専門誌では読めない雑学コラム木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第231回 最近、世の中の新陳代謝が激しく、新人タレントさんなどは認識できない場合が多いです。現在、「お笑い第7世代」が活躍中だそうですが、それ以前の「第6世代」や「第5世代」…

専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第231回

 最近、世の中の新陳代謝が激しく、新人タレントさんなどは認識できない場合が多いです。現在、「お笑い第7世代」が活躍中だそうですが、それ以前の「第6世代」や「第5世代」すら見当がつかず、オジさんは困り果てています。

「第1世代」って、エノケン(榎本健一)や花菱アチャコのこと? そもそも最初がわからないんだから……。誰か、説明してくれぇ~。

 ところで、現在、渋野日向子選手やタイガー・ウッズの活躍に沸く日本のゴルフ界はどうなのか。今は「第何次ゴルフブーム」なのか、みなさん、わかりますか?

 わからないでしょ? でも大丈夫。私もわかりませんから、ご心配なく。

 そんなわけで、今回は最初のゴルフブームから検証し、今のブームを客観的に捉えてみたいと思います。

◆第1次ブーム
 戦後、ゴルフの大衆化を押し上げたのは、1957年に霞ヶ関カンツリー倶楽部で行なわれた第5回カナダカップ(ワールドカップの前身)。日本チームの中村寅吉選手&小野光一選手が団体優勝を飾って、個人でも中村選手が優勝を果たしたことが大きいです。

 同大会には、世界30カ国、計60選手が出場。4日間のトーナメントで勝敗が争われました。日本チームは、日本独特の高麗グリーンを味方につけて、2日目からトップに立つと、そのまま独走。最終的には2位のアメリカ、サム・スニード&ジミー・デマレー組に9打差をつけて圧勝しました。個人でも、中村選手がサム・スニードに7打差をつけての優勝でした。

 つまり、世界の強豪と渡り合って、完全優勝を遂げたので、もの凄く話題になって、一躍ゴルフというスポーツが脚光を浴びたのです。それから、日本のゴルフ場建設が急ピッチで進んで、大衆化へと弾みがつきました。

 カナダカップの観戦に霞ヶ関CCに訪れたギャラリーの数は、4日間で1万5000人ほどだったそうです。当時、自家用車はもちろん、公共の電車やバスも少なかった時代。そうした状況にあって、これだけのギャラリーが押し寄せたことは、本当に驚異ですよね。

 それで、中村選手は力道山みたいな、国民の憧れの存在になったんですな。

◆第2次ブーム

 第2次ブームをいつにするか――これは、さまざまな文献を見ても、みなさん、同様の意見でした。

 ズバリ「AON時代」です。青木功選手、尾崎将司選手、中嶋常幸選手といったビッグ3の活躍が、日本の高度経済成長とリンクして、日本ゴルフ界の急速な発展に貢献。もの凄い勢いで大衆化が進んでいきました。

 海外でも、アーノルド・パーマー、ジャック・ニクラウス、ゲーリー・プレーヤー、リー・トレビノなど、スタープレーヤーが躍動。世界的にもゴルフブームが到来していました。

 また、用具もパーシモンからメタルへと次第に変わりつつあった時期で、全体の飛距離が伸び始めて、大衆がより楽しめるスポーツとなっていきました。

 日本では、1971年に尾崎選手が日本プロ選手権で初優勝して以来、「AON時代」は20年ぐらい続いて、大きなブームとなりました。これについては、誰も異論はないでしょう。

 問題は、第3次ブームです。

 これについては、「あるのか、ないのか?」「アメリカではあるけど、日本ではどうなのか?」といった議論が持ち上がっています。

 ただ、個人的な見解では、紛れもない”大ブーム”がありました。それは、タイガー・ウッズの登場です。

◆第3次ブーム
 タイガーが史上最年少(21歳3カ月)でマスターズを制した1997年から、彼が奥さんにアイアンで殴られるなど、さまざまなスキャンダルに見舞われる2009年ぐらいまで、世界的に”タイガーブーム”が巻き起こっていました。

 その後、ケガや私生活でのトラブルによって戦列を離れた時期もあったので、とりあえずその間を、”タイガーブーム”の第1次として区切らせていただきます。

 昨年あたりから”第2次タイガーブーム”の兆しがあり、これから再び優勝を重ねていけば、そんなブームが到来する可能性もなきにしもあらず、ですが、しばらく様子をみましょう。

 さて、タイガー・ウッズが躍動し、世界のゴルフ界の頂点に君臨していた頃、日本では宮里藍選手が登場。2003年、高校生でプロツアーを制して一気にブレイクし、プロになってからも大いに活躍しました。

 早々に米ツアー参戦も果たし、2010年には世界ランキング1位にも輝きました。そんな、宮里選手が活躍していた約10年間は、たしかに”藍ちゃんブーム”が起こっています。

 その間、男子ゴルフ界にも新たなスター選手が彗星のごとく現われました。石川遼選手です。2007年、弱冠15歳(高校1年生)でプロツアーを制し、日本中に衝撃を与えました。彼もプロになって、すぐに活躍。2009年には、18歳80日という史上最年少記録で賞金王に輝きました。

 この3人を合わせて、つまり、タイガー、宮里選手、石川選手が躍動した時代を、日本の”第3次ブーム”と言ってもいいんじゃないでしょうか。

 日米で、強くて、カッコいいスターが登場し、ゴルフへの注目度は間違いなく高まったと思います。バブルアフターで、アマチュアの世界では、ゴルフ場の預託金返還問題などハード面でのトラブルもありましたが、タイガーのおかげでナイキのポロシャツは飛ぶように売れました。

 とくに日本では、高校生からスターが誕生。たくさんの子どもたちが、宮里選手、石川選手の活躍に影響を受けて、ジュニアゴルファーの数はぐんと増えました。

 ということで、個人的には、この時代を”第3次ブーム”とさせていただきたいと思います。

 このあと、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災によって、日本全体が経済的なマイナスムードに覆われます。結果、ゴルフどころではなくなるのです。

 経済面で復活の兆しが見えてきたのは、安倍晋三内閣になって、日経平均株価が2万円を超えた頃でしょうか。世間ではそこから、そろそろゴルフを堂々とやってもいいんじゃないか、という雰囲気になりました。

 そうして、アメリカではドナルド・トランプ氏が大統領に就任。安倍首相、トランプ大統領という大のゴルフ好きが頻繁にラウンドするようになります。そうして、ゴルフ会員権相場もゆるやかに上昇し始め、全国的にゴルフが注目されていきます。

 その矢先のことでした――。

◆第4次ブーム
 渋野選手が全英女子オープン優勝! 

 そのニュースを聞いた時は、青天の霹靂でした。上位争いに加わっていたけど、まさか優勝とは……という感じでした。

 思えば、日本では若い女子選手たちが凄まじい活躍を見せています。1998年度生まれの「黄金世代」と言われる選手たちが、週替わりでツアー優勝。その姿を見ていると、非常に層が厚いことに気づかされます。

 彼女たちは、間違いなく”藍ちゃんブーム”に乗った、当時ジュニアゴルファーだった人たちです。要は、小柄な宮里選手がスーパーアプローチとパットで優勝を重ねていくなか、それを見ていたお父さんたちが、「うちの娘でもプロになって稼げるかもしれない」と思って、ゴルフを始めさせたんですな。

 また、女子プロ人気という点では、新人選手応援番組でもある『ゴルフサバイバル』(BS日テレ/毎週金曜日21:00~22:00放送)の影響もデカいと思います。

 10人の若手女子プロゴルファーが、1ホールごとに脱落していくのは、まさに心震わせる”ドキュメンタリー”です。悔し涙を流す選手もいれば、一度も涙を見せず、カラッと笑って優勝をかっさらっていく選手もいて、”リアルドラマ”としても非常に面白いです。

 こうして、女子プロツアーのトーナメント中継は、以前は6~7%だった視聴率が、”シブコ効果”などが相まって、12~13%まで急上昇。ゴルフ雑誌も、何年ぶりかに部数増加の傾向に変わりました。



「第4次ゴルフブーム」は到来しているのか!?

 確実に、第4次ゴルフブームは来ています。

 あとは、「黄金世代」の女子選手から、さらに海外メジャーでの優勝者が出るか、あるいは米女子ツアーで活躍選手がたくさん現れるか、ですね。

 加えて、今後期待したいのは、男子ゴルフ界の盛況です。女子の影響を受けて、スター選手が現れないものですかねぇ~。

 石川選手の影響を受けたジュニア世代の台頭は、あと5年ぐらいは待たねばなりませんか……。その世代ががんばれば、伝説的となる”ゴルフ黄金世代”が到来すると思うんですけど……。

 歴史は、後世の人が評価するものです。渦中にいる人は、なかなか客観的には見られません。ゆえに、第4次ブームを「シブコブーム」と言うか、「女子黄金世代ブーム」と言うか、はたまた別のスターが登場して、新たなブームを生み出すのか、それは10年ぐらい経ってからでないとわかりません。

 どういうふうに呼ばれるのか、我々はゴルフをしながら、楽しみに待つとしましょう。