日本開催の米ツアー、TOTOジャパンクラシック(滋賀県・瀬田GC)は、前週の樋口久子 三菱電機レディスに続いて、初日から首位の座を譲らなかった鈴木愛が2週連続で完全優勝を遂げた。記者会見場で、彼女は困惑の表情を浮かべた。「夢だったので、行…

 日本開催の米ツアー、TOTOジャパンクラシック(滋賀県・瀬田GC)は、前週の樋口久子 三菱電機レディスに続いて、初日から首位の座を譲らなかった鈴木愛が2週連続で完全優勝を遂げた。記者会見場で、彼女は困惑の表情を浮かべた。

「夢だったので、行きたい気持ちはあるけれど……」

 今回の優勝によって、鈴木は米ツアーの出場資格を得た。しかし、その申請の締め切り(11月18日)まで、わずか1週間あまり。ゴルフ人生の大きな決断を下すには、さすがに時間が足りないのだ。

「英語を喋れないのと……食事もアジア系の料理は食べられるんですけど、それ以外はあまり得意じゃなくて。私、潔癖だから、飛行機に乗るのも、レンタカーに乗るのも嫌で(苦笑)、移動が大変なのも……。(ツアーメンバーとしてアメリカで)戦いたいという気持ちは70%ぐらいだけど、(移動や食生活など)トータルで考えれば20%ぐらいかな」



TOTOジャパンクラシックで2週連続の完全優勝を決めた鈴木愛

 2013年にプロテストに合格し、2014年にツアー本格参戦を果たした鈴木は、その年に国内メジャーの日本女子プロ選手権を制して、ツアー初優勝を飾った。その後も順調に勝ち星を重ねて、2017年には賞金女王に輝いた。そして今季は、左手首の痛みのために9月下旬から4試合休んで、出場試合は22戦と少ないながら、自身最高の年間6勝を挙げている。

「(今季は)およそ1カ月半の間、身体的にも、メンタル的にも休めたのが大きかった。ゼロから臨むことができましたから。ここ2、3週間に限れば、(私の)ゴルフ人生でダントツに状態がいいと思います」

 TOTOジャパンクラシックでは、3日間で叩いたボギーは初日のひとつのみ。ピンチらしいピンチはなく、得意のパッティングに加え、ショットが見事にピンに絡み、長い距離が残ったパーパットなど、皆無に近かった。

 それでも、最終日の前夜は不安感に襲われたという。

「日本で開催されているとはいえ、米ツアーですし、優勝争いとなって、普通にプレーできるのか、という不安がありました。でも、コースに入ると意外と落ち着いていた」

 2位に3打差をつけてスタートした最終日は、前半に4つスコアを伸ばし、16番で偶然目にするまで、リーディングボードには目もくれず、自身のゴルフに徹した。最終18番のロングホールでは、第3打をピン奥1mの距離に。難なくバーディーを奪い、通算17アンダーでフィニッシュした。

 完全優勝を遂げても、反省点を口にするのが鈴木らしい。

「前半は伸ばせたけど、後半は伸ばせなかった。サンデーバックナインで伸ばせる選手は強いし、そういう選手になりたい。昨日までの差があったので、今日は勝ち切れたと思います。

 本当に夢みたい。日本を越えた、世界の大会だからこそ、価値がある。これまでの15勝の中でも、1番か、2番に印象に残る試合になりました」

 賞金ランキングでは、2位の渋野日向子を抜き、トップに立つ申ジエにも約700万円差に迫った。東京五輪の代表枠にかかわる世界ランキングでも、前週の24位(11月10日時点)から、今回の優勝で、日本勢2番手につける渋野(同13位)に肉薄する順位までジャンプアップすることが濃厚だ。

「どちらも獲れたらベストだけど、(賞金女王と東京五輪出場なら)賞金女王になりたい。(賞金ランキング1位の)申ジエさんは(日本を含めて)世界で50勝以上もしていて、クラブの入れ方とか、うまいなって思う。そういう選手が上にいるのは当たり前」

 25歳ながら、すでにキャリア通算15勝を挙げている日本女子ゴルフ界のトッププロ。そんな鈴木でも、畑岡奈紗や渋野ら「黄金世代」の台頭は、当然ながら強く意識する。

「やっぱり『若い子には負けられない』という思いが強い。同時に、若い子たちと一緒に日本ツアーのレベルを高くしていきたい。たまに海外からやってきた選手がすぐに勝ったりするじゃないですか。日本のツアーが軽く見られないように、『日本人も強いんだ』という姿をこれからも見せていきたい」

 2019年シーズンの賞金女王は、百戦錬磨の申ジエか、キャリアハイの戦績を築いている鈴木、あるいはニューヒロインの渋野が、逆転でその座に就くのか--日本ツアーの”顔”を決する戦いも、残り3戦である。