四国・松山を舞台に行なわれる4日間トーナメント、大王製紙エリエールレディス(11月21日~24日/愛媛県)。初日は寒波の来襲で、激しい冷え込みに見舞われた。上空は雲ひとつない青空が広がっていたが、空気は冷たく乾き切っていて、遠目で見て…

 四国・松山を舞台に行なわれる4日間トーナメント、大王製紙エリエールレディス(11月21日~24日/愛媛県)。初日は寒波の来襲で、激しい冷え込みに見舞われた。上空は雲ひとつない青空が広がっていたが、空気は冷たく乾き切っていて、遠目で見ていても、ショットの打音やカップインの音まで、クリアな響きが伝わってくるのだった。

 15番(パー4)では、フェアウェーを楽しそうに歩く3人組の女子トークが、コースロープの外まで聞こえてきた。インの10番から8時30分にスタートした、小祝さくら、勝みなみ、渋野日向子のパーティーだ。1998年度生まれの同い年、いわゆる「黄金世代」の出世頭たちである。

「同級生(とのプレー)は刺激になりますね。(勝)みなみちゃんが(パットの)長いのを決めたり、(小祝)さくらちゃんも長いのを決めたりしていたんで、『次は私が入れる番かな』と思ったりしながらプレーしていました。ライバル意識? 私はないです。いい感じの関係です」とは、ラウンド後の渋野の言葉である。

 現在の賞金ランキングは、小祝が7位、勝が11位、渋野が3位。この試合を含めて、今季は残り2試合。渋野にはまだ、賞金女王の可能性が潰えたわけではない。その1組前でプレーする、賞金ランキング1位の鈴木愛との差は、2400万円余りだ。

「賞金女王のことは、まったく考えていません。平常心で戦っています」と渋野は語るが、優勝賞金1800万円をかけて争われるこの一戦を制すれば、話は変わってくるだろう。優勝賞金3000万円のLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ(11月28日~12月1日/宮崎県)が最後に控えていることを考えれば、なおさらだ。

「黄金世代」の3人が15番ホールのフェアウェーを歩く先のグリーン上で、カップにボールが収まる乾いた音が響き渡った。鈴木が、この日ふたつの目のバーディーパットを決めた快音だった。そこで、スコアを渋野と同じ1アンダーとした。

 鈴木は、隣県の徳島県出身。ギャラリーを、渋野の組と同じくらい引き連れている。その声援に後押しされ、鈴木はその次の16番でもバーディーを奪う。

 一方、渋野は17番のパー5でピンチに見舞われた。距離はさほど長くはないが、グリーンに向かう花道を狭めるようにして、両サイドから池が迫っている、2オンが狙いにくいホールだ。

 渋野は残り222ヤードのセカンドを6番アイアンで刻んで、第3打の残りは92ヤード。これを、52度のウエッジで打った。

 その瞬間だった。突然、遠くから見ているこちらにもハッキリとわかるアゲインストの強風が吹いたのだ。そんなアンラッキーに見舞われた結果、第3打はショート。グリーン手前のラフに捕まった。

 フェースを開いて打ったロブショットのアプローチは、4mオーバー。さらに、パーパットもほぼ同じ距離だけ外してしまった。痛恨のダブルボギーを喫した渋野。スコアを1オーバーとして、鈴木との差は3打差に開いた。

 続く18番パー4。渋野はショックを引きずることなく、彼女らしさを存分に発揮する。残り115ヤード。ピッチングで狙った第2打をピンの根元に落として、難なくバーディー。バウンスバックを決める。



初日、得意のパットが冴えわたった渋野日向子

 これが、布石になったのだろう。アウトの2番パー4で、再びセカンドショットをピンの根元につけてバーディーを奪うと、渋野の勢いは止まらなくなった。

 4番パー4、5番パー5、8番パー3、9番パー5とバーディーを重ねた。とりわけ光っていたのが、サッと構えてサッと打つパッティングだ。4番では3~4m、8番では5m、9番では2.5mのパットをあっさりと沈めた。平均パット数(パーオンホール)のランキングで1位に立つ、その面目躍如という感じだった。

 翻(ひるがえ)って、同ランキングで渋野に続く僅差の2位という鈴木は、アウトに入ると、ツアー3連勝を飾った過去3戦なら間違いなく入れていたはずのパーパットを立て続けに外した。結局、後半はスコアをひとつ落として、1アンダー、36位タイで初日のラウンドを終えた。

 渋野のスコアは、5アンダー。首位に立った森田遥の7アンダーに次ぐ2位タイで2日目に向かうことになった。

 好調だったパットについて、渋野はこう語った。

「(カップを)オーバーさせることを意識していましたね。しっかり打てたし、ショートはなかったと思う。バーディーパットはショートしたくないと思ったんで、それが最初から最後まで貫けたことがよかったかな、と」

 ハイライトに挙げたのは、やはり18番だった。

「17番でダブルボギーを打ったあと、すぐにバーディーが取れた。そこは、ここ何試合とは違うなと思います。ヤケクソでしたし(笑)。私の場合は、平常心を意識していたら、逆にいけないのかもしれませんね。あまり喜怒哀楽を見せるのもよくないですけれど……。いきなりダボが来たら、余計にプチーンってきてしまいました」

 あらためて賞金女王争いのことを尋ねられると、渋野はきっぱりこう言った。

「考えていないです。応援してくれるみなさんに、いいプレーを見せたい、という素直な気持ちでやっています」

 ちなみに、渋野に約1650万円差をつけて、賞金ランキング2位に位置する申ジエは、渋野と同じ5アンダーでフィニッシュ。2日目以降の争いが楽しみである。