アメリカ・ニューヨークで29日、「全米オープン」が開幕した(8月29日~9月11日/ハードコート)。 大会初日は男女3人が登場。18歳の大坂なおみ(日本)が第28シードのココ・バンダウェイ(アメリカ)を6-7(4) 6-3 6-4で破り…

 アメリカ・ニューヨークで29日、「全米オープン」が開幕した(8月29日~9月11日/ハードコート)。

 大会初日は男女3人が登場。18歳の大坂なおみ(日本)が第28シードのココ・バンダウェイ(アメリカ)を6-7(4) 6-3 6-4で破り、全米オープン・デビューを白星で飾った。しかし、第30シードの土居美咲(ミキハウス)は世界ランク102位のカリナ・ビットヘフト(ドイツ)に4-6 1-6で思いがけず完敗。西岡良仁(ヨネックス)は第23シードのケビン・アンダーソン(南アフリカ)に3-6 5-7 4-6と、セットを奪うことができなかった。

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 ニューヨーク出身のアメリカ人・バンダウェイと、ニューヨーク育ちの日本人・大坂の対決に、13番コートが沸いた。185cm、70kgのバンダウェイと180cm、69kgの大坂は、どちらも時速190km台のサービスを頻発するパワープレーヤー。追い込まれても攻め込まれても、逃げるより力で押し戻すような強気なプレースタイルは、お互いに自分自身とプレーしているような感覚だったかもしれない。

 第1セットは両者1回ずつブレークしてタイブレークへ。3-3から先にミニブレークしたのは大坂だったが、そこから4ポイントを連取され、バンダウェイがこのセットをものにした。最後の2ポイントは連続エースになす術がなかった。

 しかし、チャンスがあったセットを落とした失意より、競り合った手応えを力にするように、第2セット以降は「もっとリラックスして、集中するようにした」と大坂。第1セットは15本あったアンフォーストエラーが第2セットでは4本に減らしたところに、「集中」の成果が表れていた。もちろんゲーム数の違いはあるが、バンダウェイのほうは逆に11本から13本に増えている。

 2度のブレークに余裕すら感じられた第2セットだったが、最終セットは苦しかった。両者危なげないサービスキープで迎えた第7ゲームは大坂のサービスで0-40。ここからピンチをどうしのいだか、どんな気持ちだったかは「覚えてない」というが、サービスだけでの3ポイント連取だった。1ポイント目はファーストサービスに失敗したが、バンダウェイの荒々しいプレーに助けられ、リターンの強打が大きくアウト。そこから大坂が放ったセンターへのエースはこの日、最速の時速201kmだった。さらに時速193kmをふたたびセンターへ放ってデュースにすると、さらに2ポイントを重ねてキープに成功。メンタルの強さを証明するゲームだった。

 締めくくりは5-4での第10ゲーム。ファーストサービスの入りが悪いバンダウェイより先手をとり、あとは積極的かつ辛抱強いラリーでミスを引き出してブレークに成功した。

 エースは大坂の9本に対してバンダウェイが12本、ウィナーは20本対31本と、いずれも大坂が下回ったものの、いかにもパワー対決らしいスタッツだ。ジャッジなどに対する苛立ちがプレーに影響したバンダウェイに対し、最後まで冷静に、勝負どころで集中力を高めたチャレンジャーの勝利だったといえる。

 大坂の2回戦の相手は予選上がりのドゥアン・インイン(中国)。186cm、84kgのアジア人離れした体格とパワーの持ち主で、またも豪快な対決になりそうだ。

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 大坂に敗れたバンダウェイを含め、女子はこの初日だけで6人のシード勢が敗れた。その中に、今回初めてグランドスラムでシードがついた土居がいたことは残念でならない。好調の中で迎えるシーズン最後のグランドスラムだけに、「自分に期待していたところもある」のは当然だったが、執拗にバック側を攻められ、得意のフォアからの攻撃を思い通りに仕掛けられなかった。

 また、西岡は自分より30cm以上も背の高い203cmのアンダーソンを相手に食らいついたが、試合内容よりも悔やまれるのは前日に体調を崩してしまったことだ。全米オープンで体調を崩すのはこれで連続3年目。ネタにして笑い飛ばせるはずもなく、西岡は言いにくそうに髪の毛をかきむしりながら告白した。回復しないままコートに立った過去2回と違い、今回は「寝込んだのは昨日だけで、今日のプレーは大丈夫でした」と言うものの、「最後の調整ができなくて、ベストコンディションで迎えられなかったのは悔しかった」と肩を落とした。

(テニスマガジン/ライター◎山口奈緒美)