月11日)は5日目、男女のシングルス3回戦、ダブルス1、2回戦が行われた。

 日本勢は大坂なおみ(日本)が第8シードのマディソン・キーズ(アメリカ)を勝利目前まで追い詰めたが、5-7 6-4 6-7(3)で敗れた。

 ダブルスでは穂積絵莉(エモテント)/加藤未唯(佐川印刷)が第14シードのダリア・ユラク(クロアチア)/アナスタシア・ラディオノワ(オーストラリア)を6-4 6-3で退け、ジュニア時代からペアを組む若手ペアがグランドスラム初の3回戦進出を果たした。

 また、大坂は気持ちを切り替えて奈良くるみ(安藤証券)とのダブルスに挑んだが、相手が第1シードのカロリーヌ・ガルシア/クリスティーナ・ムラデノビッチ(ともにフランス)とは運が悪く、3-6 3-6で敗れた。

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 もう手が届いていた金星は指の間をすり抜け、こぼれていった。

 第1セットはキーズ、第2セットは大坂と分け、最終セットは大坂の5-1。第5ゲームの最後はキーズがダブルフォールトし、大坂がこのセット2度目のブレークに成功した。続くサービスゲームをきっちりキープし、トップ10からの初勝利まであと1ゲームと迫っていたのだ。すっかり意気消沈した世界9位を生き返らせてしまったのは、どのタイミングの何だったのだろう。

 「5-1のときは勝ち急いで固くなってしまった。でも彼女のサービスゲームだったからそれほど気にしなかった。でもそのあと、ちょっとずつ追い上げられたときはビビッてた。パニックでした」

 パワーをぶつけ合いながらも両者ミスの多い内容に、特に前半まばらだったアーサー・アッシュ・スタジアムの観客も気の入らない様子で見ていたが、最終セットの3-1あたりで急にキーズの応援に熱が入り始めた。やっと、地元期待の選手が負けそうだと理解したように。

 そんな中で、まず悔やまれるのは、大坂の最初のサービング・フォー・ザ・マッチ、15-30からのダブルフォールトだろうか。ひとつブレークバックしたキーズは次の自身のサービスゲームで、しばらく決めていなかったノータッチのウィナーをフォアからバックから炸裂させた。これで大坂から5-4。それでもまだ大坂が優位だったはずだが、エンドチェンジの際のキーズは顔を上げて胸を張り、すっかり自信を取り戻した態度が印象的だった。

 大坂のほうは俯き気味だ。そんな両者のコントラストを象徴するように、第10ゲームはスタートからキーズが2ポイントを連取する。しかし30-30に追いついた大坂。ここがもっとも勝利に近づいた場面だった。コードボールとなったキーズのリターンを処理してからネットに詰めた大坂に、ボレーの絶好のチャンスが訪れた。しかしややステップに迷いがあったか、タイミングが合わずにフォアのボレーはベースラインを大きく越えた。決めていればマッチポイント。そんなことを言っても仕方がないが、次のポイントでもフォアハンドのアンフォーストエラーをおかし5-5とされ、大坂の落胆は試合中に涙をこらえられないほどだった。

 結局タイブレークに突入。2-3からの大坂のサービスポイント2つは、いずれもファーストサービスが入らなかった。それに対してキーズは勝負をかけて2本連続のリターンエース。あのボレーを決められなかった大坂と、ここで2本連続のリターンエースを決めたキーズの実力差、経験の差だったというしかない。

 オーストラリアでは「負けたほうが学ぶことも多い」と言った大坂だが、この才能にこの経験、そして18歳の吸収力が合わされば、次は必ず何か成果をもたらすに違いない。 (テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)