東京都のスケーターたちが集った都民体育大会。9日、シニアのシングル競技では、ショートプログラム(SP)が行われた。永井優香(社3=東京・駒場学園)、小室笑凜(スポ1=東京・開智日本橋学園)、石塚玲雄(スポ2=東京・駒場学園)が出場。永井は…

 東京都のスケーターたちが集った都民体育大会。9日、シニアのシングル競技では、ショートプログラム(SP)が行われた。永井優香(社3=東京・駒場学園)、小室笑凜(スポ1=東京・開智日本橋学園)、石塚玲雄(スポ2=東京・駒場学園)が出場。永井は首位、石塚は3位であすのフリースケーティング(FS)に進出した。小室は惜しくも進出を逃したものの、実りある1試合を戦った。


透明感あふれる小室のSP

 シニア女子の全体2番滑走で登場した小室は、シルク・ド・ソレイユより『O』の音楽で滑り出す。直前練習から決めていたトリプルサルコー-ダブルトーループの連続ジャンプを、演技の中でも安定して着氷した。他のジャンプで少し乱れが生じた箇所はあったが、それ以外の部分で観客の心をつかむ。脚を高く上げるなど美しいポジションのスピンや、プログラムに散りばめられた振り付け部分で存分に力を発揮した。「エッジワークに気をつけながらも、シルク・ド・ソレイユの表現ができるように」と語るステップでは、透きとおった表現を披露。生命感のある表情で、1つ1つの動きを大切に演じた。持ち味である大きくて伸びやかなスケーティングが、演技の魅力を増していた。腕や肩をうまく使った独特な振り付けで、音に合わせて爽やかに舞う。ここまで意識して練習を積んできたという言葉の通り、より丁寧な音の表現が目を惹いた。最後は両手のラインが綺麗に流れるポーズで演技を終えた。僅差でFS進出を逃すも、「今までは本番になるとガチガチになってしまって、やるべきことがわからなくなってしまうことが多かったのですが、きょうはちゃんと落ち着いてからやれた」といい手応えをつかんだ。これからにつながる大事な一戦を、しっかりと滑り抜いた。

(記事、写真 犬飼朋花)


深い表現で首位に立った永井

 柔らかく美しく上半身を使いながら演技をスタートした永井。「名前を呼ばれる前に(確認した)2回転でいい感覚が掴めた」と語ったとおり、冒頭のトリプルトーループ-トリプルトーループの連続ジャンプは幅、流れともに申し分なく鮮やかに決まった。続くトリプルルッツはステップアウトとなったものの演技の流れを切らさずに丁寧に滑っていく。「こけてもいいから頑張ってスピードを出そうと思って滑っていました」と話したように、前半からスピードに乗って氷を捉えリンクを大きく使い安定した滑りを見せる。フライングキャメルスピンでは、美しい身体のラインを見せた。最後のジャンプ要素となるダブルアクセルを流れるように着氷するとホップしてそのままステップへ。『白夜を行く』の美しい旋律に乗せて滑らかにかつ丁寧にターンを踏んでいき、緩急をつけたしなやかな表現で観客の心をしっかりと掴んだ。シーズンを追うごとにポジションの変化がスムーズになっていくチェンジフットコンビネーションスピンは手先まで神経の行き届いた洗練されたものだった。左腕を美しいラインで伸ばしフィニッシュポーズを決めると、惜しみない拍手を送る観客に微笑みながら挨拶した。プログラムが終盤に近づくにつれて、演技が終わるのが惜しいと思わせ、観客からため息が聞こえるような美しく芸術的なプログラム。先月に行われた東日本選手権を制し、6年連続出場となる来月の全日本選手権でさらに磨きのかかった『白夜を行く』を披露してくれることだろう。

(記事 中島美穂、写真 犬飼朋花)


冒頭でアピールを決める石塚

シニア男子では、石塚玲雄が第2グループ1番滑走で登場。演技前の声援に笑顔で応え、スタートポジションにつく。『ロシュフォールの恋人たち』の華やかな音楽に合わせ、冒頭のダブルアクセルを美しく着氷。好調な滑り出しを見せた。続くトリプルトーループの連続ジャンプが単独になるミスがあったが、その後も情感豊かに演技を続ける。演技後半のトリプルフリップでも転倒のミスがあったが、直後にセカンドジャンプを決め、続いたミスをリカバリーする根性の滑りを見せた。ジャンプのミスが響き、結果は東日本選手権SPよりおよそ10点低い50.95点の3位に終わった。しかし、表現面では自身も納得のいく出来栄えであり、質の良いスピンなどで秀逸した滑りを披露した。また、「スケートのスケールとスピードと思い切りの良さというのがいつの間にかなくなってしまっていました」と東京選手権後から気になっていた点を改善し、リンク全体を使ったスピード感のある演技で観客を魅了した。演技後、石塚は「やっとここ2日間ぐらいで考えすぎることなく自分のスケートを思い出せた」とメンタル面に自信を持ち、「明日のフリーは大丈夫だと思います」と翌日のFSに向け、期待が高まる意気込みを見せてくれた。

 永井・石塚はあすのFSに出場し、全日本選手権前最後の演技に挑む。小室も今後に向け成長を期した。選手それぞれが、自分らしい滑りでさらなる輝きを放つであろうこれからに期待が高まる。

(記事 長尾佳音、写真 犬飼朋花)

結果

▽シニア女子SP


永井優香 1位 58.99点


小室笑凜 13位 37.72点


▽シニア男子SP


石塚玲雄 3位 50.95点


コメント

小室笑凜(スポ1=東京・開智日本橋学園)

――演技を振り返っての感想をお願いします

良かった部分もあれば悪かった部分もあり、両方かなと思っています。良かった部分としては、今までは本番になるとガチガチになってしまって、やるべきことがわからなくなってしまうことが多かったのですが、きょうはちゃんと落ち着いてからやれたということがあります。いつも注意していることが比較的できた方ではあるなという感じですね。悪い部分としては、少し引っかかってしまったんですけどトーループが抜けてしまったことです。そこは引っかかっても跳ばなきゃいけないと思うので、練習からもっと、どんな状況でもちゃんと(ジャンプを)締めて、形になるようにしていかなければと思います。

――ジャンプの調子はいかがでしたか

最近は割とジャンプもよくなってきているね、という感じのことを先生とも話しています。ちょうど夏ぐらいまではジャンプの波が激しくて、うまくいかないことが多かったんですけど、だいぶ試合で決まるようになってきました。練習でもしっかり確率のいい状態で跳べているので、そこはよくなってきているかなと思います。

――きょうの表現についてこういうところが、というものがあれば教えてください

特に意識したのはステップです。あと、ゆっくり動きつつ少し強弱をつけるということを意識しています。ちょうど(ダブル)アクセルの前の、レイバック(スピン)が終わってから少し止まって振付をするところがあるのですが、そこを全部ゆっくりやるとどうしても見栄えが悪いというか。ゆっくり……みたいになってしまうので、そこの強弱をつけるようにしています。ステップは、エッジワークに気をつけながらも、シルク・ド・ソレイユの表現ができるように練習していました。

――前回の試合以来力を入れてきた部分は

ステップとジャンプかなと思います。ジャンプはSPは形になることが少なかったので、ちゃんと3つ揃えるという部分を練習では意識していました。ステップもレベルを取りつつ、もっと5コンポーネンツの点数が上がるようにというのを意識してやっていました。

永井優香(社3=東京・駒場学園)

――今日の演技を振り返って感想をお願いします。

練習からあまり自信がなかったんですけど、その中でも今シーズンわりと1番まとまった演技ができたのではないかなと思ったのですごく嬉しいです。

――練習のときからトーループの確認をされていて、すごくきれいに決まりましたがご自身でジャンプはいかがでしたか。

トーループに関しては直前まで自信がなかったんですけど、名前を呼ばれる前に2回転でいい感覚が掴めたのでそこが良かったのかなと思っています。あとの2本に関しては、アクセルは良かったんですけど、ルッツはもうちょっと練習から攻めていければ良かったかなと思います。

――表現面で意識したことはありますか。

今日は普段よりもお客さんを見れるくらい落ち着いていたのでポイントポイントでジャッジの方にアピールできたりとか、ジャッジよりも上のお客さんとかにアピールしたりとかできたのではないかなと思っています。

――今日の演技で1番意識したことは何ですか。

こけてもいいから頑張ってスピードを出そうと思って滑っていました。

――全日本選手権前最後の実戦ですが、今大会に向けてどのように調整してきましたか。

正直、ちょっと気持ちが切れ気味だったので、今日痛い目にあうかなと思っていたんですけど、まあそれなりの演技になったので、そうですねもっと積み重ねればもっといい演技につながると思うので頑張っていきたいです。

――点数的にはいかがですか。

今シーズンでたぶん1番いいので、試合ごとに基準が違うにしても結構嬉しいです。

――最後にフリーに向けて意気込みをお願いします。

フリーも結構不安なんですけど、まあなんとか乗り切れるように1本1本集中していきたいと思います。

石塚玲雄(スポ2=東京・駒場学園)

――演技を振り返っていかがですか

今日は悪かったんですけど、正直言うと妥当、というか。東日本(選手権)が終わってからかなりメンタルがやられていて、それが直前でやっと戻ってきて。いい練習を積めていなかったので、本当に妥当だなという感じです。

――ジャンプの調子はいかがでしたか

ここ2日間ぐらいでやっと戻ってきたのですが、技術的な面よりもメンタル的な部分が響いていたので、東日本が終わってから少し調子は落ち気味でした。

――表現面はいかがですか

すごくスピードに乗って滑っていけたかなと思うのでそこに関しては良かったですし、スピンも東日本選手権のときに比べたらスピードと回転速度があったのでそこも良かったと思います。

――全日本前最後の大会です。前回の東日本選手権からどんな練習をしてきましたか

前回の試合が終わって自分では気づいていなかったのですが、先生の方から「実は東京選手権が終わってから、かなりスケートのスケールが小さくなっていたよ」と言われました。自分では全く気づいていなかったので最初はえっ、と思ったのですが、確かに言われてみれば、練習でもスケートのスケールとスピードと思い切りの良さというのがいつの間にかなくなってしまっていました。それもあって、自分ではすごく悩みました。今回の試合に向けて練習していたのですが、そのメンタル的な部分で少し調整がうまくいかなかったかなと思います。

――FSに向けての意気込みをお願いします

本当に、やっとここ2日間ぐらいで考えすぎることなく自分のスケートを思い出せたというか、自分の運動神経とかセンスの良さというのをもう1回信じることができたので、あすのフリーは大丈夫だと思います。