アメリカ・ニューヨークで開催中の「全米オープン」(8月29日~9月11日)は4日目、男女のシングルス2回戦、ダブルス1回戦が行われた。第6シードの錦織圭(日清食品)は20歳の新鋭カレン・カチャノフ(ロシア)の挑戦を受け、途中雨による約2…
アメリカ・ニューヨークで開催中の「全米オープン」(8月29日~9月11日)は4日目、男女のシングルス2回戦、ダブルス1回戦が行われた。第6シードの錦織圭(日清食品)は20歳の新鋭カレン・カチャノフ(ロシア)の挑戦を受け、途中雨による約2時間半の中断をはさんだ長丁場を6-4 4-6 6-4 6-3で制した。
グランドスラム7大会連続の1回戦突破に成功した奈良くるみ(安藤証券)は、世界ランク92位のアナ・コニュ(クロアチア)に3-6 3-6で敗退。2014年全豪オープン以来のグランドスラム3回戦進出はならなかった。
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ネットの向こう側にいるカチャノフのほうが、手前の錦織よりもずっと大きく見えた。予選突破の世界95位。1回戦が同じ予選上がりとの対決というドロー運を生かし、グランドスラム初の初戦突破を果たした20歳の新鋭だ。その198cmの長身を武器に、時速200km超え当たり前のサービスを強気で叩き込んでくる。
トップ10プレーヤーとの対戦はこれが初めてだったカチャノフの心理状態は“Nothing to lose”、つまり「当たって砕けろ」「負けてもともと」だ。フォアもバックもビッグショットを持っているものの基本的に強打一辺倒。ショットの精度もテクニックも錦織が当然上だが、こういう若い挑戦者を調子づかせたら怖い。
そういう意味で、第2セットを失ったあと第3セット4-4で降雨中断をはさんだことは幸いだったかもしれない。力で押してくる相手に対し、錦織はアンフォーストエラーが目立ち始めていた。中断前の第8ゲーム、カチャノフのサービスゲームは、錦織が3つあったブレークポイントを生かせず、2度のデュースの末にキープされた。
雨で助かったかと聞かれ、「助かってもいないし、どっちでもないです」と言ったところにプライドが覗いた。運で勝ったのではなく、タフな試合でも自ら攻めてつかんだ勝利だというプライドが。
しかし、「中断の間にコーチとも話せて、作戦も変えて、戻ってから3、4セットを取れたので、そういう意味では助かったのかもしれません」と続けた。柔軟な受け答えは、ひょっとすると、コーチたちの言葉を必要なだけ吸収する力と通ずるところがあるだろうか。
3時間近い中断後、コートに戻ると、力強く2ゲームを連取。第4セットの第3ゲームでブレークを許した際は、ふたたびカチャノフに息を吹き返すチャンスを与えたようにも見えたが、ここは相手もまだ若かったと同時に錦織が冷静だった。1-3から5ゲームを連取。
第6ゲームの1ポイント目にカチャノフがおかしたダブルフォールト、第8ゲームの30-30からラリーを止めてまで要求した〈チャレンジ〉(※自動ライン判定)の失敗など、小さなきっかけからブレークにつなげたところはさすがだった。終始完璧なテニスというわけではなかったが、要所を押さえてキズを最小限にとどめた。
ただ、一つ気になったのが、第2セットで一度トレーナーを呼んだことだ。脇腹…ではなく、診察を受けたのは目だった。 「目がよく見えなくて、集中できなかった」
次は1回戦で第25シードのフィリップ・コールシュライバー(ドイツ)を破ってきた世界ランク42位のニコラ・マウ(フランス)が相手だ。視界はクリアな状態で臨まなければ、かなり厳しい。
(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)