大王製紙エリエールレディス3日目は、前日とは一転、快晴微風の好コンディションに恵まれた。おかげで、各選手がスコアを伸ばし合う白熱の展開になった。 前半、ひと際目を引いたのが、7アンダー、9位タイでスタートした勝みなみ。1番(パー4)、3番…
大王製紙エリエールレディス3日目は、前日とは一転、快晴微風の好コンディションに恵まれた。おかげで、各選手がスコアを伸ばし合う白熱の展開になった。
前半、ひと際目を引いたのが、7アンダー、9位タイでスタートした勝みなみ。1番(パー4)、3番(パー3)、4番(パー4)のバーディーに続いて、5番パー5ではイーグルを奪った。通算12アンダーまでスコアを伸ばし、その時点でトップに立つことになった。
ショットは、初日、2日目も冴えわたっていた勝。一緒の組でプレーした”同級生”渋野日向子を上回る好調さだった。この日、予選ラウンドの2日間で、もうひとつ決まらなかったパットが抜群で、3日間同じ組で回ることになった渋野を、結果的にけん引する役割も果たすことになった。
トップと2打差の7位タイで最終日に挑む渋野日向子
勝がイーグルを奪った5番で、渋野はこの日初バーディーを奪った。続く6番(パー4)でも、残り153ヤードの第2打を、6番アイアンで2mにつけた。このホールを先に通過していった数組の中では、一番近い距離のバーディーチャンスとなった。
まさにショットのよさを見せつけた渋野だが、バーディーパットをことごとく外した前日のことを思うと、やや不安な距離だった。しかし、この日の渋野は違った。そのバーディーパットを難なく決めて、通算9アンダーとした。
「(勝)みなみちゃんが最初から飛ばして、(もう1人の同伴プレーヤーである一ノ瀬)優希さんも、バーディーを量産してくれたおかげで、リズムよく回ることができました」とは、ホールアウト後の渋野の弁だ。
8番パー3では、ティーショットを再び6番アイアンで、ピンから2、3mの距離につけてバーディー。通算10アンダーに伸ばす。パットが入らなかった2日目より、ショットがピンに絡んでいる分、余計にパットが決まっている感じだった。
10番(パー4)では、52度のウェッジで打った残り95ヤードの第2打を、ピン2mに寄せて11アンダー。次の11番ホール(パー5)のティーショットで、OBを打った勝とスコアで並んだ。
しかし、OBにも気落ちすることなく、スコアを再び積み上げていった勝に対して、渋野は11番から5ホール停滞。もったいないパーセーブが続いた。
ティーショットは、ほとんどフェアウェーをとらえている。渋野がホールアウト後、「18ホール中、17ホールでパーオンしているんで、もう少しスコアを出したかったっていうのはあります」とこぼすのも当然だろう。
「パッティングに関しては、昨日(2日目)からだいぶ修正できました。読みがちょっと深すぎてとか、カップに蹴られるとか、あったんですけれど、昨日のようにストロークが悪いってことではなかった」(渋野)
渋野に、次にバーディーが来たのは、16番のショートホールだった。182ヤードを「ユーティリティの5番で打った」というそのショットを、ピンまで1m強に寄せた。とはいえ、上からのそのパットは、繊細なタッチが要求される難しそうなラインだった。
グリーン横には、大きな電光のスコアボードが設置されていた。渋野がそれを目にしたかどうか定かではないが、少なくとも16番グリーンの周りを立錐の余地なく埋めた大観衆には、このパットの重要性が伝わっていた。日本のトーナメントは外国に比べて観衆のマナーがいいと聞くが、数千人が一斉に息を潜める異様な雰囲気に、それはハッキリと現れていた。
スコアボードには、その時トップを行く、ペ・ソンウと森田遥の名が最上段に記され、スコアは16アンダー。その下に、同組の勝、さらには申ジエ、鈴木愛ら有力選手が名を連ね、渋野はトップと5打差の11アンダーで、9位タイに甘んじていた。
時は3日目の終盤だ。これ以上離されると、いくら爆発力のある渋野といえども、優勝は現実的に厳しくなる。16番のバーディーパットは、まさしく伸るか反るかをかけた一打となった。
渋野が構えて、ストロークする。カップがボールに吸い込まれた瞬間、周囲にこだましたのは、歓喜というより、安堵するような歓声だった。
渋野本人の思いはどうだったのか。続く17番、打ち下ろしの2オン可能なパー5のティーショットに、それは現れていたような気がする。
「17番で2日間、ティーショットが250ヤード表示の10ヤードか、15ヤード先までしか飛んでなかったんで、『今日こそ』とがんばって振ったら、あそこまで行っちゃって(笑)。振りましたね。風はフォロー気味でした。でも、まさかフェアウェーを突き抜けて(その先の)ラフまで飛ぶとは予想外でした。(セカンド地点に行ったら)ボールがないーって(笑)」
ラウンド後にそう語った渋野。ここで、彼女は驚きの飛距離を見せつけたのだ。すべての選手を見たわけではないが、ティーショットで”ここまで飛ばす選手はいないだろう”と踏んでレイアウトされた、300ヤード強で途切れるフェアウェー先のラフまで飛ばした選手は、それまでにいなかったはずだ。
16番で奪ったバーディーの重みと渋野の気持ち。それが、現れていたショットだった。
渋野は残り175ヤードの第2打を5番アイアンで2オンさせ、イーグルこそならなかったが、きっちりバーディーを奪取。続く18番(パー4)をパーで収め、通算13アンダーでホールアウトした。
最終的には、通算15アンダーで単独トップに立った森田と2打差の7位タイ。賞金ランキング2位の申ジエ(通算14アンダー、2位タイ)とは1打差、同1位の鈴木とは同スコアである。また、通算14アンダーの”同級生”勝からも、好気配が感じられる。予断を許さないハイレベルな激戦である。
「明日(最終日)は雨? でも、午後ですよね。気温がそんなに低くならないっぽいですね。今年の経験上、雨は嫌いじゃないかもしれないんで。ボチボチがんばります。ここで勝ったらカッコいいんで、パッティングはどうなるかわからないですけど、明日も今日のようなショットなら、しっかりチャンスにつくと思うので、(優勝の)チャンスはあるんじゃないのかな」
クールに装う渋野だが、最終日の同組には、賞金女王争いのみならず、東京五輪の出場権をかけた世界ランキングでも熾烈な争いを繰り広げる鈴木がいる。そこで繰り広げられるであろう”バトル”は見もの。注目の最終日である。