11月8~10日に愛知、岐阜の両県を舞台に「セントラルラリー愛知・岐阜」が実施された。世界ラリー選手権(WRC)「ラリージャパン」が2010年以来、10年ぶりに復活開催されることが決まり、来年11月の本番に備えたテストイベントの位置付けと…

 11月8~10日に愛知、岐阜の両県を舞台に「セントラルラリー愛知・岐阜」が実施された。世界ラリー選手権(WRC)「ラリージャパン」が2010年以来、10年ぶりに復活開催されることが決まり、来年11月の本番に備えたテストイベントの位置付けとして行われた。

 

セントラルラリーで民家の前を走るトヨタ・ヤリスWRC(鶴田真也撮影)

 

ラリージャパンの競技ルート候補地で

 

 トヨタのWRCチームも派遣され、育成ドライバーの勝田貴元(26)が最高峰カテゴリー車両の「ヤリスWRC」で出場した。ちなみに日本では「ヴィッツ」の車名で知られる大衆車だ。

 ラリーはF1などのサーキットレースと違い、主に公道が使われる。競技ルート上に設定されたスペシャルステージ(SS)と呼ばれる複数の競技区間の総合タイムを争うタイムトライアル競技で、路面も舗装路(ターマック)、未舗装路(グラベル)の2種類。冬季開催の大会では雪道で争われる。

 セントラルラリーはターマック戦だ。愛知万博が開催されたモリコロパーク(愛知県長久手市)に大会本部、整備エリアのサービスパークが設けら、ラリージャパンの競技ルート候補地が実際に使われた。

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開催目的は

 

総合優勝した勝田貴元(右)。談笑する相手はトヨタ自動車の友山茂樹副社長だ(鶴田真也撮影)

 

 今回の開催目的は大きく2点。本番に問題が起きないよう「うみ」をできるだけ出して、改善につなげること。生活道路を利用することから地元の住民にラリーの存在を理解してもらい、協力を得ることだ。ラリージャパンが2004~10年に開催されたときは北海道が舞台。人里離れた林道が中心だった。

 期間中に愛知県豊田市羽布町のステージに足を運んだ。三河湖近くの棚田が広がる山村で、SSは集落の生活道路に設定され、点在する民家の前を実際に通り抜ける。もちろん、競技中はコースが封鎖されるが、その時間は1時間程度。住民の生活を極力妨げないよう、規定の時間まではコースを通行できるようにもなっていた。

 一般のギャラリーも協力的で、現地のオフィシャル(係員)の指示に従い、決められた規制線の後ろで粛々と観戦。住民の中には庭先にいすを並べ、バーベキューをしながらラリーの雰囲気を楽しむ一団も見られ、ラリーの開催には総じて好意的だった。

 競技中にはコーナーを曲がりきれずに田んぼに突っ込んでしまうマシンもあったが、田んぼを所有している家の住人は「ウチの田んぼ。曲がるのもマシンによって動きがそれぞれ違うのね。楽しい。来年のラリージャパンが楽しみ」と大はしゃぎ。全てのSSエリアには競技2日間で約4万人の観衆が詰め掛けたという。

予期せぬ事態

 セントラルラリーは下馬評通り勝田が総合優勝を飾ったが、運営面では予期せぬ事態もあった。競技初日にはサービスパークとSSの間に使われた新東名高速道路が事故渋滞となり、タイムスケジュールの遅れでSSの1区間がキャンセルされた。

 「ロードセクション(移動区間)では渋滞もあったが、渋滞しなかった一本道でも、たまに法定速度よりも極端に遅い一般車の方もいる。そこについていくとどうしても(次のステージに)間に合わない。今回の大会はうみを出すのが目的なので問題が出るのは仕方がないこと。開催したメリットはあるのでは」と勝田も前向きに捉えた。

 日本特有のツイスティーな狭い道路は他のWRCの大会でも珍しく、パワーと車幅のあるワールドラリーカーは攻略が難しいもよう。ラリージャパンは夏場に開催される東京オリンピックパラリンピックに続く目玉イベント。地元は盛り上がりの機運だ。

[文・写真/東京中日スポーツ・鶴田真也]

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