アメリカ・ニューヨークで開幕した「全米オープン」(8月29日~9月11日/ハードコート)の大会初日、男子シングルス1回戦。 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)はダブルフォールトをおかし、それから顔をしかめて右腕を振った。自らの弱いサービス…

 アメリカ・ニューヨークで開幕した「全米オープン」(8月29日~9月11日/ハードコート)の大会初日、男子シングルス1回戦。

 ノバク・ジョコビッチ(セルビア)はダブルフォールトをおかし、それから顔をしかめて右腕を振った。自らの弱いサービスがディフェンディング・チャンピオンの彼をたじろがせ、それからフォアハンドのミスが続いてセットを献上した。彼がグランドスラム大会の1回戦でセットを落としたのは、2010年の全米オープン以来のことだ。

 結局、ジョコビッチは6-3 5-7 6-2 6-1でジャージー・ヤノビッチ(ポーランド)に勝ちはしたが、わずか5ゲームをプレーしたところで、トレーナーに腕のマッサージを受けるなど、この試合にはたくさんのトラブルのサインがあった。

 オンコート・インタビューで体の問題について尋ねられたジョコビッチは、「今、その問題について話す必要はないだろう。僕は今日勝ち上がった。一日一日に取り組んでいくよ」と言って話をそらした。  同じ問いが記者会見でも蒸し返されると、「トレーナーを呼んだのは予防のためで、問題はない」と言って、またもその話題を避けようとした。  試合の間、ジョコビッチはファーストサービスを時速160km程度、ときには彼の通常のスピードより時速40kmほど遅い速度で打っていた。セカンドサービスに至っては、時速129km前後。彼は問題の右腕を随所で曲げ伸ばししていた----それは、彼が「12」のグランドスラム・タイトルを獲る過程で、ずっとラケットを振ってきた腕だ。

 ジョコビッチはエンドチェンジの際にタオルで頭を覆い、見たところ全体的に不幸そうな様子を見せていた。

 ジョコビッチのコーチであるボリス・ベッカー(ドイツ)は爪をかじり、この上なくナーバスであるように見えた。  概していえば、ジョコビッチの問題はトーナメントが進むにつれて大きくなっていく傾向があり、そのため、それはフラッシング・メドウでの注目すべき展開となっていくだろう。  これは世界1位のジョコビッチにとって、(グランドスラム大会では)ウィンブルドンでサム・クエリー(アメリカ)に敗れた3回戦以来の試合である。あの敗戦で、全豪と全仏で優勝していた彼の年間グランドスラム(同一年に4つのグランドスラムで優勝すること)の夢は断たれた。今月行われたリオ五輪での彼はそこで1回戦負けを喫しており、その後は左手首の痛みを理由にマスターズ1000のシンシナティを欠場した。  「ここ数週間のあとに今日試合を終え、勝つことができたというのはもちろん喜ばしいことだ」とジョコビッチ。彼の次の相手はイリ・ベセリ(チェコ)だが、ふたりは4月のモンテカルロ(クレーコート)で対戦し、ジョコビッチが4-6 6-2 4-6で敗れている。

 「毎日毎日が、僕らに克服しなければならないチャレンジを提供する。それを受け入れ、乗り越えるんだ」とジョコビッチは前を見つめる。  2013年にウィンブルドン準決勝に進み、世界ランク14位だったこともあるヤノビッチに対する試合では、手首には問題なかったようだった。一方でヤノビッチは一連の故障のため、現在は247位までランキングを落としている。

   ◇   ◇   ◇  ラファエル・ナダル(スペイン)はアーサー・アッシュ・スタジアムでデニス・イストミン(ウズベキスタン)を6-1 6-4 6-2で下して3ヵ月ぶりにグランドスラム大会で勝利を収めたあと、ネットのそばに立っていた。そして彼の大事な左手首を守っていた、厚くぐるぐる巻きにされたテープをていねいにほどいた。

 彼は「絶好調のときにやっているような打ち方でフォアハンドを打つことが、まだできていない」と言う。  ナダルが試合後に明かした吉報は、きついトップスピンをかけた重いフォアハンドを繰り出す彼の手首から痛みが消えたということだった。そのフォアハンドは、この日も彼の成功の鍵だった。21本のウィナーのうち14本がフォアから生まれたものだ。  一方であまりよくないニュースは、フォアハンドでダウン・ザ・ラインに打つときに心地よくない感覚があり、いまだ改善しようとしている最中だ、という点だ。彼は全仏オープンの3回戦を棄権してからリオ・オリンピックまで試合ができなかったのはもちろん、練習ですらほとんど行うことができていなかった。  「シーズンの真っ最中に2ヵ月半もの間、試合に出られないというのは容易なことではない。フォアハンドをまったく打つこともできずに…」とナダル。「自分の手首に、また自信を感じられるようにならなくては…」と続けた。  ナダルと彼のコーチで叔父のトニーの双方が、リオ・オリンピックの間、痛みを避けるためにどのようにフォアハンドの打ち方を変えていたかを説明し、双方が状態はよくなりつつあると言っている。しかし、トニーは「我々には少し時間が必要だ」とも言い添えた。  世界107位のイストミンが、ナダルに過酷なテストを課したとは信じがたい。彼はナダルのプレーについてどう感じたのだろうか?

 「第1セットでは、彼がハードヒットしていないと感じた」とイストミン。「多くの短いボールがあったよ」。

 一方で、ナダル自身のこの日の出来の要約は、以下のようなものだった。「すごくよくもなかったし、すごく悪くもなかったよ」。(C)AP